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竜の通訳士になりました。 〜義妹に婚約者を奪われ隣国に追いやられたのですが、竜王に気に入られて求婚されています〜  作者: 香月深亜
第二章

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35. 密猟者に憤る

「きっとあそこです!」


 アメリアの言う方向へ馬を走らせると、目前に洞窟の入り口が見えてきた。


 馬を入り口手前でとめ、アメリアとレイクロフトは馬から降りた。


 声が聞こえてきたとは言え、それが探し求めていた子竜たちである保証はまだなく、洞窟の中にはどんな危険が潜んでいるか分からない。


「この中にいるのか?」

「恐らく……」


 レイクロフトはアメリアの一歩先を行き、何かあればアメリアを守れるよう、腰の脇に刺した剣に意識を向けつつ、臨戦態勢になる。

 そんな彼が出したピリついた空気を感じ取ったのか、アメリアは彼の頼もしい背中を見つつ、離れないようすぐ後ろをついて、二人は洞窟の中に足を踏み入れた。



 足音を立てないように気をつけながらゆっくりと進むと、奥で何かが動いて見えた。


「「!」」


 二人で驚いて見つめ合う。

 それからすぐに、動いたものが何なのか、目を凝らして確認すると……。



「あ……」



 そこにいたのは、三匹の子竜。


「あなたたち……」

『!?』


 子竜たちは一つの塊のように肩を寄せ合っていた。

 アメリアが声を出すと、今度は子竜たち側が驚いた顔をしている。


『だ、だれ……?』

『……あれ? もしかして、おうさま?』


 ビクビクと肩をすくませる子がいつつ、二匹を隠すように前に出た子は、レイクロフトを王様と認知した。


『え、おうさま?』

『おうさまだ!』


 二匹の表情は恐怖から一気に安堵に変わり、ぴょんぴょんと飛び跳ねてレイクロフトに飛びついた。


「おっと!」


 レイクロフトは、少しだけバランスを崩しながらも二匹を両腕で受け止めた。

 二匹はどちらも中型犬ほどの大きさなので、それを受け止められるレイクロフトの体幹はさすがである。


「あ……二匹は『王様だ!』って喜んでいます」

「なんとなくそんな気はした」


 アメリアが一応子竜たちの言葉を伝えつつも、レイクロフトは二匹の顔や様子からそれを感じ取っていた。


 しかしそこで、飛びついたのが二匹だけで、あと一匹が確認できていないことに気づいたアメリア。

 三匹が固まっていたところに視線を戻すと、そこにはぐったりと伏せてしまっている子竜がいた。


「大変っ……!」


 慌てて子竜のもとへ走り寄り、声をかける。


「大丈夫? どこか怪我しているの?」

『……』


 そっと背中に手を乗せて話しかけるが、その子竜は動く気配がない。


「どうした? 意識がないのか?」

「分かりません。返事がなくて……」


 レイクロフトが目を細めてアメリアに尋ねるが、アメリアは首を振る。

 そして、レイクロフトが両腕に抱いた二匹の子竜に優しく努めながら確認する。


「何があったか答えられるか?」


『……にげてきた』


 子竜の一匹は真剣な顔でキュウゥと鳴き、アメリアがレイクロフトに子竜の言葉を伝える。


「逃げてきたそうです」

「逃げてきた? 一体何から?」


『……きけんなやつ』

『ぼくたちオリに入れられて、こわくて、むりやりカギをこわしてにげてきたんだ』


「誰かに檻に入れられていたそうです。鍵を無理矢理壊して逃げてきたと」

「……ということは、やはり拐われていたのか。それで、その子はどうしたんだ?」


『…………ちゅうしゃ』


 やはりレイクロフトたちの読み通り、三匹は密猟者に誘拐されていたらしい。

 それでもどうにか隙を見て逃げられたようなのだが、伏せった一匹がどうして伏せているのか聞いてみたところ不穏な単語が出てきた。


「注射……?」

『あいつ、ヒューイになにかちゅうしゃしてた。ヒューイはぼくたちを守ろうとしてきけんなやつにかみついてて、そしたらあいつらヒューイに……』

「なんてひどいことを……」


 伏した竜はヒューイという名前らしい。

 ヒューイは、レイクロフトに抱きついた子竜二匹より若干大きく見えるので、きっとお兄さん的存在なのだろう。


(お兄さん竜として体を張って二匹を守ったのね……)


 二匹に手を出させないためにヒューイが身を挺していた結果、密猟者は彼に何かを注射した。

 酷い話である。


 竜を拐うことも、竜を傷つけることも。

 どうしてそんなことができるのかとアメリアは憤りを覚える。


 いまだに微動だにしないヒューイの背中を撫でて、レイクロフトに相談する。


「陛下。この子、ヒューイさんは密猟者に噛みついたそうで、その際に何かを注射されていたそうです。……苦しんでいる様子ではないので、単なる鎮静剤や睡眠薬であればよいですが、何か変な薬だったとしたら……」


 鎮静剤や睡眠薬だったとしても、それが竜に無害かは分からない。闇市に渡すつもりだったとすれば竜を害するような薬ではないだろうという希望が持てなくはないが、それでも有害である可能性は捨てきれない。


「分かった。……悪いがアメリア、ヒューイを抱えて行けるか?」


 事の次第を把握したレイクロフトだが、二匹の子竜に両腕をがっしり掴まれてしまっているので、さらにヒューイまで持ち上げることが難しい。

 しかし、密猟者から逃げてきたのであれば、ここにいては見つかってしまうかもしれない。密猟者に見つかるリスクを考えると、すぐにでも竜の谷に戻るべきだ。


 苦肉の策として考えたのは、アメリアがヒューイを連れて行くこと。

 レイクロフトからすれば非力なアメリアにそれができるのか不安ではあるが、他に方法はなさそうだ。


「任せてください!」


 だが、レイクロフトの不安など吹き飛ばすようにアメリアは力強く頷いた。それから優しく包み込むようにヒューイを抱き上げて、全員で洞窟の外へと向かったのだった。

第二章再開してから、

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いつもありがとうございます(*⁰▿⁰*)

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