ソフィアとシャロンの日常 1
「シャロン~!辺境伯領から届いた薬草、ここに置くわね?」
「ありがと~、ソフィア!あ、こっちはこれ!ソフィアが試したがっていたデゼルト国の丸薬!仕入れられたわ」
「やったあ、ありがとう!」
「ちょっと集中して、実験しましょう」
「そうしましょう」
二人は満面の笑顔を交わし、それぞれ研究に没頭し始めた。
ここは王立病院内にある、薬学研究室。学園卒業後、ソフィアとシャロンが共に勤めている。
ソフィアの実家、ゴートン家はは辺境伯領なので、王都からは結構遠いが、広大な森と自然に囲まれており、薬草の宝庫だ。一方シャロンの実家、ルイーダ家は中堅商家。元々、他国の薬に強い。『ルピナスシリーズ』への参加で、更に手広く取引先が拡がった。
そんな二人の、お話。
「ソフィア、シャロン、そろそろランチの時間よ?休憩しましょう」
赤髪に琥珀色の瞳の、キリッと美人の女性が声をかけてくる。聖エミ出の同僚のフォレだ。
「ああ、もうそんな時間?フォレ、いつもありがとう」
ソフィアが手を止めて振り返る。
「ありがとー」
シャロンも続く。
「いいえぇ!二人のことは、エマ様に任されていますからね!」
イタズラっぽくウィンクするフォレ。見た目のイメージと違う少しのツンデレ感がいいわよね、と、二人は思っている。
「ん~!!病院内の食堂もいつも美味しい!ローズとエマ様々よね!」
魚介のパスタを頬張りながら、ソフィアが言う。
「ほんとよね。3つもお店入ったしね。二人が厳しいから、栄養のバランスもいいし」
シャロンは、野菜たっぷりのサンドイッチだ。
「この、お米も美味しいよね。遠い国の食材でしょ?よくご存知よね、お二人……」
フォレは、おにぎりセットだ。最近は、お味噌汁なるものまで付く。素晴らしい。
「はあ、それにしても先日のラインハルト殿下とエマ様の結婚式、素敵だったわよね!」
フォレがうっとりと思い出しながら話し出す。そう、3日前が二人の結婚式だった。
「フォレったら、毎日言ってる」
クスクスと笑いながら、ソフィアが言う。
シャロンも楽しそうだ。
「しばらく言うわよ!すっごく綺麗だったもの!お二人共幸せそうで……特に殿下のあの笑顔がもう!」
まあ、ハルト様はね、かなり待ったでしょうからね、と思いつつ、二人は笑顔で聞いている。
「二人は学園も同じだし、見慣れているだろうけれど!私にとっては想像もしていなかったもの!教会の中に入れて、お二人を見ることが出来るなんて!」
「うんうん」
「あ~、流してるわね、シャロン!私、『ルピナスシリーズ』に関われて、すっごく感謝してるのに!」
「流してないわよぅ、私たちだって感謝しているもの。『ルピナスシリーズ』と、そしてフォレに会えたこと」
「ほんとよね。両方とも大感謝よ」
「ちょ……そんな言われると、照れるじゃない…」
やっぱり可愛いな、と、二人は思った。
「でも私こそ、二人にも感謝よ。こんな対等に扱ってもらえるなんて、それこそ想像していなかったもの」
「「仕事仲間よ。当たり前だわ」」
二人が同時に言う。
「「それに、友だちだしね!」」
「ありがとう。やだ、昼間から泣きそう」
「ふふ、私たちは泣かれ慣れてるから、構わなくてよ~」
「シャロンたら。でも、確かにそうね」
「そうなの?!誰を?気になるけど!」
「可愛いエマとか……」
「エマ様?」
フォレが聞き返すと同時に、お昼終了の緩やかな鐘が鳴る。
「ああ、気になるのに~!」
「続きは今度ね。あ、今日、三人で夕食に行かない?明日はお休みだし、久しぶりに!」
「いいわね!行きたい!」
「行く!」
シャロンの言葉に、二人が賛成する。
「久しぶりに、懐かしの話でもしましょうか」
「そうね。それで、フォレの話も聞かせてね」
「わ、私?そんな面白くないわよ?」
「またまた~!聖エミで大人気だった話を小耳に挟んだわよ?」
ニヤッと、ソフィアが聞く。
「ええっ?!ない、ない!」
「まあまあ、お楽しみは夜に♪」
否定しようとするフォレを、更にニヤニヤ顔のシャロンが止める。
三人は、きゃあきゃあしながら、研究室に戻る。
長い夜は、これからだ。




