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私は仕事がしたいのです!  作者: 渡 幸美
番外編

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ラインハルト 5 初めての?策略

朝だ。四人で和やかに朝食を済ませ、支度をする。

……朝からいたい人といられるって、変に浮かれた気持ちになるなあ。が、昨夜のリサによると、まだまだエマ嬢の興味は仕事の方が強い様子。いいことだけど、せめて仕事と同じように興味を持ってもらうよう、頑張らねば。


そして、登校時間が近づく。それには馬車が必要な訳で。

「え?メンテナンス?」

ローズ義姉さんが早朝から届いた実家からの手紙に、珍しく声を上げる。だよね、ごめん。

「何か作為的な気もするのだけれど…」

何かを察したらしい義姉さんにジト目で見られる。

俺は肯定と謝罪を込めて、にっこりと笑う。

「普段動かない子が動くとこれだから……」

義姉さんは諦めたようにため息をつき、何も分かっていないエマ嬢に、王家に甘えましょうと言ってくれる。


目立ちたくないらしいエマ嬢は少し抵抗してきたが、周りを引き合いに出すと、迷いながらも納得した。こういう所にも惹かれるが、優しすぎて少し心配だ。

今回は、ありがたいけど。


「…全部、ちゃんと考えての行動か?責任を取る気があるのだな?」

兄上に最終確認をされる。昨夜、俺なりにきちんと伝えたのだ。二人にとってのエマ嬢は、本当に大切な友人のようだから。

「もちろんだよ、兄上」

「…ならもう、何も言わん。手強いと思うが、頑張れ」

「!ありがとう、兄上!!」

大切な人に大切な人を任された嬉しさに、思わずはしゃいだような声を出してしまう。

兄上も優しく頷いてくれる。

「さあ、そろそろ行こうか」


うん、さて、気合いを入れ直して行こう。学園だ。


学園に着くと、想像以上に人の目が集まる。……想像以上だが、好都合だ。

エマ嬢はかなり動揺している。怒られそうだけど、可愛い。

「…何だか嵌められた気がするのですが」

じとと、エマ嬢に見られる。この顔も好きだ。おかしいか?

「あれ、ようやく気づいた?エマ嬢賢いのに、時々鈍いから助かるよね?」

ちょっと軽口を叩いてみる。ふふ、悔しそう。可愛い。

……でもこの鈍さ、他の男に気を付けないと。


「ほら、もう諦めて、ね?行こう」

「…分かりました」

エマ嬢は一瞬俯いて、顔を上げる。気を取り直したようだ。顔が聖女モードになっている。

「…さすがだね、じゃあ、どうぞ?」

うん、こんな所も格好いいね。

エマ嬢は、俺の差し出した手を取り、馬車を降りる。


一斉に視線が集まり、どっ!と、どよめきと悲鳴のようなものが起こる。

あれこれ聞こえて来る噂話(実話とも言う)に、かなり動揺するエマ嬢。うろたえつつも、表面は聖女様のままだ。……ちょっと、悔しいような……。


「…本命が、って言うのも本当だよ?リサーチって大事だよね?エマ嬢?」

わざと耳元に顔を近づけて話す。周りから、更に大きな悲鳴と歓声まで聞こえる。


「なっ、こんな人前で、何っ、」

「何って内緒話しただけでしょ。エマ嬢表情崩れてるよ?真っ赤で可愛いけど、あんまり皆に見せないでよ……もったいないから」

崩せた。仄かな達成感と、しまった感が同居する。厄介なやつだな。


「で、でしたら殿下、少し離れてください」

「え、嫌だ」

それは無理だよね。


「……婚約話もでてますよ?」

上目遣いで言われる。殺す気か。

「俺は願ったりだよね?頑張るって言ったじゃん。…本気だからね?」

「…もう、朝からキャパオーバーです…」

いっぱいいっぱいか。そうか。俺の、事で。……って、これ、大丈夫か?俺。でも、嬉しいのだから仕方ない。

「じゃあ、ひとまずこの辺にしておこう」

楽しいな。



そして、四年生のAクラスに着く。


「ありがとうございます。では、ここで…」

エマ嬢が手を離そうとする。

「何言ってんの。ここからでしょ?」

そう、ここからだ。若干うろたえているエマ嬢を、エスコートしたまま教室内に入る。


「兄上、ローズ義姉さん」

昨夜お願いした通り、兄上が待っていてくれた。

「ああ、来たか」

「もう、だからハルト、まだ姉ではないと…」

「何言ってんの。もう、余程のことが無い限り…いや、それすらあっても、王太子妃はローズ義姉さんに決まりでしょ?」

さらっと言ってみる。まず、これが第一の目的。二人の仲の強固さと、更に揺るがなくなった地位を皆に認識させる。


そして。


「失礼します、ラインハルト様…本日は、何故エマ嬢と?」

頼んでもないのに、ありがたいよな、コイツら。でも兄上の側近が、こんなんでも困るんだよなあ。まあ、成績は悪くないが。


ともかく、今回は。


「私がエマ嬢をエスコートして来たのは、エマ嬢を婚約者にするために口説いているからだよ?…()()()()()()()()()()問題はないと思うけど?」


これが最大の目的だ。





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