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私は仕事がしたいのです!  作者: 渡 幸美
番外編

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ラインハルト 2 初めての本気

そして、また兄上が怒り出す。ホントに何?俺、そんなにダメ?!……まあ、ダメか。普段を見ていたら。


でも、久しぶりに人に興味を持った。何となく引き下がりたくない。何だろう、エマ嬢を見ていると楽しい。そう、楽しいのだ。

兄上に、ちょっと利点を言ってみる。一瞬考えていたようだけど……ダメか。


「確かに悪い話ではないな」

とは、父上。お!意外、でもないけど、の所から援護が!しかしそれも、兄上に否定される。

「……エマは、婚姻など無くとも、この国に……延いては私とローズに尽くしてくれると宣誓してくれました。…非公式ではありますが」


え、それは何より!だけど、また利点が消えた……。

それにしても本当に打ち解けたな。…打ち解けたというよりも、信頼関係が成立している。この短時間で、なぜ?ーーーその理由が、人払い後の兄上の話で明らかになる。


エマ嬢の事業計画も、国にとってとても有益だ。そちらも今後、細かく検討されるだろう。でも今は、それよりも……

「エマ……闇魔法は、本当にそんなことが出来るのか……?」

そこだ。二人の絆に唯一、影が差していた所。それが、一気に強い光になる。


……すごいな。軽く見ていたつもりはないけれど、本当に聖女様だ。頭の回転も早いし、発想力も豊かだし、周りを暖かい優しさで包むような…とか、らしくないことを思う。でもエマ嬢の持つ雰囲気は、太陽のようなそれだ。

……ん?太陽と、月?それって……


「何だかあれだね、ローズ義姉さんまでそんなことができたら、聖女が二人いるみたいだねー!」

こういうことじゃないか?

ああ!と全員がハッとした顔をする。父が詳しく話し出す。うん、きっと間違いない。今までずっと見落とされていた……大失態だ。エマ嬢からもたらされた気付き、これから生かさないとな。


「エマのお陰」とのローズ義姉さんの言葉に、謙遜するエマ嬢。謙虚だな、本当に。

「無くはないでしょ、長い間、誰も気づかなかったんだからさ」

すかさず突っ込む。

「さすが、今までの中でも最高聖女と言われるだけあるよね、父上」

本心だ。父上と俺の言葉に、はにかんだ顔をするエマ嬢。

「勿体無いお言葉です」

……ヤバイ。本当に可愛いかも。


そして、全部丸く収まったと言うことは。

「あー、でもこうなると、俺との婚約は無し~?」

でも良くなってしまう。母上にまで注意されるし。

でも父上は自力で頑張れと。まあ、陛下が聖女二人を命令で囲い込むようなイメージも、国としては良くはないしな。

……けど、頑張っていいんだな?


「……分かった、頑張る」

こんな、短時間でここまで興味を注られる人間。

初めて心から可愛いと思った人。楽しくて、もっと話をしたくて。怒った顔や困った顔すら見てみたいと思う、これは、きっと。……10歳で自分で諦めていた気持ち、なのかもしれない。


「がっ、頑張るの?ですか?!」

エマ嬢がすかさず確認してくる。そういえば、毎回疑問符ついてるけれど。自分に好意を持たれるのが、そんなに意外?あれだけモテておいて?……いや、これ、鈍いやつか?自己評価はどうなってるんだ。

まあでも、まず今日は驚いた顔は沢山見れたな。

……ヤバイ。嬉しい。

「ふふっ、頑張るよ?よろしくね?」

少し近づいて、下から顔を覗き込んでみる。また更に驚いて、一歩引くエマ嬢。うん、スレてなくていいね。俺が言うのも何だけど。


「ハルト!」「ハイハイ!」

兄上に怒られて、すぐに退散する。今日捕まると、いつもより説教長そうだし。「あ」でも一つ思い付き、また戻ってみる。


「ローズ義姉さん!」

「ラインハルト様!全く……」


サムに引き摺られるように、自室に向かって歩く。

しかし、我ながら良く気付いたな!味方は増やしておかないと。母上も使えないかな。

等と考えて顔が緩んでいたのか、

「……珍しいですね、ラインハルト様のそんなお顔は」

と、サムに指摘される。

「……そう?」

「はい。鼻歌でも歌い出しそうなお顔です」

「……そんなに?」

さすがに恥ずかしいな。


「ふふ、うん、でも今日は人生で一番楽しい日だっかもしれない」

サムは俺の正直な返事に、驚いた顔をする。

「…これは本当にお珍しい。……本気ですか?」

「うん。……手に入れたい宝を見つけた気分」

「ほう、それは重畳でございますな」

嬉しそうに言われる。

「……大袈裟だな」

急に恥ずかしくなってきた。何だこれ。思わず手の甲で顔を隠しながら、横を向いてしまう。


「……その、微笑ましそうな顔、止めろ」

「失礼しました、つい」

否定しないし。こいつも10年でふてぶてしくなったよな。


でも、悪い気はしない。


「全力で口説いたら、エマ嬢はどんな顔をするのかな?」


明日からが、急に楽しみになってきた。

言葉にすると陳腐だが、これが恋の力というやつか。


……自分で考えておきながらだが、やはり恥ずかしいな。

でも、エマ嬢には覚悟をしておいてもらおう。


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