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私は仕事がしたいのです!  作者: 渡 幸美
第二部

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17 婚約者

ラインハルト殿下の言葉に、黄色い歓声が上がる。

私はいたたまれませんが…

もう、恥ずかしくて俯いてしまう。だって、絶対真っ赤だもの、顔。


「しっ、しかし…そのようなこと、このような公衆の面前で…」

えっ、トーマス様、あなたがそれを言うの?一周回って笑えてしまうけれど。周りの三人も頷いているし……クラスの空気がひんやりしてきてますよ!

「そこまでになさって。トーマス様」

その時、清廉とした声がトーマス様を止めた。

…ご婚約者の、セレナ=エレクト侯爵令嬢だ。青紫色のサラサラストレートの髪に、アメジスト色の瞳の、知的で落ち着いた美しさのある人だ。


「ジークフリート王太子殿下、ラインハルト殿下、イベレスト公爵令嬢、……婚約者が申し訳ございません」

「いや、セレナ嬢には非はないよ。……彼らも自分たちで自覚するべきだ」

ジークが答える。

「ありがとう存じます。しかし、私共の力不足で諌め切れず……エマ様にもご心労をかけております、重ねて申し訳ございません」

私にまで頭を下げてくれる。何て格好いい人だ。

心底、やつの婚約者であることが勿体無い。

「そんな、勿体無いお言葉です、エレクト侯爵令嬢。……私こそ、上手く立ち回れず…ご心労を。申し訳ございません」

私も深く頭を下げる。


「……悪くない二人が謝り合うことはないよねぇ」

ラインハルト殿下の言葉に、セレナ様と私は顔を上げる。

「だってそうだよね?」

と言いながら、四人を見渡す。だから、笑顔が怖いですって。

彼らと言えば、バツの悪そうにゴニョゴニョしている。

「……ハルト、気持ちは分かるがそこまでにしておけ。そろそろホームルームの時間だ。皆に迷惑がかかる」

ジークの言葉に、もう結構かけてますよね…すみません、と思う。

「トーマス、エトル、アレン、ビル。……君達は確かに優秀だが…学生だからと甘く見ていると、取り返しのつかないことにもなるぞ。……王家(うち)もそうだが、皆、優秀な弟君もいるのだろう?」

四人がビクッと背筋を伸ばす。

ラインハルト様は、ちょっと照れてる?やだ、かわいいとか思ってしまう。お、弟的に!ですよ!

「当然に父君の後継になれるとは思わない方がいい。……ひとまず、これからひと月はローズも私も公務で体が空かない。生徒会の仕事を完璧にこなせ。今日はこれも伝えに来たのだ」

ジークが王太子然として言う。ローズ、惚れ直しちゃうね!

「「「「…承知致しました」」」」

さすがにビシッと腰を折る四人。腐っても高位貴族だ。ちゃんと頑張ってもらいたいものだ。


「行くぞ。ハルト」

「あ、ちょっと待って、兄上」

ジークが怪訝な顔をする。

「大丈夫、すぐ済む。……セレナ嬢」

「?はい」

セレナ様が、不思議そうにラインハルト様を見る。

「今日の放課後、時間はあるかい?私とエマのお茶会に招待したいんだ」

「……空いております。承知致しました」

少し緊張しながら承諾するセレナ様。そりゃ、何事かと思いますよね……王子様の招待だから、断れないだろうし。

「ありがとう、詳しくはまた伝えるよ。エマ嬢もいいよね?」

「は、はい!」

……もしかしてこれは、セッティングしてくれたの?私、話したっけ?ありがたいけれど。

「じゃあ二人共、後でね。お待たせ、兄上」

「ああ」

ようやく、それぞれの教室に戻られる二人。

ちょっと固まっていたクラスメート達も、ようやく息をついて自分の席に着き始める。

「…私も戻りますわ。エマ様、放課後宜しくお願い致します」

「こ、こちらこそ!」

セレナ様は優しく微笑んで、ご自分の席に着く。いろいろと不安もあるだろうに、自律した方だ。


「エマ、私達も参りましょう」

「あ、う…え、ええ」

ローズに声を掛けられ、うっかり素を出しそうになり、慌てて仮面を被る。

ローズと私は、初めから変わらず隣同士の席だ。

ようやく着席する。

「ねぇ、ローズ。今日の放課後のお茶会って、殿下はわざとセッティングしてくれたのかしら?私、話した覚えはないのだけれど」

こそっと耳打ちする。

「多分ね。というか、きっとその通りね。大方、どこかから情報を仕入れたのだと思うわ。ジークから聞いたのかもしれないけど」

「あ、それもあるのか。まあ、ありがたいけれど」

「私の仕事を取られたわ」

ちょっと拗ねるローズ。可愛いな。

「まあ、私は暫く自分でいっぱいになってしまうし、今回はハルトに譲るわ」

お茶目にウインク。ほんとに可愛い。

「……そ、それと、きょ、今日のお昼休みはその……大丈夫、かしら?朝、二人にご挨拶もできなかったわ」

「ふふっ、それは大丈夫よ!」

そこまで内緒話をした所でチャイムが鳴り、スレン先生が入って来た。


朝から疲労感MAXだけど、今日も授業頑張ろう!

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