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私は仕事がしたいのです!  作者: 渡 幸美
第二部

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13 読めない人

晩餐が始まる。今日も穏やかに進むが、どこか浮ついたような、少し高揚感のあるような、そんな雰囲気だ。


「…そんな訳で、二人のお披露目はひと月半後に決まったよ。年甲斐もなく、楽しみで浮かれてしまうな」

陛下が相好を崩しながら話される。

王妃様はまた涙ぐみ、ナフキンでそっと目尻を拭う。

「「承知致しました」」

ローズと私が答える。二人で視線を合わせて、ふふふっ、と笑う。何だか幸せな空間だ。

そんな私達を見て、王妃様は目を細める。が、次の瞬間、おもむろにキリッとして、

「ひと月半後ですと、時間が少ないわ。早めに二人の採寸をして、揃いのドレスを作らなくては!!」

と、気合いの入ったお言葉をいただいた。


「母上、本気だったのですね」

「当たり前でしょう!ジーク!」

「ははは、衣装はシンシアに任せるよ。二人を可愛くしてあげておくれ」

そうそう、王妃様はシンシア=グリーク様です。

「お任せ下さい、陛下!」

王妃様、楽しそうだ。気合いが入りすぎていてドキドキするけれど、きっと逆らわない方がいいやつだろう。


「二人の聖女かあ、疑っていた訳ではないけれど、真実となると重みが違うよねぇ」

ラインハルト様がしみじみと言う。

「そうだな」

陛下が答える。

「は~、ますます婚約者になるの難しそうだなあ」

「お前はまだ言うのか」

「えっ、ほんとにひどい、兄上。昨日、頑張るって言ったじゃん、俺」

「……お前の本気は判りづらい」

「えー」

いや、本当に本気なのでしょうか?!からかわれているとも思わないけれど。読めない人よね。

「……まあ、エマ次第だな」

ちょっとジークさん、急に折れないで。あとローズ、楽しそうにし過ぎ!!


「いやはや、これから益々楽しみだな!」

陛下、纏めないでください……


昨日よりは落ち着いた晩餐だったけど、疲労感はあまり変わらないまま、それは終了した。

今日もお泊まり予定は変わらないけれど、明日は学園があるので、パジャマパーティーは無しだ。


「エマ嬢、部屋まで送るよ」

「ラインハルト殿下、あの」動揺してしまう。

「エマ、送らせてあげてくれ。こやつも城内でおかしなことはせん」

「ちょっと父上。それはフォローですか?」

ラインハルト殿下が少し口を尖らせる。

ははは、と陛下が笑う。

うん、少し肩の力が抜けた。壁ばかり作っても仕方ない。ラインハルト様とも向き合ってみよう。

「はい。ではお願いします、殿下」

私は微笑んで言った。

一瞬の間。

「ラインハルト殿下?」

「……っ、いや、うん、行こうか」

「はい、お願いします。皆様、お先に失礼致します」

カーテシーをして、食堂を出る。


「固まっていたわね……」

「いたな……」

「あの笑顔の凶器に気づいてないのは困るわよね……」

「困るな……」

「ははは、エマの長所だろうがな!」

「そうですが、私も心配ですわ、陛下。ハルトが頑張ってくれたらいいですけど……」

畏れ多くも王家の方々にそんな心配をしていただいているとは、私はつゆとも思わずにいた。


◇◇◇◇◇


ラインハルト様と私は、部屋の前に着いた。

歩いている時のエスコートも丁寧で、学園でのお話を聞くのも楽しかった。頭の良い方だとも思う。なぜ、あんなに自由な方と評判が……あ、自由は自由か。でも、とても紳士だ。

「送っていただいて、ありがとうございました。殿下」

私はカーテシーをする。

「ああ、うん。どういたしまして」


「「………………」」あら?


何故に立ち去らない?!

少し離れて付いてきてくれた、サムとリサがちょっと困ってそうですよ?


「あの、殿……」

「エマ嬢、ひとつ聞いてもいい?」

先を越されてしまった。いいですけど。

「はい。何でしょう」

「嫌味じゃなく聞いて欲しいんだけど……例の、学園で纏わり付いている四人、どう思っているの?」

「どう、とは……?」

思わず剣呑な目で見てしまう。

「だから違う!…ごめん、大きい声で、その、本当に……」

しゅーーーんと萎れてしまう、ラインハルト様。

イケメンのしょげた顔って、罪よね。

「……ただのクラスメートで、それ以上でも以下でもありません」

バッとラインハルト様が顔を上げる。

「本当に?」

「改めて確認されますと…本音を言えば、クラスメート以下にはなり得ますね。婚約者様がいらっしゃるのに、信じられないです」

ここだけの話でお願いします、と頭を下げる。


そして沈黙。


「?殿……」

「ふっ、あはははは!やっぱりエマ嬢、最高!」

また遮られてしまった。そして褒められているのか?

「ありがとうございます?」

「だから何で疑問符付くのさ!あはは、褒めてるのに!」

ジークの言う通り、ラインハルト様の本気は判りづらい気がする。


「ごめん、笑いすぎた」

まだ目に涙浮かんでますけどね。

「いいですけど……」

「……でも良かった、本音を聞けて。これで心置きなく動ける」

「動く?なに、を……」

私の問い掛けをまた遮るように、ラインハルト様は私の髪のひと房をさらっと持ち上げ、そしてキスをした。

「~~~~~!!」

私はハカハカしてしまい、声が出ない。

なに、何してるの、この人!

たぶん私、真っ赤だ。うう、恥ずかしい……

「エマ嬢可愛い。……良かった、もっと安心した」

な、何を?何が?!

「引き留めてごめんね。おやすみ。また明日ね」

「……お、やすみ、なさい、ませ……」

片言で返事をするのが精一杯だ。


で、殿下が判らないです!

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