12 またまた王城です
私達が戻ると、四人がすぐさま駆け寄ってきた。
そして、ジークがローズをぎゅっと抱き締める。
「ローズ、良かった…!女神様だから、大事はないとは思ってはいたが……」
「ジーク……ありがとう」
いいわあ、愛し合う恋人たち……
「エマもお帰り。ジークの言う通り、大事はないとは思っていたが、いやはや、やはり心配になるものだな」
陛下の言葉に、大神官様とルースさんが頷く。
「ご心配ありがとうございます。陛下と大神官様までご足労いただいてしまって。ルースさん、すみませんでした」
「いや、こちらは気にするな」
「そうじゃの。女神様のご光臨とは…もう千年は無かった事じゃ」
「ローズ、エマ、話を聞けるかい?」
陛下に促され、二人で女神様の神殿での話をする。前世の話も触れたが、ジークを含めて私達が記憶持ちであることは伏せたままにした。必要ないだろうと、戻りながらローズと決めたのだ。
「何と……!!正しく二人の聖女だったとは……!目出度いどころの話ではないのう、陛下」
「仰る通りですね。改めて身の引き締まる話だが…国にとって、この上にない慶事!僥倖だ。二人のお披露目と…闇魔法の地位の向上を進めねば。女神様のご希望に沿うように」
ジークも頷く。
「先ほどローズマリー様にも申し上げたが、ひと月もあれば闇魔法…月の力を使いこなせるようになられると思いますぞ。のう?ルース?」
「はい、そう思います」
「そうか、さすがローズだな。では学園の後は毎日こちらで面倒を見てもらうことでよろしいか?」
「こちらとしては、何の異論もございませんぞ」
大神官様とローズが頷く。
「では、そのように頼みます。それと、お披露目についてですが……」
陛下と大神官様のお話は、まだまだ続きそうだ。
「僭越ながら、陛下。お部屋を移動致しませんか?長い時間がかかりそうですし」
ルースさんが口添えする。
「そうさせてもらおう。大神官様はお時間よろしいか?」
「ふぉっ、ふぉっ、陛下の方がお忙しいでしょうに。しかし、今はこれを差し置いてまでする用事はございませんな」
「真に」
「では、ご案内します。どうぞこちらへ。護衛の方もお連れ致します」
「ああ、ありがとう……そうだ、三人はどうする?」
「魔法練習の予定でしたが……今日の所は城へ戻ります。本格的に始めるのは、明日からで良いでしょう、二人もいろいろ有りましたし」
ジークが答える。
「いいよね?二人も」
「「はい」」
「では、そうしてくれ。また、城でな。また晩餐を共にしよう」
「承知致しました」
……もしかして、今日もお泊まり決定ですか?
私達は待っていた馬車に乗り、神殿を後にした。
「二人ともお疲れ様。でも、いろいろと謎は解けたな?」
ジークが口火を切る。
「そうね。驚くことばかりだったけど……女神様にお会いできて、良かったわ。ねぇ、エマ」
「うん、そう思う」
「何だか……あの時に女神様が見ていたと思うと、感慨深いというか……不思議な気持ちになるな」
「ほんとよねぇ。でも改めて、ローズとジークが運命の恋人たちって感じで素敵よねぇ、いいわあ」
「ふふっ、ありがとう。エマはどうするのよ、強制力じゃなかった人達」
「そうだ、勘が当たっていたな!強制力ではなかったな」
あら、薮蛇だったわ。
「……どうもしないわよ…でも、あのままにもしておけないわよねぇ」
何か考えないと。私はため息をついてしまう。
「何度も思うが、本当に脈なし興味なしなんだな……」
「本当に。神殿でのルース神官にもすごかったわよね……」
二人がこそこそ話をしている。イチャイチャいいよねー!女神様も安心だね!
私達を乗せた馬車は無事に王城へ帰り、お昼を頂き、午後は学園の課題をこなしたり、読書したりと、それぞれ休みながら自由に過ごすことにした。ジークの指示で私にも客間が与えられ、のんびりすることができた。仕事のできる侍女さんのお陰で、キレイになった制服もかけられている。ありがたや。
そして夜。陛下も神殿からお戻りになり、またご家族に混じっての晩餐だ。
本日は、侍女のリサさん…リサに着せられた豪華なドレスを着用しております。これで夕食用…………ドレスって、効率悪いってー!一瞬テンション上がるけど、後の疲労感が……ほんとに、結婚式だけで充分と思うけど。女子力低すぎかしら。
そしてリサの付き添いで、食堂に向かう。
「わ、エマ嬢、今日はドレスなんだね!すっごい、似合うよ!」
「……ラインハルト殿下。ありがとうございます」
入り口の手前でラインハルト様に会ってしまった。
今日は遅刻しなかったのね。
なんて事を考えていたら、スッと手を差し出される。
「?」
「美しいレディ、エスコートの栄誉をいただいても?」
うっっっっっわっ…!急に本気の王子モードやめてぇぇぇ~~!!眩しい、笑顔が眩しすぎる。頭が追い付かないけど、王子様相手にお断りする選択肢などはないのだ。
「…喜んで」
恐る恐る手を重ねる。うっ、緊張するよう。
そんな私をよそに、ラインハルト様は楽しそうだ。
手の甲に、軽くキスされる。
そんな私達を、サムとリサが頷きながら見守っていた。貴族世界では当たり前のこととはいえ、慣れない。むず痒い。一応、マナーとして勉強はしましたよ……念のため……でも人には向き不向きが……
「おお、ラインハルトがエマをエスコートしてきたか」
食堂に入ると、すでに皆さん座られていた。
「そこの入り口で会いまして。…申し付けて頂けましたら、部屋までお迎えに参りましたのに」
いやいやいや!大丈夫です!
「ラインハルト殿下。そんなお気遣いなく…それに皆様、申し訳ございません、お待たせしましたか?」
「いいや、我らの気が急いてな。早く来すぎたのだ。気に病まなくとも良い。座りなさい」
「はい、ありがとうございます」
最後までラインハルト様がエスコートしてくださる。
ふと目が合うと、ニコッと微笑まれる。うっ、イケメンはずるいわ。
昨日は煩かったジークも、何も言わない。むしろ何か言って欲しい。
ローズは……楽しそうだな、コノヤロウ。




