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私は仕事がしたいのです!  作者: 渡 幸美
第二部

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28/108

8 応接室にて

私達は神殿の奥の、応接室に通された。

王城のような華やかさはないが、どこか神聖さのある、質素倹約でありながら落ち着いた美しさのある部屋だ。


ソファーに座って待っていると、ルースさんが大神官様を連れて来られた。大神官様は、私達が立ち上がろうとするのを手で制され、ご自分も私達の向かいのソファーに座られる。


「ジークフリート王太子殿下、イベレスト公爵令嬢よく参られた。エマも良く来たね。と言っても、毎週のように顔を見せてもらえておるが」

大神官様の安定の笑顔……癒される……

「しかし良かったのぅ、ルース。エマが友人を連れてきてくれて」

「だ、大神官様!!」

いつもクールなルースさんが顔を赤くして慌てている。レアだ。そしてそれをサラッとスルーして、大神官さまは続ける。

「ホレ、エマは聖女の仕事に熱心だからのう。学園に編入した時は暫く顔が見れないだろうと寂しく思っておったが、存外にエマは毎週のように来てくれるからの。神殿の皆も嬉しいやら、それはそれで学園生活に慣れずにおるのかと心配していてな。

ワシはエマの様子を見ている限り、大丈夫じゃろうと言うておるのに……特にルースは心配性での」

ふおっ、ふおっ、ふおっ、と笑う大神官様。


「仕方ないでしょう、エマが我慢強い子であることも知っているのですから……兄心のようなものです」

ルースさんはまだ耳に赤みを残しつつ、腕組みをして開き直ったように言った。

まったくもう、大神官様ったら!

「大神官様、せっかく皆さんやルースさんが心配してくれてるのに、揶揄するように言わないで下さい!私、すごく嬉しいです、心配してもらえて。本当にお兄ちゃんみたいで」

大人が人をからかってはいけませんよ!まして大神官様が。


「お、おお、すまんすまん、そうじゃの、エマ」

そうですよ、プンプン。

…何だかルースさんが微妙な顔をしているではないですか。まだ心配してくれているのかしら。

「あの、ルースさん、私ちゃんとお友達います!本当に大丈夫です、楽しくやってます!」

「……そうか、安心したよ」

ちょっと苦笑気味な気もするけど、笑顔だ、良かった。あまり心配させるのも、妹分として忍びないもんね!


「エマ………恐ろしい子…………」

ローズが何とか笑顔で堪えつつそう呟いたことも、その横でジークが何とも言えない顔でいたことも、私は気付かなかった。



◇◇◇◇◇


「や、これは申し訳ないことを、殿下。公爵令嬢。身内で騒いでしまったのう」

ようやく大神官様が仕切り直す。

「構いませんよ、大神官殿。先ほどルース神官にも申したが、神殿の皆がエマを大切にしてくれているのは心得ている。それと、私と公爵令嬢の事は名前で呼んでくれて構わない」

「ありがとう存じます、では、そのように。……早速ですがジークフリート様、今回のご訪問は何やら闇魔法についてでしたな」

「そうだ。そもそも気づいてくれたのはエマだが」

「ほう、エマが……」

ジークは頷き、陛下にした説明と同じように話す。


「なるほどのう。そんなことが……いやでも、あり得るかもしれんの。神殿にも、王家と同じような文献が残っておる。しかし、初代とされる聖女はエミール…まあ、歴史はそのようなものと言われればそうであるが。

ルース、水晶をここに」

「はい」

大神官様に指示され、ルースさんは私達が囲うテーブルに魔力判定の水晶を置く。

「ローズマリー様、申し訳ないがもう一度判定を受けてもらっても良いかね?」

「はい、構いません」

「では…こちらに手を」


ローズが頷き、水晶に手をかざす。すると、水晶の中に風が舞い、すうっと煙のような暗闇が広がっていく。

「うん、以前と変わらずに風と、闇と……」

と、大神官さまが言いかけると、水晶の中にキラキラとした星空が広がり出した。そしてそれは水晶に止まらず、私達を包み込んですうっと消えた。

「何と……魔力の質が変わったと言えばいいのか……いや、目覚めたと言うべきかのう。美しい魔力でしたね、ローズマリー様。エマの見立ては大したもんじゃのう!」

「……ありがとうございます」

「ふふっ、優しいローズですもの、当然です!」

心穏やかになる、優しい魔力だ。

「ふむ。さすが公爵令嬢と言うべきか、魔力量もエマに引けをとらぬし。確かに二人の聖女と言えそうじゃ。風魔法の方でコントロールは身に付けておられるようじゃし、ひと月もあれば使いこなせるのではないかの?毎日通ってもらうようにはなるが」

「わあ、さすがローズ!」

「ありがとう、エマ。でも、やってみなければ分からないわ。…頑張るけど」

「焦らなくていいからな、ローズ」

「ありがとう、ジーク。無理はしないわ。でも頑張りたい」


そんな私達のやり取りを、温かく見守ってくださっている大神官様。ルースさんも穏やかな笑顔だ。

「では、さっそく今日から少し始めてみましょうか。よろしいですよね?大神官様」

「そうじゃの。三人を案内してあげておくれ」

「承知いたしました。……では皆さん、女神の間に移動しましょう。こちらへ」


「「「はい」」」


ローズの修行?開始です!楽しみ!


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