6 パジャマパーティー開催
「ねぇ、実際のところ、どう?ハルト」
「いきなりブッこんで来たわね……」
うーん。
「ちょっとアレだけど、悪い子じゃないわよ」
アレって……でもまあ、
「悪い人ではないんだろうなあとは思う」
「年下嫌とか?」
「いや、それはないかな。前の旦那様、年下だったし」
「え、何それ、そっち聞きたい!聞いても平気?」
前の亡くなり方を気にしているのだろう。
「うん、まあ、それは大丈夫だけど、やっぱり恥ずかしいかな……」
「えー!いいじゃん、聞きたーい!どこで出会ったの?」
「えぇ…ほんとに恥ずかしいんだけど……まあ、仕事で…イベントのクライアントだったの」
「ほうほう、それで?」
こうなるともう、公爵令嬢はどこへやらだな。人のこと言えないけど。
「私は入社して3年目だったんだけど、向こうは1年目でね。初めてのイベントだったのよ。あ、もちろん先輩に付いてね。で、まあそりゃいろいろ企画をするわけですから、打ち合わせとかでしょっちゅう顔を合わせていて」
「そこで口説かれたの?」
「まさか。真面目な人だったもの。仕事中には全然そんな素振りはなくて。責任感もあって、すごく一生懸命で、いい新人さんが入ったわね、くらいにしか思ってなかったわ。
……それが、イベントが無事に終わって、みんなで打ち上げの時に、すっごい大きな花束を持って現れて」
「きゃー!!」
ローズはもう、目がキラキラしている。うっ、やっぱり恥ずかしい……
「……くれたのよ」
「ちょっと、誤魔化さないで?」あ、バレた。
「その、…私の仕事してる姿がカッコ良くて一目惚れしました、って。そして仕事を一緒にするうちにいろいろな面も見られて、ますます好きになりました、っ、て……」
ああ、もう!!顔が熱い!!!
「年下ですけど、付き合ってください!って言ってくれたの。わ、私はそんな事思ってもいなかったから、凄く驚いて……反射的にハイって言っちゃったのよね」
「へ~」
ローズさん、ニヤけ過ぎです。
「あ、はいって言っちゃった、って、すぐに思ったんだけど、すっごくいい笑顔をしてるし、まあその、仕事も真面目で好印象だったし、いいかなって……」
最後はごにょごにょになってしまう。
「結局、それって無自覚だったけど、エマも好きだったってことよね!」
「~~~!」
もう許して下さい。
「いいじゃない、素敵な思い出!…でもあれね、無意識的に今のエマの仕事に対する姿勢?みたいなの、残ってる感じよね」
……言われてみれば。
仕事している時がカッコいい、って嬉しかったんだよね、確かに。忘れているようで、忘れていなかったんだな。……最終的に、嫌いで別れたとかじゃないし。
「……そうみたいね」
「でもそうだよねぇ…好き嫌いでのお別れじゃないもんね……って、ごめん、無神経に」
「いいのよ。でもあれよ、ウチはたまたま、ちょっと早いお別れだったけど、世の中の多くの人はそんなお別れだからね?」
「それも、そうだけど」
「逆に今、何だか幸せで不思議な気分よ。こう、ローズと話していて、いろいろスッと腹に落ちたと言うか」
「……そう?」
「うん。強がりでもなく」
「エマの旦那様も、こっちに来てたりするかしらね?」
「勘でしかないけど、いないと思う」
「なぜ?」
「もう隠しても仕方ないから言うけど、ウチは仲良しだったから」
うん、理解してる、という顔のローズ。
「私がいなくなった後…しょげられ過ぎても困るから、子どもたちをお願い、って、勝手な発破をかけたの。彼のことだから、きっと頑張ってくれたと思う。想像でしかないけど、同じ時に転生ってないような気がする」
「あ…そうか……」
ローズも思い当たったのだろう。たまたま、かも知れないけれど、ローズとジークを考えても、そんな気もするし。所詮、人間が輪廻どうこう考えても限度があるよね。
「何だかしんみりしちゃったけど、毎回同じ人生じゃないし、私はちゃんと完結してるから!エマはエマとしてちゃんと楽しまなきゃ勿体ないからね!ローズとジークみたいなバカップルだって目指しますよ!誰かと!」
「ちょっと、バカップルってひどくない?……でも、益々大切にしようと思うわ」
「じゃあ、今度はローズ達の馴れ初めね!」
「えっ」
「えっ、じゃないわよ、当然でしょ?」
「う…分かったわよぅ」
ローズの照れ顔は何度見ても可愛い。
「えっとね…」
夜はこれからです。




