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私は一般人(モブ)である。  作者: 雨空 雪乃
最終章 〜私は一般人である〜
34/35

ふたつめ 〜それはすいせいのような〜

小屋に戻った僕らは、お茶を淹れてくれるナハトさんを待つ。

「サクラ、ナハトさんさぁ…」

小声で話しかける。

「うん…。多分、いや絶対ナハトさん手加減してくれてたね…。凄い強かった…」

サクラは悔しそうにそう言う。

「そうだね…。でもあんな魔術の使い方するなんて…杖なんて使ってる人見たことないよね…」

僕らは顔を寄せながら話し続ける。

「う〜ん…。持ってる人は見たことあるけど、大体格好つけてるだけだよね…。使う必要ないし」

「杖から魔術を放つって…属性を纏わせるより大変だろうなぁ…。あとあれ。ナハトさんって、全属性持ちだったんだね…」

と…。

「いやいや、全属性なんて持っていないよ。私は」

そう言ってナハトさんは、僕らの前にカップを置いた。

「え…?違うんですか?」

サクラは意外そうに言う。

「えぇ、そうよ。それどころか今持ってる適性はひとつしかないよ。…まぁ、前は2つあったんだけどね…」

そう言って座った彼女は、お茶を飲む。さすがに僕も口を挟む。

「でも、風属性を使っていたじゃないですか…。それに、杖の使い方も…」

「はは、まぁ…。そこ突っ込むよね…そりゃあ。うん、よく見てて」

そう言って、ナハトさんは右手をテーブルにかざす。

「……展開(コール)。…創造(ゾラーク)

聞いたことのない魔術…。そう思った僕の前に、コトン…と、テーブルナイフが現れた。

「え…………」

僕もサクラも絶句する。それを見たナハトさんは大笑いし始めた。

「はは…はぁ~。珍しいよね。創造(ゾラーク)って魔術だよ。私が異世界人だって証拠でもあるかな。これのせいで、あんな異名まで付いちゃってさ」

ケラケラと笑う彼女をみながら、思い出す。

「「……創造主」」

「そうそう!ほんと、嫌になるよ。…ただこの魔術の適性があったってだけなのにさぁ…。んで、この魔術で他属性の適性も創造(つく)ったってこと」

そこから、ナハトさんは過去の話を聞かせてくれた。


◆ ◆ ◆

「私が世界に干渉しなかったのは、こういう事情なの」

そう話し終えたナハトさんに、私たちは少し呆けてしまった。

「あれ、もしかして理解できなかった…?」

心配そうに、そんな的外れな事を言われてしまった。

「「いやぁ…理解はできましたけど…」」

と、ふたりして頬を掻いてしまった。

「正直…信じられませんよ。神の上がいるなんて」

私がそう言うと、ナハトさんはキョトンとした顔をした。

「え?上なんかじゃないよ?同化()なんだから。というかむしろ下でしょ。そんな事言うなんてどうかしてるって」

と、彼女は地面()を指をさした。いや…そういう話をしているんじゃないんですけど?って、ノアも笑ってんじゃないよ…。

「クク…ふふ、確かに。でも、ナハトさんの話って、言い伝えとはかなり違うんですね」

ノアの言葉に、ナハトさんは言う。

「そうなのよね…全ては世界の神(ウェルト)ってのが横着をした結果だし、私の見通しが甘かった結果、なんだよね…」

でも…。と、ナハトさんは私たちを見つめる。

「あなたたちには、ちゃんと覚悟が決まったんだって確かめられて良かったよ」

「いやぁ…私は最初、成り行きでしたけどね…」

「僕なんて未だに『勇者』なんて呼ばれるのは心苦しい限りですよ…」

「いやいや、何にせよ『覚悟ができていること』、それ自体が重要なのよ。私なんてこの30年…何もできなかったんだし」

そう言って、ナハトさんも頬を掻く。

「あ、そうだ。それであなたたちはどうしてここまで来たんだっけ?」

そう聞かれて、私も少し考えてしまった。

「いや、サクラ、忘れてないよね…?(クリンゲ)アナウンス(ナハト)さんが教えてくれたんですよ、ここを」

そう言ってノアはナイフをナハトさんに渡す。

「あぁ…なるほど。その子たちが…ふぅん?」

ナハトさんはナイフを受け取って眺めている。

「あぁ…なるほど…。あの部屋の機能も使ったんだ…。うん…契約者は確かに…。あぁ…確かに入れてたなぁ…」

ぶつぶつと呟くナハトさんは、軽く。

「ノア。この人格モジュール、まだ必要?」

そうノアに聞いたのだった。

「え?あ、はい。…え?」

戸惑うノアに、ナハトさんは続ける。

「このモジュールはねぇ…リアの為に入れたものなのよ。『私がついて行かない代わりに』ってだけだったから…必要ないかなって。そうしたら空いた容量に別の術式組めるからさぁ?」

「え…別の…?というか」

私も思わず口を開いた。

「ついて来るんですか!?」

キョトンとした顔をするナハトさん。

「え?ダメ?戦力にはなるよ?私」

私は慌てて言う。

「い、いやいや!戦力的な意味では本っ当にありがたいですけど…。あの、ナハトさんはそれで良いのですか…?」

ナハトさんは言葉を選ぶように答えた。

「うーん…良いというか。もうそろそろ私も…覚悟決めなきゃなって、そう思ったの。リアの為にも、あなたたちの為にも、それに…」

と言って、首を振る。

「とにかく、私も動かないといけないから、ね?」

その言葉に私たちは頷く。

「「一緒に行きましょう。ナハトさん!」」

私たちは互いを見やり、笑顔を交わす。

「よ〜っし!そうと決まれば行きましょー!」

と言って鞄を持ったナハトさんは、スキップでもしそうな足取りで外へ出た。

「「えっ…えぇ!?今からですかぁ!」」

私たちは慌てて荷物を抱えて、彼女の後を追い、外へと出るのだった。って、え…なにこれ……?

「ほらふたりとも!急いで!」

見たことのない何かが、草原の真ん中に現れていた。

「な、なんですかこれ…?」

ノアも困惑しているようだった。

「前いた世界の…46cm砲って。んー、大砲って奴、かな!」

と、ナハトさんはその大砲?を、パンっと叩く。

「いや、いやいや…こんな物まで作れるなんて…」

ノアがそう言うと、

「いやぁ、大切なのは見た目(ガワ)とイメージだからね。構造知らなくても何とかなるものよ。こっち来て」

言われるがままに近くに行くと、ナハトさんが術式を唱える。

術式展開(コール)次元保護(シュカルディ)

私たちの体が膜のような魔力で覆われていく。

「これは…?」

「ただの保護術式だよ。ノア、(オーグ)で管理局は見える?術式符号(コールサイン)は…」

と続けるナハトさんに、ノアは(オーグ)を起動させる。

「…!はい!見えました!」

「お、良いねぇ!ちゃんと使いこなせてる!そしたら…ふたりとも、私の手に触れててね」

そう言って差し出された左手に、私たちは手をのせる。ふぅ~…と深い息を吐いたナハトさんは、集中しているようだ。

魔力接続(コネクト)…ふたりとも、魔力を」

「「はい!」」

私たちはナハトさんの手に魔力を流した。

「うん、ありがとう…記録できた。後は…」

魔力が砲身に満たされて、青白く光りはじめた。私はたまらず聞いてしまった。

「あの、これ…今から一体何をするんですか?」

ナハトさんは一瞬キョトンとしたが…

「あー…言ってなかったね…まぁでもすぐに分かるよ。…発射(ブレネ)!」

すると耳を壊すような轟音とともに、青白く光る砲弾が飛んでいった。ふぅ~…と、ナハトさんはまた深く息を吐く。

「ノア、弾着観測よろしくね」

「あ、はい…。それで…?」

ナハトさんは

「これから、私たちも跳ぶからね。酔ったらごめんね」

と、ニヤリと笑ったのだった。

「え、どういう…」

と言いかけた私の視界は、一瞬で真っ白になったのだった。

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