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私は一般人(モブ)である。  作者: 雨空 雪乃
第三章 〜一般人であった私〜
31/35

とおつめ 〜夜の世界の創造主〜

草原に、満天の星空。夜風に揺れる草…私はひとり、ここに立つ。

「…術式展開(コール)分割思考(デンケンディヴ)。…影魔術(ノクターン)

左手を地面にかざす。改変した影は広がらずに、地面の中へ。…この世界()の魔力を…数年分奪った(貰った)

「…探知(エルケン)。…モニュメント…起動」

星から奪った(貰った)魔力で、各地にあるモニュメント同士を繋いでいく。空は私の魔力で覆われて、オーロラの様な景色に変わる。

「……できた…この世界を覆う…結界」

ふぅ…と息を吐く。すると。

『ついに、この時が来たか』

頭の中で、そんな声が響いた。

「この声…像の…?」

『そうだ。久しぶりだな、トウカ』

「えぇ…お久しぶりです。お元気そうで」

『元気…ではないな。お前が私の魔力を奪ったからな』

…やっぱり、そういうことだよね。

「ねぇ、ウェルトさん?」

私はそう、この世界(ウェルト)に問いかける。

「私と一緒に、この世界を塗り替えてくれない?」

『……ほぅ?』

「私……ヒトトセトウカの影は、魔王(スカディ)だった。アレは私が消えるまで、増え続ける」

私は続ける。

「だから…この世界から…ヒトトセトウカを消して」

『ふむ…ナハト・ウェルトという名は残し、それを名乗っていたお前の存在を消せ、と?』

私は頷く。

この世界での私(ナハト・ウェルト)を消しても…影は消えない。だから…」

すると、ウェルトさんは笑う。

『はは、なるほどな。よく考えた。…では』

と、ウェルトさんは続ける。

『お前には…"創造主"として語られる伝説を残そう。そして…新たなナハトとなれるものを呼び出(召喚)しておこう』

夜の世界の次は…創造主かぁ…。

「…分かりました。やりましょう…」

でも、もしできることなら…。

「…先代のナハトの、親族の方を…お願いします」

『ふむ…確か孫がいたな……いいだろう。……では始めるぞ。…影魔術(ノクターン)は解除して良い。我が注いでやる』

そう言われて影魔術をとくと、足の下から魔力が身体に流れ込んできた。

ふぅ〜……。意識を集中させるように、深く息を吐く。

それはもう、魔術ではなかった。

世界の記録(記憶)を『塗り替える』…祈りを捧げる『魔法』…。



「…………術式展開(コール)…」


みんな…さようなら…。


◆ ◆ ◆




私は一般人だった。でも、その日々は唐突に失われた。


取り柄と言えば…少し特殊な魔術の才と、祝福があったことくらい。とは言うものの、その祝福は同時に呪いでもあった。

後に語られる『世界を創った夜の魔法使い』などという幻想(伝説)は、きっと私への戒めなのだろう。

創造して(つくって)』なんていない。元々世界はあったのだ。私は(トウカ)を消すためだけに、この世界を『塗り替えた』。

あの夜を思い出しながら…私は座り、お茶を飲む。この世界にはもう…。年老いた私(ヒトトセトウカ)の居場所なんて、ないのだから。

コンコンコン…と、扉が鳴る。

扉を開けると、ふたつの人影が立っていた。

ひとりは、あの頃のリアとそっくりな。

もうひとりは、かつての私のように、モノクル(オーグ)を。

「…いらっしゃい」

ふたりを招き、中へ入れた。

「あの…あなたは…?」

ふたりの問いに、私は答えるのだ。


「私はナハト・ウェルト」

『創造主』なんて呼ばれているけど、ただの魔術好きのババァ(一般人)だよ…と。

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