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私は一般人(モブ)である。  作者: 雨空 雪乃
第三章 〜一般人であった私〜
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やっつめ 〜ゆうしゃ〜

影に呑まれた廃墟を、私とおじ様は歩く。倒れている人があちこちに…。影を排除するまでもなく、息絶えていることが分かる。

「………ッ!」

悔しさと悲しみでで、目を伏せてしまう。

「ナハトよ…前を見ろ。そして、倒れた人間たちを見ろ。おぬしがそんなでは、ここで戦った者たちが報われんだろうて」

その言葉にハッとした。…そうだ、私が撒いた様なものだ。私が、やらなきゃいけない!

「そう、ですね…。おじ様、お城はこの先の…アレ、ですよね?」

「恐らくな。だがアレは…」

辛うじてお城のように見えるけれど。それはもう『お城のような影』になっている。

「でも、行ってみましょう」

そう言って、お城へと続くであろう階段を登る。しばらく登ると、中央に噴水のある広場へとたどり着いた。

「あれ…?人?」

「おぉ…生き残りかもしれん。おぉ~い!」

おじ様が叫ぶと、人影はゆっくりと振り返った。背の少し高い、少年のように見える。

「すみません…!この街の方ですか?」

そう声をかけながら、人影に近付いていく。すると…。

「…そこで止まれ」

男にしては少し高めの声で、人影は二振りの刀の切っ先をこちらに向けた。

「あの…私たちは!」

「…黙れ!」

彼は血まみれで、切っ先を向けたままこちらを睨みつけている。

「お前たち…あの影はなんだ?お前たちの仕業か…!」

すると、おじ様が叫び返す。

「そんなわけなかろう!わしらは今しがたここへ着いたばかりだ!」

「……口では何とでも言えるだろうな…おい女!」

と、私に切っ先を向けなおす。

「お前…!この影と同じ魔力を感じるぞ…!とぼけても無駄だ!」

私も必死に叫び返す。…嘘は吐けない。

「えぇ…!その影は私の魔力を奪ったの…!だから…!」

男はそれを聞き、体勢を低くした。

「……そこまで聞ければもう充分だ…!死ね!」

男がふっと消えた。え、あれ…?腰のナイフに手をのばし…防御を…!

「遅い!」

「………ッッ!」

後ろから声が、反応できない…!しかしその刃は私には届かなかった。

「やめておけ、坊主」

おじ様が男の刀を折り、守ってくれたからだった。

「くっ…刀が…!」

「いいや。ダメだな、坊主。この娘をよく見てみろ」

おじ様が低い声でそう言うと、男は私を睨み…そして目を丸くした。

「あ…?嘘だろ……?」

「いいや、嘘ではないわな。…『違う』であろう?」

そう言って、おじ様は私の隣に戻る。

「あ、あぁ…違う」

「ふん。勘違いも甚だしいとは、まさにこのことよなぁ…」

と、おじ様はまた仁王立ちで立ち、低い声で続ける。

「坊主…お前、『勇者』の祝福を与えられておるな?」

その言葉に、男はハッとしておじ様を見上げた。

「な、何故それを…?」

おじ様はふん、と鼻を鳴らす。

「お前のその解析眼()だ。祝福を与えられてもいない限り、この娘ですら裸眼では使えん」

「た、確かに…俺は勇者の祝福を授かった…。だが…」

男は辺りを見回す。

「街に着いたらこんな有り様だった…。これじゃあ勇者なんて…」

「『お飾り』などと思っておるのか?だから怪しかったこの娘を襲った、と?」

おじ様は男を睨んでいる。

「いや…。あぁ…そうだ」

「……気に入らんな。あとはふたりで話せ、ナハトよ」

おじ様は離れていってしまった。男は刀を鞘に納めて、申し訳なさそうに私を見た。

「……ナハト、と言ったか」

「えぇ、ナハト・ウェルト。…あなたとは違うけど、私も祝福を授かってる」

「俺は…リアーク。リアーク・スフォルツァ…勇者だ」

「そう…。よろしく」

私は右手を差し出した。

「え、あ、あぁ…。よろしく」

少し困惑していたが、リアークは手を握り返してくれた。

「それで…勇者様は、あの影の事をどのくらい知ってるの?」

そう言うと、リアークは慌てて手を顔の前で振る。

「勇者様なんて呼ぶのはやめてくれ!…リアでいい」

「ふふ、うん。分かったよ、リア。それで…?」

「あぁ、いや…詳しくは知らん。夢で『影を倒せ』と言われただけだったからな…」

…やっぱりそうかぁ…。私は影のことを全て話すことにした。

◆ ◆ ◆

私たちは、噴水の縁に腰掛けて、話している。

「なる、ほど……。だとしたら魔力が似ていたのも納得がいった。…大変だったな」

「いやぁ、分かってくれてよかったよ」

私たちは街を眺めながら笑い合う。すると。

「……くっ…!」

突然リアが頭を抱え始めた。

「え、リア!?」

リアは、私の声に左手を出して制した。

「問題ない…。少し待ってくれ…。…くっ」

頭を抱えたリアが、ぶつぶつと呟く。

「…草原…星…小屋………婆さん……?」

え、それって…。

「……ふぅ…。済まなかったナハト。たまに流れ込む…お告げ、というやつだ」

荒い息をしながら、リアはそう言った。

「あぁ…リアも大変だね…。でも、その場所…知ってるよ」

というか、あそこしかない。

「…?どういうことだ?」

困惑したようにそう聞かれ、私は言う。

「私の師匠…シジマさんの居場所だよ、そこ」

「なるほど…ナハト(あなた)の師匠、か…。ということは…」

と、リアは立ち上がった。

「どうやら俺は、そこで修行をしなければならんらしい」

あー…ばぁさんの修行かぁ…。と、私はつい目を逸らしてしまった。

「そっか…。ばぁさんには、会ったことある?」

「いや、ないな。行ったこともない」

「そうだよね…ちょっと待ってて」

と、私は紙とペンを創造する。

「お、おい!今それどこから?」

「…今は良いでしょ?えっと…」

カリカリとペンを走らせる。…ここからの簡易的な地図を描いた。あとはばぁさんへの紹介状と手紙。

「ほら、これを持って行って」

と、リアに渡す。

「おぉ、地図か…。見やすいな、うん。ありがとう。それで、この手紙は…?」

「うん。それはばぁさんへの紹介状と手紙。全然連絡取ってないからさ…届けてくれる?」

そう言うと、リアの顔がパッと明るくなる。

「助かる!ありがとう。…必ず届けよう」

そう言って、懐の鞄に丁寧にしまい込んだ。

「では、行ってくる!また会えることを祈っている」

「うん!行ってらっしゃい!…頑張ってね」

背中越しに手を振るリアは、確かに勇者に見えた。

と…。

「おぉ、坊主は行ったか」

おじ様が戻ってきた。

「うん、お告げがあったみたい。…ばぁさんの所で修行、だってさ」

そう私が言うと。

「はは、ははは!そうか!一度痛い目に遭ってくるといい!」

…かつてないほどの笑顔だった。さて、私も私の仕事(使命)を果たさないと。

「おじ様…魔力、貸してくれる?」

そう私が聞くと。

「おう、そうさなぁ。この街の規模を考えると、その方が良いだろうの」

と、おじ様は私の背に手を置いた。この街は、噴水が結界の起点になっていた。私は魔力を注ぐ。

結界で、次第に街は覆われていった。そして。

「…影排除(ノクアシュルク)

街全体に星のような光が降り、影は消えていった。

「危ない!」

突然、私は弾き飛ばされた。

「…えっ!?おじ様!」

おじ様と私の間の空間に、影が貫いていた。

◆ ◆ ◆

「クク、ククク…。…またしても…貴様はァ!!!」

そう叫んだのは、影の魔王(スカディ)だった。

「大事ないか!ナハトよ!」

私の隣に、おじ様が移動してきた。

「えぇ、大丈夫ですおじ様!それより…」

ゆらゆらと揺れる影を纏った魔王は、私の見た目とそっくりだった。

「…やっとまた、会えたね。スカディ」

私が睨みながらそう言うと。魔王はまた、ククク…と笑った。

「…貴様!まさかクソ王(ギルガメシュ)と一緒だったとはなぁ!お陰で殺し損ねたぜ!」

「おう、スカディよ!久しぶりなのに随分な言い方だの!」

おじ様は構えたまま、そう言い返す。

「ククク、ククククク。…あぁ、テメェを殺す日を夢に見たぜぇ!クソ王!」

そう言って、影を伸ばす。私は左手に持ったナイフを小太刀に変えて、その影を斬り払う(分割する)

「クク…キャハハハ!イイもん持ってんなぁ!創ったのかぁ?」

…気味の悪い笑い声に、反吐が出る。

「うるさい!アンタを倒す為に、私は旅をしてきたんだ!」

私は右手で、銃を抜いた。

「…術式展開(コール)閃光魔弾(リヒトクーゲル)!」

「なっ…なにィ!」

放たれた弾丸は、影の身体を貫いた。

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