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私は一般人(モブ)である。  作者: 雨空 雪乃
第三章 〜一般人であった私〜
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ななつめ 〜おうとへ〜

1週間程が経ち、復興を手伝っていたある日。

「おう、来たぞ。ナハトよ」

ギルガメシュさん(おじ様)は、また唐突に現れた。

「あっ、お久しぶりです。おじ様」

と、汗を拭ってお辞儀をする。

「はは、魔術師が肉体労働とはな」

おじ様は笑いながら、私の肩を叩いた。

「えぇ。魔術師ですが、結構動けるんですよ?私」

と、私も笑いかける。

「おぉ、体術も行けそうだな。よい筋肉だ!」

……それはちょっと女には失礼だよ。

「それで、おじ様がいらしたのなら…例の話ですよね?」

「おう、そうだとも。少し話せるか?」

と、おじ様は辺りを見渡している。

「えぇ、どうぞこちらへ」

私はおじ様と、近くにあったテントへと入っていった。

「さて、ナハトよ。この前ヘルメスには会ったな?」

テントに置いてある椅子に座り、おじ様は話しだす。

「あ、はい。お会いしましたよ。どうぞ…」

私はお茶を出しながら答えた。

「うむ、済まんな。…ならば、『守護刻印』の話は?」

そう言っておじ様は、お茶を口に含んだ。

「えぇ、聞いています。神々はこの世界(人間界)に居着くことになる…と」

私も、一口飲む。…うん、美味しい。

「そうだ。しかもそれは、(アレ)を倒した後も続くことになる。…その覚悟が決まらんかった()は、わしが天界に置き去りにしてきたわい」

と、おじ様は上目にこちらを見ている。ふぅむ…なるほど。

「もしかして…天界の神も説得して欲しい…とか?」

私がそう言うと、おじ様は盛大にお茶を吹き出した。

「ゲホッゴホッ…そんなわけなかろう…!王たるわしが言ってダメで、なぜおぬしに説得させようと考えるのだ!」

「あ、あはは…冗談ですよ…」

私は苦笑いで目を逸らした。

「それなら、どういった話でしょうか…」

口を拭ったおじ様が答える。

「おぬし、これからわしと王都へ行くぞ。おぬしには『人間側の』説得をしてもらう」

…そっちか。

「おじ様も、一緒に?」

不安そうにそう聞く私に、おじ様は、

「当然であろう?人間と神との融和も含めておるのだからな」

な、るほど。まぁ確かに、それもそうか。

「それで、だ。ナハトよ」

「あっ、はい」

神妙な面持ちでこちらに頭を寄せるおじ様につられて、私も小声で頭を寄せる。

「おぬし…飛べたりはしないかの?」

「え、えぇ!?飛ぶぅ!?」

しまった、大声を出してしまった。

「は、ははは…冗談だ、冗談!」

というおじ様は、苦笑いで目を逸らす。

「どうして、そんなことを?」

「い、いや、ははは…。遠いのだ…お前だけならまだしも、わしとともに、となるとちと道のりが面倒での」

はぁ…ものぐさな王様だこと。…あ、でも。

「さすがに飛ぶのは無理ですけど…何とか早く行く方法は、ありますよ?」

「お、おぉ!それはどんな方法だ?」

と、勢いよく顔を近付けてくるおじ様を避けながら、私は言う。

「でも、この方法は…なるべく矢を遠くに飛ばせる物が必要なのですよ」

そう告げたおじ様は、それはもう困惑した顔をしていた。

◆ ◆ ◆

3日後、街の広場には巨大なバリスタが設置されていた。持ち込んだおじ様は得意気に。

「おうナハトよ!これならば何とかなるか!」

と、それはそれは太陽のような笑顔をしていたっけ…。その周りには見物人がたくさん集まってきていた。

よし、やるだけやってみよう。私はまず、おじ様と私に魔術を展開させた。魔術の名は次元保護(シュカルディ)。今から使う魔術には、これが必ず必要になる。

「…創造(ゾラーク)転移(エイヴォル)の矢…」

創造したのは、バリスタに合うように大きさを調整した1本の矢。これに…。

「おじ様、魔力を」

「おぉ、これにか?ふん…」

バリスタに装填された矢に、おじ様と一緒に私も魔力を注ぐ。すごい…私の魔力の比じゃない。さすが神々の王様だ。魔力がすぐに充填された矢は、青白い光を放っている。

「して、これはどういった魔術なのだ?」

「これは…言うなれば『簡易召喚』を行う魔術です。魔力を充填した者を登録して、矢が命中した場所に強制的に転移します。」

「ほぅ!なるほどなぁ…よく考えられておる。しかし…」

「えぇ…これは『召喚(呼び出した)者』が『矢』になってしまうので…どうしても安定はしません。だから…」

「この『保護魔術』とやらが必要になる、ということだな?」

「えぇ、その通りです。さすがおじ様」

そう言うと、おじ様は照れたように頭を掻いた。

「はは、そう褒めるでないわ。…よし、では照準は…」

そう言っておじ様は、バリスタの角度を調整する。

術式展開(コール)宵の瞳(アベント・オーグ)透視(パスファクト)

私は闇属性で(オーグ)を展開する。モノクルだった見た目は、左眼全体を覆う眼帯の様に変わる。やがて建物、人などの障害物が消え遥か先に見える王都を視界に捉えた。

照準接続(コネクト)…バリスタ」

術式を起動すると、視界に丸いマークが浮かぶ。これが矢の到達予測地点だ。

「おじ様…角度を上へ」

「おう」

ギギギギ…と嫌な音を立てて、バリスタは角度を変えていく。

「止め、次はやや右…そこ」

照準は、王都の正門らしき場所の手前に。

「おじ様、あとは」

「おうさ分かった!」

と、おじ様が拳を振り上げる。

「おねぇちゃ~ん!」

と駆け寄ってきたのはルインだった。そのまま私に飛びついてくる。

「おっ、と。ルイン…?」

「おねぇちゃん!がんばってね!」

ニコニコと笑うルインの頭を撫でる。

「うん、ありがと。行ってくるね」

「へへへ…。あのね、僕…大きくなったらおねぇちゃんみたいになるんだ!だから、帰ってきたら先生になってね!」

そう言って笑うルインに、少し涙腺が緩んでしまう。

「うん…そうだね。今度会えたら、私の魔術を教えるよ」

「ほんと?やった~!」

はしゃぐルイン。

「ほら、じゃあ。危ないからね」

「うん、分かった!またね!おねぇちゃん!」

手を振りながら走っていくルインに、私は右手を振り返した。

「…では行くぞ、ナハトよ」

「…はい!お願いします!」

強く振り下ろされた拳は、バリスタの安全装置を外す。矢は勢いよく、空の彼方へ飛んでいった。

「これで、後は待つだけかの?」

おじ様は腕を組み、仁王立ちで私に問う。

「えぇ…間もなく。………3,2,1…転移し(跳び)ます!」

目の前が白くなり、私たちは眩しさに目を閉じる。やがて光が収まり、ゆっくりと目を開けた。

「な、なんだこれは…!!」

目の前に広がっていたのは、既に影に埋め尽くされ、そのほとんどが廃墟と化した王都()だった。

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