表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は一般人(モブ)である。  作者: 雨空 雪乃
第三章 〜一般人であった私〜
26/35

いつつめ 〜ほしのふったひ〜

泣き止んで落ち着いた少年に連れられて、私は生き残った人たちのいるキャンプへと向かった。…途中で遭遇した影を銃で片付けながら。少年の名前は、『ルイン』と言うらしい。少年らしい良い名前だ、なんて言ったら照れていた。かわいい。

キャンプに着くと、そこかしこに怪我をした人々が倒れている。

「ルイン!」

「あ…!母さん!」

駆け寄って来た女の人に、ルインは飛びついた。

「無事で良かった…怪我はない?…ごめんね、ひとりにして」

と涙を流す彼女に、ルインは首を振った。

「大丈夫!おねぇちゃんが助けてくれたんだ!凄いんだよ!」

と私を指差したルインに。

「まぁ、これは…。息子を助けていただき…ありがとうございました」

と、深々と頭を下げられてしまった。

「いやいや、大丈夫です。…ルイン、お母さんに会えてよかったねぇ」

「うん!ありがとうおねぇちゃん!」

と、笑顔で手を振った。…めちゃくちゃかわいい。い、いやいや。そんなことはいい。

「お母さん!お父さんは?」

少年がそう聞くと、彼女は困ったような、悲しい顔をした。

「お父さんは…ちょっと怪我をしちゃって…」

と、言葉を選ぶように言った。

「え!?会わせて!僕行きたいよ!」

ルインは彼女の手を引く。

「あ、私も一緒に行かせてください!」

慌てて私もついていく。そこは、仮の救護所…テントのようになっていた。ベッドに寝かされていたルインの父は、傷だらけで所々に影の魔力が見える。

「これは…魔術をかけましたか?」

「えぇ…回復魔術を。…でも全然効かなくて…」

と、困り顔をしている。魔力も何もかも奪う影、か…。ならここは、私の出番ってことだね。

「ちょっと、診せてください」

そう言って、彼の上に手をかざす。…分割思考(デンケンディヴ)。さぁ、始めよう(やろうか)…。私は『解析魔術(アナライズ)』を使いながら、魔術創造(マギゾラーク)を展開する。頭の中で陣を描くように、術式を構築していく。影を排除して…身体に影響が残らないように。…頭の中で陣が出来て、術式符号(コールサイン)が読めるようになる。…『影排除(ノクアシュルク)』。完成した魔術を彼に使うと、身体が白い光に包まれて、影が消えていった。ふぅ…どうやらか成功したらしい。

「……んん…。ん……?」

と、ルインの父が目を覚ましたようだ。

「父さん…!」

「あなた…!」

近寄ろうと身を乗り出す彼らに、私は席を譲る。目を開けた彼は、状況が分かっていないようだ。

「ここ…は…?いや、あの影は…」

「大丈夫、ここは救護所よ。あなたは怪我をして…そう、彼女が治してくれたのよ」

と、私の方へ向く。

「あぁ…これは。なんとお礼を言っていいか…」

ルインのお父さんが頭を下げる。

「いやぁ…そんな。ごめんなさい…」

私はつい、罪悪感から謝ってしまう。3人には不思議な顔をされてしまった。…そりゃあそうか。

「…魔力の影響はなんとかなりましたけど、傷は治せないので…」

と、やんわりと話題を逸らした。…目も逸らした。

「ところで…他の人も同じような影響を?」

と、辺りを見回しながら聞いてみる。

「えぇ…影に襲われた人はみんな…。全身を呑まれた人は、影になってしまったわ…」

そう、だよね…。それなら…。

「ルインのお母さん。ちょっとお願いしたいことが…」

「え、えぇ…。何でも言ってちょうだい。私にできることなら」

「この街の人を、なるべく全員…この広場に集めて欲しいんです。襲われた人も、そうじゃない人も」

「分かったわ。声をかけて回れば良いのね」

「はい。動ける人にも出来る限り手伝って貰ってください」

そう話していると、突然ルインが勢いよく手を挙げた。

「やる!僕にもやらせておねぇちゃん!」

まぁ…危なくはないと思う。お母さんに目配せすると、頷いてくれた。

「そうだね、ルインにもお願いするよ。でも、無理しちゃダメだよ?約束ね」

「分かった!行ってきまーす!」

と、ルインは元気よく飛び出して行った。その無邪気さに笑顔になる。

「元気なお子さんですね」

「えぇ、あの子がいると。周りが明るくなるんですよ」

ふふ、とお母さんも笑っていた。さて、と。

「お母さん、出来れば街の中央に行きたいのですが…何か目印はありませんか?」

「それなら…モニュメントがあるわ。アレはほぼ街の中央だったはずよ」

モニュメント、か。行ってみよう。

「ありがとうございます。私は少し準備をしますので…人の方、よろしくお願いします」

「えぇ、任せてちょうだい。あなた、良いわね?」

「あぁ、行ってきなさい。私は大丈夫だ」

そう笑いかけあっていたふたりを見ると、余計に罪悪感に苛まれる。けど、今は良い。

そうして私たちは、救護所を後にした。

◆ ◆ ◆

モニュメントに着いた。辺りを見渡すと、既に人が集まり始めている。ふたりには感謝しなくては。モニュメントを見ながら、私は考える。

「なるべく、単純に…なるべく、広く…広範囲に…拡張術式を…」

ぶつぶつと呟きながら、術式を整理する。『影排除(ノクアシュルク)』は、ひとりを指定して発動する魔術だった。術式効果を拡張しても、人間のみにしか効果は得られない。…うーん。と、分割思考をオンにする。

人のみにしか(他の動物には)対象にしない(効果がない)…。それに、建物(場所)にも影はいる…。なら…このモニュメント(場所全体)起点にして(効果範囲にして)魔術を起動できないか。…なんだかイケそうじゃない(試しても良いかも)

私はモニュメントに手を触れる。…『解析魔術(アナライズ)』。あ、やっぱりこれ、魔力を流せる(魔術を拡散する)材質だ。多分、結界用か何かだったのだろう。魔力を流してみると、モニュメントからあちこちに光が伸びた。見てみるとその光は、壁の上の突起のような物に向かっているのが分かる。…なるほど。なら、使えそうだ(行ってきますか)

「…思考(デンケン)伝達(ヴァール)。…影排除(ノクアシュルク)…対象をこの街全体に変更(改変)…待機」

元々は思考を魔力にのせて、離れた相手に意思を伝達する魔術だけど。私は少し『改変(アレンジ)』を加えていた。『魔力』にのせる、ということは『魔術』ものせられるようになる、ということだ。

モニュメントから拡散した魔力に向かって問う。

『準備はどう?私たち』

少し待つ。

『『『『『『『『『『行けるよ〜!』』』』』』』』』』

…返事が返ってきた。しかも30人くらいの私から一斉に。

『じゃあ行くよ!…せー、のっ』

私たちは魔力に魔術をのせる。

「発動!」

魔術を纏った結界が張られ、影排除(ノクアシュルク)の光が降る。その景色はまるで、キラキラと輝く星が降るようだった。光を浴びた街に纏わりついた影は、浄化されるように消えていった。私はそのまま、解析(アナライズ)ものせる。街全体に散らばった影は、全て消えているようだ。

「はは、やった…。成功…だ…」

魔力が尽きた私は、そのまま倒れ込むように、眠ってしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ