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私は一般人(モブ)である。  作者: 雨空 雪乃
第三章 〜一般人であった私〜
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よっつめ 〜たびのはじまり〜

創造魔術(ゾラーク)には、無限の可能性がある。とはよく言ったものだ。正直チートだと思う。それは例えば、『魔術適性』の創造…全属性を使えるようになった。魔力としては出せるけれど、魔術はちゃんと修練しないと使えないらしい…。あとは、『武器創造』と、魔術創造(マギゾラーク)で創った『改変』…私はあの時創造した大太刀に『(クリンゲ)』とだけ銘を付けて、刃物なら何にでも変えられるように改変した。今は私の腰で、小太刀のような姿になっている。それに…銃。魔術の速射性を上げるために、と単装銃(コンテンダー)のような形を作ったは良いけれど…。構造までは知らなかったからか、外装だけになってしまっていた。魔力を籠めて引き金を引くと、まるで光弾銃の様に魔力弾が放たれる。属性を(まと)わせても、問題なく動作した。これじゃあ創造っていうより、想像魔術じゃ…なんて言ったら。

「同音異義な魔術なんざ山ほどあるぞ?」

だそうです…。それと、もうひとつ。

「これはあたしが向こうから持ち込んだものじゃ。ほれ」

と、鍵付きの棚から取り出したのは…自動拳銃(USP)だった。

「ばぁさん…待って…理解が追いつかない…」

「理解も何も、これが全てじゃろうて。あたしの元の名は『シジマ』という。…あとは分かるのぅ?」

なんてこった…同郷(日本人)だったなんて。

「まぁ…いっか。ありがとねばぁさん」

と、銃を受け取り、創造したホルスターにしまう。弾も多分、作れるだろう。

「さて、あとはこのマントじゃな」

紺色のマントを受け取る。羽織ってみると…やっぱりちょっと大きい。袖を通すと、手は出てこなかった。

「まぁ、ちょっと大きいくらいがちょうどいいじゃろうて。して、そのマントはの…」

と、ばぁさんはマントの事を話してくれたのだった。

◆ ◆ ◆

縦に白いライン(ほうき星)の装飾を入れた、膝丈くらいの紺色のワンピースに、六芒星の装飾のベルトを付けて。その右側には単装銃、左側には自動拳銃を提げる。ナイフにした(クリンゲ)を腰に、回転させて両側で抜けるようにした。足元には、疲れないようにふくらはぎまで覆う黒いブーツを。そして…。

「…うん、良いね。よく見える」

結局視力の戻らなかった左眼には、(オーグ)と名付けたモノクルを付ける。

「支度はできたかの。そら、餞別じゃ」

振り返ると、ばぁさんが小さなリュックを持っていた。

「ヒヒ…これにはあたしが魔術をかけておいた。『拡張』と『軽量化』じゃ。見た目よりもかなり入るぞ。」

「この小屋()みたいな感じかぁ。ありがと」

「なんじゃ失礼なやつじゃのぅ…。…まぁそうじゃな。必要そうな物は先に入れておいた。うまく使うのじゃ」

マントの上からリュックを背負う。鏡を見ると…まるで夜を体現したみたいな出で立ちだ。我ながら実におしゃれ。

「まぁ、あたしから見たらちとダサいがの…」

だって。……酷くない?ばぁさんもあんまり格好変わらないよ?

「イメージは大切だよ、ばぁさん。それに、どうせマントで透明になれるんだ。じゃあ、行ってくるね。ばぁさん」

「まぁそうじゃな。…うむ」

扉を開けて、外に出る。夜…満天の星空。最初に見た(召喚された)日を思い出した。

私は旅に出る。けどそれは世界を救う旅なんかじゃない。ただ、私が創ってしまったモノ(スカディ)を、この手で倒すための旅。噂によると、アレは『影の魔王ハイドラグラム・スカディ』と名乗っているらしい。よくもまぁ…そんな大それた名前を名乗れるものだよ。と、思ったけれど。…私も似たようなものか。だって…。

「よき旅路となることを祈っておるぞ、トウカ。…いや、これからは…」

夜の世界(ナハト・ウェルト)』…なんて名乗らなければならなくなったのだから。

◆ ◆ ◆

旅を始めて、最初の町は、廃墟だった。次の村は、影に呑まれていた。そして…。

「ここもなの…?」

壁に囲まれた街に入ると、あちこちで影が家を呑み込んでいる。身体を得たからはしゃいでいるのか、それとも力を溜める為なのか。人の姿はなく、その全てが呑み込まれたようだった。

「はぁ……。あぁするしかなかったとはいえ…まるで私が世界を滅ぼすみたいじゃない…」

頭痛にこめかみを抑えながら呟く。と…。

「ーー……!」

遠くで人の声がする。…助けよう!声のする方向に全速力で走る。倒壊した家を避けながら、入り組んだ道を駆け抜けると。

「…た、たすけ……!」

怯えている少年を見つけた。すぐ側には影が這い寄る様にその少女に迫っている。

術式展開(コール)魔弾(クーゲル)!」

私は右手に銃を構えて、影に向けて放つ。轟音とともに、魔弾は影を貫いた。…しかし。

「えっ…?嘘、効かない!?」

影には確かに穴が開いたけれど、その穴はすぐに塞がってしまった。影は私に気付いたようで、少年から私を標的にした。

「隠れてて…!」

そう叫ぶと少年は、建物の陰に走っていった。しかし、倒せないと意味がない。…いや、モノは試しだ!と、私は次々と属性弾を撃ち込んだ。

火焔(フラム)魔弾(クーゲル)…効果なし。

水龍(ワルケン)魔弾(クーゲル)…効果なし。

旋風(ドゥリン)魔弾(クーゲル)…効果なし。

凍氷(グロフレス)魔弾(クーゲル)…ダメ。

宵闇(ドゥンケル)魔弾(クーゲル)…むしろ強化されていそう。

雷撃(ドンナー)魔弾(クーゲル)…。と、影は少し怯むような動きをした。

「…雷が弱点?」

続けて何発か撃ち込むけれど、やがてそれに怯むこともなくなってしまった。

「ーーーーー……………」

うめき声をあげながら、影は私に近付いてくる。

「えぇ…あとは…」

と、光属性の魔力を籠める。構えると、影が立ち止まった。…おやぁ?

「これ、だと良いなぁ…。閃光(リヒト)魔弾(クーゲル)!」

ガァン!と轟音を立てて放たれた弾丸は、影を貫くことはなくその表面にヒビのような光を流す。

「……ー!ーーーーーーーー!!!!!!」

すると突然影が苦しみだし、もだえるように転がる。

「これ、かぁ!」

確信した私は、続けて3発ほど撃ち込んだ。

「ーーーー!!!!!」

と、影は叫び声をあげて、掻き消えた。ふぅ…。倒せた…。さて、と。

「しょ〜ね〜ん?大丈夫〜?」

建物の陰でこちらを見ている少年に笑顔を作り、なるべく明るく声をかける。驚いたようにビクッと体を震わせた少年は、おずおずと私に近寄ってきた。不安そうな顔でこちらを見ている。

「おねぇ…ちゃん…?アレは…」

震える声でそう聞いた少年に、私は目線をあわせた。

「大丈夫!おねぇちゃんがやっつけちゃったよ。それより、ケガはない?」

少女は首を横に振った。

「さっきの…急に襲って来て…」

俯きながらそう言う少年の肩もまた、震えていた。

「…そっか。大変だったね…もう大丈夫だよ」

抱きしめて、頭を撫でる。

「怖かったよぉ………」

胸の中で涙を流す少年。彼が落ち着くまで、私は頭を撫で続けたのだった。

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