よっつめ 〜たびのはじまり〜
創造魔術には、無限の可能性がある。とはよく言ったものだ。正直チートだと思う。それは例えば、『魔術適性』の創造…全属性を使えるようになった。魔力としては出せるけれど、魔術はちゃんと修練しないと使えないらしい…。あとは、『武器創造』と、魔術創造で創った『改変』…私はあの時創造した大太刀に『刃』とだけ銘を付けて、刃物なら何にでも変えられるように改変した。今は私の腰で、小太刀のような姿になっている。それに…銃。魔術の速射性を上げるために、と単装銃のような形を作ったは良いけれど…。構造までは知らなかったからか、外装だけになってしまっていた。魔力を籠めて引き金を引くと、まるで光弾銃の様に魔力弾が放たれる。属性を纏わせても、問題なく動作した。これじゃあ創造っていうより、想像魔術じゃ…なんて言ったら。
「同音異義な魔術なんざ山ほどあるぞ?」
だそうです…。それと、もうひとつ。
「これはあたしが向こうから持ち込んだものじゃ。ほれ」
と、鍵付きの棚から取り出したのは…自動拳銃だった。
「ばぁさん…待って…理解が追いつかない…」
「理解も何も、これが全てじゃろうて。あたしの元の名は『シジマ』という。…あとは分かるのぅ?」
なんてこった…同郷だったなんて。
「まぁ…いっか。ありがとねばぁさん」
と、銃を受け取り、創造したホルスターにしまう。弾も多分、作れるだろう。
「さて、あとはこのマントじゃな」
紺色のマントを受け取る。羽織ってみると…やっぱりちょっと大きい。袖を通すと、手は出てこなかった。
「まぁ、ちょっと大きいくらいがちょうどいいじゃろうて。して、そのマントはの…」
と、ばぁさんはマントの事を話してくれたのだった。
◆ ◆ ◆
縦に白いラインの装飾を入れた、膝丈くらいの紺色のワンピースに、六芒星の装飾のベルトを付けて。その右側には単装銃、左側には自動拳銃を提げる。ナイフにした刃を腰に、回転させて両側で抜けるようにした。足元には、疲れないようにふくらはぎまで覆う黒いブーツを。そして…。
「…うん、良いね。よく見える」
結局視力の戻らなかった左眼には、瞳と名付けたモノクルを付ける。
「支度はできたかの。そら、餞別じゃ」
振り返ると、ばぁさんが小さなリュックを持っていた。
「ヒヒ…これにはあたしが魔術をかけておいた。『拡張』と『軽量化』じゃ。見た目よりもかなり入るぞ。」
「この小屋みたいな感じかぁ。ありがと」
「なんじゃ失礼なやつじゃのぅ…。…まぁそうじゃな。必要そうな物は先に入れておいた。うまく使うのじゃ」
マントの上からリュックを背負う。鏡を見ると…まるで夜を体現したみたいな出で立ちだ。我ながら実におしゃれ。
「まぁ、あたしから見たらちとダサいがの…」
だって。……酷くない?ばぁさんもあんまり格好変わらないよ?
「イメージは大切だよ、ばぁさん。それに、どうせマントで透明になれるんだ。じゃあ、行ってくるね。ばぁさん」
「まぁそうじゃな。…うむ」
扉を開けて、外に出る。夜…満天の星空。最初に見た日を思い出した。
私は旅に出る。けどそれは世界を救う旅なんかじゃない。ただ、私が創ってしまったモノを、この手で倒すための旅。噂によると、アレは『影の魔王』と名乗っているらしい。よくもまぁ…そんな大それた名前を名乗れるものだよ。と、思ったけれど。…私も似たようなものか。だって…。
「よき旅路となることを祈っておるぞ、トウカ。…いや、これからは…」
『夜の世界』…なんて名乗らなければならなくなったのだから。
◆ ◆ ◆
旅を始めて、最初の町は、廃墟だった。次の村は、影に呑まれていた。そして…。
「ここもなの…?」
壁に囲まれた街に入ると、あちこちで影が家を呑み込んでいる。身体を得たからはしゃいでいるのか、それとも力を溜める為なのか。人の姿はなく、その全てが呑み込まれたようだった。
「はぁ……。あぁするしかなかったとはいえ…まるで私が世界を滅ぼすみたいじゃない…」
頭痛にこめかみを抑えながら呟く。と…。
「ーー……!」
遠くで人の声がする。…助けよう!声のする方向に全速力で走る。倒壊した家を避けながら、入り組んだ道を駆け抜けると。
「…た、たすけ……!」
怯えている少年を見つけた。すぐ側には影が這い寄る様にその少女に迫っている。
「術式展開、魔弾!」
私は右手に銃を構えて、影に向けて放つ。轟音とともに、魔弾は影を貫いた。…しかし。
「えっ…?嘘、効かない!?」
影には確かに穴が開いたけれど、その穴はすぐに塞がってしまった。影は私に気付いたようで、少年から私を標的にした。
「隠れてて…!」
そう叫ぶと少年は、建物の陰に走っていった。しかし、倒せないと意味がない。…いや、モノは試しだ!と、私は次々と属性弾を撃ち込んだ。
火焔魔弾…効果なし。
水龍魔弾…効果なし。
旋風魔弾…効果なし。
凍氷魔弾…ダメ。
宵闇魔弾…むしろ強化されていそう。
雷撃魔弾…。と、影は少し怯むような動きをした。
「…雷が弱点?」
続けて何発か撃ち込むけれど、やがてそれに怯むこともなくなってしまった。
「ーーーーー……………」
うめき声をあげながら、影は私に近付いてくる。
「えぇ…あとは…」
と、光属性の魔力を籠める。構えると、影が立ち止まった。…おやぁ?
「これ、だと良いなぁ…。閃光魔弾!」
ガァン!と轟音を立てて放たれた弾丸は、影を貫くことはなくその表面にヒビのような光を流す。
「……ー!ーーーーーーーー!!!!!!」
すると突然影が苦しみだし、もだえるように転がる。
「これ、かぁ!」
確信した私は、続けて3発ほど撃ち込んだ。
「ーーーー!!!!!」
と、影は叫び声をあげて、掻き消えた。ふぅ…。倒せた…。さて、と。
「しょ〜ね〜ん?大丈夫〜?」
建物の陰でこちらを見ている少年に笑顔を作り、なるべく明るく声をかける。驚いたようにビクッと体を震わせた少年は、おずおずと私に近寄ってきた。不安そうな顔でこちらを見ている。
「おねぇ…ちゃん…?アレは…」
震える声でそう聞いた少年に、私は目線をあわせた。
「大丈夫!おねぇちゃんがやっつけちゃったよ。それより、ケガはない?」
少女は首を横に振った。
「さっきの…急に襲って来て…」
俯きながらそう言う少年の肩もまた、震えていた。
「…そっか。大変だったね…もう大丈夫だよ」
抱きしめて、頭を撫でる。
「怖かったよぉ………」
胸の中で涙を流す少年。彼が落ち着くまで、私は頭を撫で続けたのだった。




