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私は一般人(モブ)である。  作者: 雨空 雪乃
第二章 〜一般人をやめた僕〜
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むっつめ 〜めいにちに〜

翌朝…日課の稽古が終わるのを待っていたように、修練場の扉が開く。

 「ノア、入るぞ」

軽く一礼をしてから入ってくる親父。げっ…まだ説教し足りないのか…。怪訝そうな雰囲気を悟ったのか、親父は目を逸らしながら頬を掻く。

 「いや、昨日の事はもういい。…いや、違うな…。済まなかった。私もやり過ぎた。だが、心配あっての事だ…そこは分かってもらいたい」

 「あ……うん、分かった…大丈夫。ごめんなさい…」

互いに気まずくなる。話題を変えよう。

 「それで、どうしたの?」

何か言い淀む様に口をぱくぱくさせて、こちらを向き直った親父は

 「今日は…早く帰れるか?」

そう言っていた。なんだ…?

 「忘れたか?今日は…」

あぁ、そうだ。今日は母さんの命日だ。…そうか、親父なりに気を遣ってくれているのか。

 「うん…そうだね。多分、大丈夫だと思う。…夕飯の時間までには帰れると思う」

 「そうか…。今日は久しぶりにツクヨミ様もいらっしゃる。あの方も中々忙しいらしい…お前もなるべく早く、で良い…大変だろうからな。邪魔をしたな」

 「あ、親父!ちょっと待って」

修練場を出ようとした親父を引き止める。

 「…?どうした」

 「いや……せっかくだからちょっと付き合ってよ。見て欲しいものがあるんだ」

と、頼んでみる。いつもなら断られて終わる。

 「ふ…良いだろう。見せてみろ」

 「えっ、ほんとに良いの…?」

いつもと違う反応にたじろいでしまった。笑うなんて。

 「…お前に託すことになったんだ。そのくらいの事は当然だろう?さて、得物は木刀(これ)で良いのか?」

と、親父は木刀を構える。

 「ありがとう…いくよ!」

 「来い、ノア!」

朝焼けに染まる空に、木刀のぶつかる音が響いた。

◆ ◆ ◆

局に入り、地下室へ行く。えーっと…合言葉は確か…。

 「おはよ~ノア。よく眠れた?」

部屋に入るとサクラがいた。

 「おはようサクラ、それがさぁ…」

などと、他愛のない話をしながらパソコンを起動する。

ディスプレイに表示されたのは、またあの文字。

 『覚悟は決まったか? Yes/No』

覚悟…そうだね。期待したものとは違った覚悟かもしれないけれど…と、僕はYesをクリックする。すると表示が消え、また表れた。

 『さすれば、託そう。刃をここへ』

と、パソコンの両側のテーブルが開いた。くぼんだ所に1本ずつナイフを置く。パソコンの画面が黒くなり、ナイフとともに下に吸い込まれていった。

 「えっ…アレ…どういうこと…?」

 「どしたのノア?…ってパソコンないじゃん…!えぇ?」

ふたりして戸惑っていると、室内に声が響く。

 『認証…接続準備…銃を』

と、サクラのテーブルも開く。

 「えっ…えぇ?」

と、戸惑いながらもサクラが銃を置くと、その銃も吸い込まれていく。

 『確認…接続開始……………契約者情報認識…確認…更新開始』

 「サクラ…なんか話聞いてる?」

 「いや…全然…」

お互いに戸惑いつつも、落ち着けるように紅茶を淹れた。

 「更新って言ってたよね…なんだろう。はい」

 「あ、ありがと…。うーん…分かんないや…」

などと話しながら待っていると。

 『更新終了…契約者との接続…完了』

と、テーブルから銃とナイフが出てきた。持ってみたが…見た目は特に変化はない。うーん…?とふたりで首をかしげていると、大きな足音とともに部屋の扉が開いた。

 「ノアよ!おるか!?」

勢いよく飛び込んできたのはギルガメシュ様だった。

 「ツクヨミが今どこにいるか知っておるか!?」

肩を激しく揺さぶりながら鬼の形相で怒鳴る。

 「痛い!痛いです…!知らないですよ…!あの方は普段家にいないですから!」

ガタガタと揺らされながら必死で答える。

 「なぁにぃ!?アヤツそれでも守護神かぁ!」

なおも力強く肩を揺られる。指が食い込みそうだ。

 「僕に言わないでくださいよ!痛った…やめてください!」

 思い切り体をよじって、何とか解放された。痛ったぁ……。

 「とりあえず1回深呼吸して、ギル爺」

サクラが椅子を出しながら、ギルガメシュ様に言う。

 「お、おぉ…済まぬなサクよ…」

と、大げさに深呼吸をしてみせてから、座る。僕は紅茶を差し出しながら。

 「それで…ツクヨミ様がどうされたのですか?」

 「おぉ、済まぬの。…はぁ…いやな、連絡が取れんのだ。もう1週間は経つ。わしの連絡にはすぐに返すアヤツが、だ」

ティーカップをまるで湯呑みでも持つようにすすりながら、彼は言う。

 「え、普段そんなにマメなんですか?ツクヨミ様は」

僕からの連絡は最低で1週間は返ってこないのに。あ、でもそれなら。

 「今日なら…会えると思いますよ?」

 「ほぅ…?」

 「今日、みんなで夕飯を食べることになっているんです。母さんの命日ですから、ツクヨミ様も一緒に」

ふむ…と思案顔のおうさま。その顔のまま、チラチラとこちらを見て、逸らす。

 「……もし良ければ…来ます?」

僕の負けだ、うん。こんな顔をされちゃったら、言うしかないよね。

 「…おぉ、おぉ…!だが良いのか?わしとしてはありがたい話だが…」

もう来る気満々じゃないか、おうさま…。まぁ、少し増えた所で特に問題はないだろう…。と、視界の端にサクラが見えた。じっと睨むように僕を見つめている。

 「…………サクラも来る…?」

たまらずそう言うと、サクラの顔がぱっと明るくなった。

 「いいの?いいの?行く!絶対行く!お参りも一緒に行く!」

と、何故かはしゃいでいる。はぁ…まったく、神様(おや)守護人(こども)は似るのかなぁ…。

 「ならばノアよ、夕時にお前の家に行くぞ。ではな」

と、満面の笑みのまま、ギルガメシュ様は去っていった。…嵐のような神様だよなぁ…ほんと。

そんなこんなで、午前中はある程度の仕事をこなし、僕とサクラはお墓参りに向かうのだった。

◆ ◆ ◆

日が落ち始めて、辺りが紅く染まる。

僕とサクラは、母さんのお墓の前に立つ。

 「母さん、来たよ。今日は久しぶりにサクラも一緒だよ」

 「お久しぶりです、お母さん。風が冷たくなってきましたね」

北風に少し身を震わせつつ、僕らはお墓に話しかけながらお花をそなえる。母さんが好きだったユリの花とかすみ草…普通なら手に入らない季節だけど、いつも買うお花屋さんが毎年用意してくれる。ありがたい話だ。

 「僕ら、一緒の職場にいたんだ。部署が違ったから全然気付かなくて…」

 「そうそう、私は管理課で、ノアは捜査課…会うことなかったんですよ…」

 「でも、ある事件があって…サクラと僕は特別捜査課になったんだ…魔王が復活したらしいんだよ」

なんて話していると、後ろから足音が聞こえた。

 「あぁ、親父」

 「ノアか…と、そちらさんは……?」

覚えていない、というよりは訝しむような顔をしている。まぁ確かに、小さい頃っきりだもんね。

 「お久しぶりです、お父さん。サクラです」

と会釈をするサクラを見て、親父は面白いくらいに驚いた。

 「サ…サクラ…!?おぉ、おぉぉ…これは…立派になって…」

としどろもどろになっている親父を見て、僕らはつい笑ってしまう。

 「はは、びっくりしたよね、親父。雰囲気が大分変わったもんね…クク」

 「ノア…あまり笑うな…。しかし…リアークによく似ているな。まさか…などと考えてしまってな…。いや、大きくなったな、サクラ」

 「いえいえ、私は父には遠く及びませんよ…でも、見てみたかった…」

と、夕暮れの空を見つめている。

 「あ、そうだ親父。今日の夕飯…サクラとギルガメシュ様も行くよ。ツクヨミ様に会いたいんだって。大丈夫だよね?」

 「うむ、サクラがここにいるのなら、そういう事だとは思っていた。母さんも賑やかな方が嬉しいだろう」

しかし…と、親父は思案顔をする。

 「…ギルガメシュ様はなんの用事が…?いやまぁ、いらっしゃるのは構わないのだが…」

 「ギル爺はツクヨミ様と連絡がつかない、と言ってました。多分、一回会って安心したいのかと」

サクラがそう答えると、ふむ…と親父は頷いた。

もうすぐ日が沈みきる。僕らは家へと向かうのだった。




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