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空飛ぶドワーフは前々前世の記憶で無双します  作者: なかむラテ
空飛ぶドワーフ編
8/10

第8話「スカンジナビアダンジョン」

 ーーーーーーーーーー


 ホルム国スカンジナビア山脈の頂上。


 直径50m程のぽっかりと窪んだクレーターの中央には石で出来た鳥居のようなものがある。そこを潜ると、底が見えない階段が鉱山を貫くように下に下にと伸びている。


 スカンジナビアダンジョンと称されたこの洞窟は、下の行くに従って強力なモンスターが出ると言われている。複雑なダンジョンではあるが、簡単に言えば魔族領まで繋がっている抜け道でもあった。


 亜神国側入り口から5階層に入るところには魔法陣が設置されており、モンスターの逆流を防いでいるが、この重要な拠点をドワーフ族に任せているのは、万が一モンスターが侵入して来た場合の保険である。


 つまり、鉱山が鍛冶職人に取って生命線であることに漬け込み、ドワーフの命を対モンスターとの時間稼ぎに使うという意味も含んでいるのだ。


 アリの巣状にルートは広がっているので、地図がなければ間違いなく迷うだろう。

 鉄鉱石だけを採取するのであれば、わざわざこのダンジョンに潜る必要はないのだが、鉄鉱石にマナが混じった魔鉱石が採取できるため、開拓が勧められて来た。


 《魔剣》を作るための素材こそがこの魔鉱石なのだ。


 ウルと父の目的は7階層。


 モンスターと戦いながら、純度の濃い魔鉱石を手に入れることである。

 ただ、7階層程度の純度の魔鉱石では、《魔剣》を作れるほどの素材ではない。

 《魔剣》を作るとなると、最低でも30階層、そしてレジェンドスキル持ちクラスの特殊技能を持つ職人がいなけれが作成できない。


 ウルはもちろん、父にすらそれは不可能だった。


 ーーーーーーーーーー


 ウルと父はスカンジナビアダンジョンの6階層まで来ていた。


「ウル!!」


「はいっ!!」


 ウルは目の前にいるゴブリンに向けて刀を抜くと、一撃で首を跳ねた。


 ザシュ!!


(一撃か・・・)


 驚く間も無くウルは続ける。


 ザッザシュ!! ザシュ!!


 ウルは次々をゴブリンを一撃で沈めていく。



「あんまり手応えないですね」


 ウルの後ろにはざっと20体のゴブリンの死体が転がっている。

 あっという間だった。


「いや、本来であれば12歳で倒せる敵ではないのだがな・・・」。


 父はウルの強さに驚いた。


 昔からどこかおかしいと思ってはいたが、ウルの剣術の上達速度は以上だ。

 ゴブリン単体では、大して脅威ではないが20体同時となるとD級戦闘員3人でやっと倒せるかどうかだ。


「ウル!! これが魔鉱石だ」


 父は岩陰にかすかに光る鉱石を指さした。


「これが・・・、あんまり光ってないですね」


「ここはまだ6階層だからな。こんなもんだ。できればもう少し純度の高い魔鉱石が欲しいが、」


 父はバッグから、ツルハシを取り出すとあっという間に削り取った。


 ウルは魔鉱石を手に取った。魔鉱石はその見た目からは想像できないほど軽かった。

 まるで、石の形をした発泡スチロールを持っている気分だ。まぁ鳩だった頃には持ったことはないんだけど、、



 そして、ウルと父は20対のゴブリンを倒した広い空洞の右手に見える階段を降りると、目的地である第7階層に向かった。


 第7階層は、上層と比べて途端に空気が重い気がした。

 ここに何日もいれば、気が狂いそうになるほど、重く冷たい感覚。しかし、何故か体は暑く、汗が止まらない。そんな不思議な空間には、嫌な予感が漂っていた。


 父も第7階層には何度も来たことはあったが、これほど空気が重く感じることがあっただろうか。

 そんな危機感を感じつつも、先に進むことにした。


 しばらく歩くと、一際輝く岩盤があるのを見つけた。


「あそこに光が強い岩盤がありますよ」


 ウルの発見に父も答える。


「確かに、あれなら良い純度の魔鉱石が取れそうだ」


 ウルは周りより一際光るその岩盤を指差すと、小走りで近寄った。


 グゥー


 ハァーーー


「ん?何か聞こえたような・・・」


 父は、辺りを見渡すと、陰に光る2つの赤い目に気づいた。



 グゥーーーーーーー


 先ほど聞こえた音の正体は、モンスターの吐息だったのだ。



「ウル!!」


 父の叫び声の後、


 ドォーーーーーン


 間一髪でウルは、鋭い爪のある大きな一撃を交わした。目の前に広がる土埃。

 その先には、硬く黒い毛で覆われ、ウルの3倍の背丈もある熊のモンスターが立っていた。


「グリズリーだ!!」


 父は咄嗟に答える。


(ここは7階層だぞ。何故こんなところにグリズリーが、、、)


 本来グリズリーは、10階層より下に住むモンスターだ。

 B級戦闘員すら殺されてしまったこともあるほど危険な魔物だ。父ですら出くわすのは初めてだった。


 しかし、ウルは全くビビっていなかった。


 それよりも、このモンスターをどうやって倒そうかを考察しているように見えた。ウルは本能的に感じていた。こっちの方が強者であることを。


 シュッ!!


(なっ!!)


 驚く父の前でウルは一瞬でグリズリーの懐に入ると、低い姿勢のまま、


「ドォ、胴ーーーーー」


 と声を発しながら、脇腹目掛けて水平に刀を振った。


 がしかし、ガァ!!


 グリズリーの側腹部はとても硬く、刀は入らなかった。


「なんて固い皮膚なんだ」


 両断するつもりだったウルは、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに次の行動に入った。


(こいつ・・・倒せるのか?このグリズリーを?)


 深呼吸をするウルを見た父は、覚悟を決め、ウルに話し始めた。


「ウル!! 良いか? 全てのモノには必ずコアとなる部分がある。鍛冶職人は構造を理解しなければならない。何かを作るときにもそれを意識する。家で言えば柱みたいなものだ。そして壊す時は逆にそれを破壊すれば良い。そうすれば少ない力で最大限のダメージを与えることができる」。



「グリズリーのコアは?」


 単刀直入にウルは父に尋ねた。


「モンスターは額に埋め込まれた魔石を破壊すれば、絶命する。グリズリーも同じだ」


「了解!!」


 そう返事を返すと、再びウルは素早い動作でグリズリーの懐に潜り込む。


 グリズリーも2度目だ。ウルが来るのがわかっていたかのように右手を振り下ろす。


 ウルは右手を交わすと、透かさず後ろに回り込んだ。


 グリズリーは攻撃を防ぐために急いで振り向くが、、、ウルはそこに静かに立っていた。


(?)


 ほんの一瞬だったが、グリズリーは躊躇った。


 そこをすかさずウルは、渾身のスピードで技を繰り出した。


「突きーーーーーー」


 再び妙な掛け声と共に、ウルは刀をグリズリーの額に突き刺した。


 すると、


 ピキッ!!


 額の魔石にひびが入ると、すぐに連鎖して大きなひびとなっていく。


 グゥーオォーーーーーーーーーーーー


 雄叫びを発した後、グリズリーはそのまま後ろに倒れ込んだのだった。



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