呂律と頭が回らない大将 10-7
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3月28日 午後、食堂にて
新入隊員たちと一緒に食事をする大将。他の幹部はそれぞれのお仕事中。食事をしつつ、新入隊員とコミュニケーションをするという、これも立派なお仕事。司令官たるもの、部下の声は常に把握していなければなりません。
新入隊員1「そういえば司令官殿」
大将「ん?」
新入隊員1「なぜ我々にここまで手厚くしてくれるのですか?」
大将「え?」
「私も聞きたいです。」
「自分も」
「改めて、お願いします」
大将「・・・・・・なぜ、か・・・。理由は特にないが言うとすれば、あの演説でした通りだ。だがまあ・・・んー・・・。お前らは、今まで自分が無力だと思ってたか?」
新入隊員1「ええ、まあ・・・」
大将「無力だと、どうしても人に助けを求めたいよな?」
新入隊員1「はい・・・。」
大将「でもずっと助けが来ないと、もう自分で何とかしなきゃって思わないか?またはもう諦めるか。」
新入隊員1「・・・今までは諦めてました・・・。」
大将「俺は・・・そういうやつを救いたいっていうか・・・なにかしてあげたいっていうか・・・俺は昔、それなりに裕福な家に住んでたんだ。なに不自由一つ無くてな。時々、テレビやネットで紛争の事は知ってたんだ。だから何かしてあげたいなって思ってさ。でもどうせ直接は出来ないから、外出したら片っ端から募金箱に募金してた。でも、それだけじゃどうにもならないって思ってな。自分はこうやってのうのうと暮らしてる中、紛争地では必死で今日を生き延びてる人がいる。子供は教育が受けられず、仕事をしてる。俺が住んでた国では、平和、とういうか平穏が当たり前。たいていの人間はのほほんと過ごす。それがどうも許せなくてな・・・。おれは勉強嫌いで、そのせいか成績もそんな良く無かったんだ。」
新入隊員1「えぇ!?あなたが!?」
「うそだろ・・・」
大将「ああ。たいして努力もしねえやつが、ただのうのうと生きてて良いのかなぁって思っててな。そんな自分が嫌いだった。でもどうしても何をするにしてもやる気が出なかった。そうやって大学まで悶々として過ごしたんだ。何もしようとしない自分も嫌だったが、世界も嫌だった。世界は紛争を見て見ぬフリして、他のことにご執心。なんかそれが嫌でな。そんで成人してから、ある組織から声がかかった。表には存在しない組織・・・世界を変えないかと言われて、俺は嬉しかったよ。こんな自分でも誰かの役に立てるって。詳しい経緯はあまり言えないが・・・その組織は世界規模でな。みんなで世界を変えようという意思の元、集まったんだ。」
新入隊員1「それが・・・フリーダムフォースの始まり・・・」
大将「んー厳密には違う。その組織に創れと言われたのでなく、俺が創ったんだ。」
新入隊員1「え!?そうなんですか!」
大将「あぁ、元々それぞれの国で、内部から・・・政治から変えていこうとしてな。だが、それでは駄目だった。」
新入隊員1「え?なぜ・・・」
大将「その組織は、あまり内政干渉したくなかったんだ。変わることが出来ても一時的。その時代が過ぎれば後戻り。だから人々の意識を変える必要があった。その組織は膨大な知識を持ってる。だがこの全世界を管理する訳にはいかなかった。それはタブーだからだ。それに・・・その組織内でも、支援する国としない国をどうするか揉めてたらしい。だから散々考えた結果、選び抜かれた国を支援し、その国に世界を変えて貰おうって話だ。」
新入隊員1「それで・・・その国に司令官がいたんですか。」
「んー・・・いまいちわかんねえなぁその組織・・・変えろと言いながらやっぱり支援しないって・・・矛盾してねえか・・・」
「ほんとだよな・・・」
大将「まあそう言うな。これは非常にデリケートな問題でな。今まではなるべく不干渉だったが、危急の事態が起きたんでな。これから分かる。シリア政府を叩くまでは・・・それまで待ってくれ。ま、とにかく、たまたまその国にいて、たまたま成果を出した俺が、たまたまどうするか言われた。周りの方が年齢が高いにも関わらず、なぜか俺に聞かれた。これからどうすればいいって。そんで俺は答えた。有志で軍隊創って、海外で様々な問題を解決し、お手本を世界に見せる。そうすることで世界に変革を促すってな。いわば傭兵だ。世界の大きな問題、それは環境問題と紛争だ。これを傭兵が持つ軍事力で解決する。もちろん、支援するのは・・・えーっと・・・あれだ、謎の組織に支援された国に支援してもらうってやつだ。何だか訳分からねえな。」
新入隊員1「はは、そうですね。」
「んーややこしい。」