始まりの、終わりの 小話4-8
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ここはフリーダムフォースの食堂
アリー「失礼します」
コター「ああ」
コターのいるテーブルに座るアリー
「あ、どうもアリーさん」
「こんにちは~」
「お疲れ様です」
アリー「お疲れ~」
コター「今回もあいつ、派手にやったらしいな」
アリー「えぇ」
「凄いですよ~自分を刺した相手を許しちゃうなんて」
「しかもそいつは改心したと、いや~さすが大将」
「もうそこら中で噂になってますよ~」
コター「んで、傷は?」
アリー「浅すぎてかすり傷みたいですよ。でも10ヶ所以上さされたので…出血はあまりありません。ただ、他人からみればそれなりの出血量です。しかしあんなの…戦場に比べたら…」
コター「そうか、良かった。スマンな、いつもあいつの面倒を見てもらって」
アリー「えぇ、大変ですが、そばで色々学べるので良いです。ほんとはコターさんたちが見てくれるはずなのに…」
コター「それはスマン。俺らはこの通り少々忙しい。その上、もう手が付けられんからな。あいつをコントロールするのは至難の業だ。」
アリー「そうですかね、あなたから教わった通り少し脅したら大人しくなりましたよ?」
コター「へー、どうやって」
アリー「えーっとですね、かくかくしかじか…」
説明するアリー
コター「…」
「「「…」」」
コター「…お前も容赦ないな…成長したな…」
「うわ…大将ちょっと可哀想…」
「んーさすがアリーさん」
「女性隊員にチヤホヤされるのは嘘ですが、覗きとかは言い逃れ出来ないからなぁ」
「マジでやってんの?あの噂本当かい」
「マジで」
コター「そうかそうか、あいつはまだ懲りてないのか。後で説教だな」
アリー「あ、やべ」
「どんまい大将」
「気の毒だ…」
コター「んで、あいつはすぐ治るのか?まあ聞いた限りじゃあ包帯でグルグルにしとけば平気か」
アリー「どうでしょうね、医官がレベル1で治療すると言ってたので」
コター「そうなのか、なんでだ?」
アリー「自分の体を顧みない事を度々やる罰だそうです」
コター「ハハ、なら文句はない。いいぞいいぞ」
「あの人普段から自分の体大事にしねえからなぁ」
「まだあの人が頻繁に出撃してた頃、それはそれは恐ろしかったらしいな。常に最前線にいて、ケガしなかった日は無かったって」
「だから出撃制限されたのか」
コター「んじゃ、治療が終わったらすぐ食堂に連れてこないとな。あいつはすぐ腹が減るからな。まあいつ治るか分からんが」
アリー「その点はご心配なく。何かあったら医官に連絡するよう言ってますから。あ、でも治療が終わったら連絡するようにとは言ってませんね、今連絡します」
コター「頼む」
「そういやコター教官」
コター「ん?」
「なぜ大将は出撃してはいけないのですか?今では週1回ではないですか。それも出撃時間を大幅に制限しています。噂では、大将の体がボロボロで出撃に耐えられないと聞きました。本当ですか?」
コター「…」
アリー「はい、お願いします、では。」ピッ
アリー「あれ、どうしたんですか?」
電話を終えたアリーは少し状況が飲み込めない
コター「なぁアリー」
アリー「はい」
コター「あいつが出撃を制限してる理由、言った方がいいか?」
アリー「…良いんですか?必ず全体の士気に影響します」
コター「良いだろう、いずれバレることだ」
アリー「…了解です。それに大将も出撃させろとうるさいですから、この際言いますか。それに…もう手遅れですから…」
コター「はぁ…決まりだな。お前ら、心して聞け」
「「「はい…」」」
ぐっと唾をのむ隊員たち
コター「あいつが自分の体で様々な人体実験をしてるのを知ってるな?」
「はい」
コター「あいつの主な実験は薬物実験だ。遺伝子改造をする事なく、持てる遺伝子を全て使って体を強化するものだ。体だけじゃない、精神も強化、場合によっては操る。素の力、つまりありのままの力を使って強くなる事、それが目的だ。あいつは自分で努力が出来ないとよく言ってるな?」
「はい」
コター「なら無理やり努力すればいい。あらゆる手段を使ってな。それで奴が目を付けたのが薬だ。精神を薬で無理やり動かし、体を動かす。それだけでなく、薬によって人類に秘められた力を引き出す。要約すると、覚醒と精神操作のための実験。これがやつの主な実験だ。この実験の考案者もその責任者も、被験者も全部あいつだ。そして、この実験において一番成功したのもあいつだ。」
「そうなんですか…」
「すげーなあの人…」
コター「だが、奴自身は薬に関する知識はあまりない。いつもの事だが、奴が希望するものを部下が用意し、それを実験する。そうして実験は繰り返されてきた。ここもそうだ。奴は組織運営についてあまり詳しくない。だから俺らがいるんだ。他人ばかり頼るからあいつは形だけの司令官と言われるんだ。珍しいだろ?責任者にも関わらず薬の知識はあまりない。だが奴は研究を主導した。主な理由は、奴がこの研究を一番推し進めてたからだ。昼夜問わない奴の実験は、周りの研究者を驚かせた。そうして出来た薬を自分で実験し、訓練に活かす。その結果がやつだ。その研究成果が奴だ。奴は今ではこの組織の最強とも言える身体能力だ。そうだろ?」
「えぇ…正直化け物です…」
「あれが同じ人間とはとても思えません…」
「…」
コター「だが奴は常に最強ではない。いつも通りあんな、のほほんとした状態では俺より弱い。お前ら、あいつが冷静に戦ってるところを見たことあるか?」
「いえ…」
「言われてみれば…」
「いつも発狂してる…」
コター「あいつは度重なる実験により、精神をある程度操れるようになった。そして戦場に出たときやつは著しく興奮する。通常、興奮すれば冷静さを失い能力が下がる。だが奴の場合、なぜかあらゆる能力が上がる。特に身体能力に関してはその傾向が著しい。それに加えて野生的勘も備わる。人類が進化の過程のおいて捨ててきたものを、再び取得する。ただし一時的な。こうする事により、やつの戦士としての能力は飛躍的に上がる。やつが出撃してた時は、その強さから敵にとても恐れられ、戦場の悪魔という異名までついた。シンプルなあだ名だが、やつと戦った奴らはみんなそう言う。率直に思ったことが、そのまま異名となった。」
「なるほど…」
コター「薬により奴の精神は強制的に動き、あのぐうたらを訓練させた。それも異常な程な。異常な訓練量は奴を強くした。そして遺伝子覚醒の薬を幾度となく投与された彼は、さらなる能力を得た。強靭な肉体はその覚醒した力を受け入れる事が出来た。本国においてやつの研究は成功した。その第一成功例にして、最高傑作が大将だ。未だにあいつ以上の適任者はいない。」
「すげー…」
コター「だが、良い事尽くめではなかった。あの実験や研究の成果は俺たちにもフィードバックされてる。だから俺もある程度強くなれた。だが俺では、奴のように実験結果の全てを取り込むことが出来なかった。俺でもな…」
「え…コター教官でさえ…」
「なんなんだあの人…やっぱ化け物だ…」
コター「いや、半分ほどは出来たんだ。だが…あいつには遠く及ばなかった。それぐらいあいつは…狂ってた。狂うことが前提の実験。常人では無理なものだ…」
「「「…」」」
コター「そして…大きな力を得ても…犠牲があった。何か分かるか?」
「えーっと…」
「人格?」
「体がボロボロになるとか…」
アリー「寿命さ。それと人格。大将はとっくに、寿命が尽きてるんだよ。」
「「「え…?」」」




