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戦いのつづき

冒険者ギルドがストライキに入って1ヶ月がたった。ポンソンビーが私に報告に来たとき、私は庭に出られるまで人に懐いてきたフランソワと、中庭で戯れていた。


「どうしたのポンソンビー。」


「それ以前に摂政殿下、フランソワに悪気がなくとも、大型モンスターの背中に乗るのは危険です。どうぞご注意ください。」


ポンソンビーは柄にもなく慌てているようだった。


「フランソワは頭が良くて優しいのよ、乗りこなせばきっと素敵な旅のお供になるわ。ね、フランソワ。」


フランソワに抱きついて毛並みを撫でる。もふもふした感じが癖になる。


「それで、用事があったのでしょう?」


「はい、軍によるモンスターの捕獲・駆除についての数字が入りました。害獣の駆除については冒険者ギルドが担っていたよりもはるかに低コストで対処ができています。また害獣でないモンスターの駆除は控えていますが、彼らが人を襲う事件も減ってきています。民衆の安心のため、ストライキ当初にあえて予備役を街に展開したのも所定の効果がありましたね。不安に訴えかけようとしたスト主導者たちの政治的な効果を減らすのに有効だったようです。」


「素晴らしいわ。」


カラフルで小規模なグループを組みたがる冒険者ギルドはもともとコストが嵩みがちだった。こういう害獣駆除は大規模な軍団を転々とさせて各個撃破していけばいいのよ。


「まだ先の話になりますが、これから繁殖期を迎えモンスターの個体数が増えると、人間と資源の奪い合いになりまた人里に降りてくる可能性がありますが。」


「むしろこのままでいいと思うわ。昔は数が増えてしまうモンスターを捕食するような猛者がいたけれど、強さと栄光を求める名うての冒険者が仕留めてしまうから、生態系が崩れているのよ。強いモンスターほど報酬が多い、というギルドの報酬体系が間違っているの。大体伝説のモンスターは人里離れたところにいて、滅多に人に危害を加えないのに。」


やっぱり生態系の頂点に立つものは残しておくべきよね。冒険者によって絶滅させられた希少種もいるし、個体数によっては禁猟を命じないといけないかもしれない。


「一方で冒険者ギルドではストが事実上失敗した責任を取って親方が辞任、若い過激派がリーダー格となって交渉が難しくなっています。」


「交渉は今のところしなくていいわ。彼らの立場は悪くなる一方だし、これは膨れ上がった年金と終わらない公的資金の投入を減らすチャンスよ。平和と安全に特別に功労があった冒険者だけに恩給を与えて、ギルド内の分裂を図りましょう。」


「承りました。」


冒険者は今では数が多すぎるのに、昔の特権意識が捨てられないから対処が大変だった。これは報奨金を通じて政府補助金で生きている彼らのメッキを剥がすいい機会になりそう。


「ところでランドルフは買収できたの?」


引退した冒険者の中でも、民衆に人気のある人たちが数人いて、彼らの動向は私も気になっていた。


「はい、綿のプランテーションと引き換えに反ストライキの声明をだしました。」


「よかったわ。ギルドと全く交渉ができなくなったら、交渉の用意のある冒険者を彼の下に集めて新しいギルドを作ってちょうだい。」


「御意。」


大御所には幕引きで登場願うのは一番だわ。その頃には私がフランソワと街を練り歩いて、冒険者ギルドが今までモンスターの危険性についてどれだけ虚偽の報告をしてきたのか暴いてあげないとね。


なんだか楽しくなってフランソワにほっぺたをすり寄せていると、門が乱暴に開けられて息を切らしたファーガソンが入ってきた。


「どうしたのファーガソン?そんな音を立てたらフランソワが驚いてしまうわ。」


「大変です摂政様、冒険者ギルドの過激派の一部が、軍の予備役が守っていたライエンブルフの古城を占拠しました。冒険者の雇用維持を求めて徹底抗戦の構えです。」


「なんですって?」


比較的穏健な親方が辞任したから、頭に血が上った人たちが馬鹿なことをしでかしたみたい。


モンスター相手に鍛えた冒険者は、一対一で戦えば徴兵された兵隊よりもよっぽど強いはず。


「どうしようフランソワ・・・」


フランソワの毛並みに顔を埋めながら、私は考えを巡らせた。


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