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1-5:謎の視線と学校説明その2

「まず、立会人から説明すると、本人同士の同意で戦いが締結されるって言ったけど、締結してすぐに戦いが行われるわけではなく、教師一人の立会い、又は立会い科の生徒三名以上の立会いのもと、行われるんだー。だから立会人がいない戦いは無効、周りに被害が出てたら罰則なんてのもあるんだよねー」

「罰則かー」

異世界だし、なんかドラゴンを狩ってこいだとかそんな罰則とかありそうだなー。

「っていっても大抵は学校の掃除とかだけどねー」

「なんだ、思ってたよりも軽い罰則なんだな」

「どんな罰則を想像してたのよーー。ただ、罰則を与える先生によっては掃除だけでは済まないこともあるからね……」

ジュリが怖い顔をしてこちらを見る。ゴクリ。このジュリの顔を見ていると冷や汗が止まらない。しばらく怖い顔をして、一呼吸置いたのち。

「まっ、とにかく罰則を受けないように気をつけてねー。」

と笑顔で忠告してくれた。

「わかった」

俺は小刻みに何度も首を縦に振り。それを見たジュリも一つ頷いた。

妙に迫力があったな。


そんな風に考えているとーー。

「で、最後に魔法についてだけどーー」

「おっ!」

異世界といえば剣と魔法ってのが相場が決まってる!

「魔法の基礎はみんな自分の家で子供の頃に習っちゃうんだよね。そこから自分たちなりに鍛錬して得意な魔法を伸ばしていく感じかなー」

「よし、帰ろう!」

俺は唐突に足を止めた。

「「なんで!?」」

唐突な回答と行動にジュリとメルクレストさんが驚き足を止める。

「いやいやいや! 最初っからハンデありありの状態で戦わないといけないとかどんなだよ! 俺はボーナスキャラか!」

「そっか、異世界の人だから魔法が……」

その事実にジュリも哀れむような視線をこちらに向けてくる。

まっ、それが普通の反応だよな。


「そこについては私たちの方で考えています。明日、正式に学園に通うことになってから一週間はソウタくんとの戦闘は禁止とします。また学校の授業に参加せず、私の元でしっかり魔法の勉強をしてもらいます。スパルタでいきますのでよろしく!」

「oh……」

メルクレストさんは笑っている。でもなんだろう……にこやかに笑っているのに目が笑っていない。あれは……マジな目だ。

「あー、メルちゃん先生のスパルタかー……」

ジュリは俺の肩に手を置き、右手の親指を立て。

「生きて帰って来なよ!」

つまり、俺は魔王候補戦に参戦する前に死ぬかもしれないってことだな。

「よし、やっぱり帰ろう!」

「あっ、ちなみに、あちらの世界へのゲートはすでに閉じてますので、当分は帰れないですよ」

俺はその場に両手をついた。

「さらば俺の短い人生!」

そんな俺の肩にメルクレストさんが手を置いてーー。

「大丈夫ですよ。私の授業は一部生徒からは根強い人気のあるんですよ!」

「どんな人たちですか?」

「なんでも、私の冷ややかな目で見られるのが好きだとか。私に嬲られるのが好きだとか」

「そっち系の方々はお帰りください!」

最後まで想像通りです。本当にありがとうございました。


「あっ、そうだーー」

俺の心が折れかけていたところにジュリが何かを思い出したようだ。

「魔法っていうと、最初に一つだけはソウタ固有の魔法を覚えられるよ」

「そうですね。刻印魔法は習得できますよ」

「刻印魔法?」

なんだろう名前からして普通の魔法と違うのだろう。

「先ほど、魔王の刻印があるとお伝えしましたよね」

メルクレストさんがそういうと、ジュリが手袋を外し左の掌を見せてくれた。そこには黒い幾何学的な文様が描かれていた。

「この刻印からソウタくんしか使えない魔法を組み上げ習得してもらいます。刻印魔法の習得については入学の儀の時に行われるので、そこで魔法を一つは習得できますね」

うん、なるほど。それは嬉しい。でもーーなんでだろう。すっごく不安だ。そう思いながら俺はお尻の刻印があるあたりをさする。


「なにはともあれ、入学は決定事項なんだから諦めてください!」

そういってメルクレストさんはその場に両手をついている俺の腰に腕を回し、そのまま持ち上げる。軽々といった様子持ち上げられた俺の体は足から地面に着地することになった。


「さっ、学園はすぐそこですから、急ぎましょう」

そのままメルクレストさんに手を引かれ、俺は渋々引きづられるように学園へと向かうことになった。


そこから二分ほど早歩きで歩くと、扉の前から見えた西洋のお城のような建物が目の前に現れた。

「ここが学園です」


「あっ、メルちゃん先生。私はここで寮に戻るねー」

「わかりました」

「それじゃあね。ソウタ!」

「おう! また学園で!」

と手を振ると。

「そうだ、最後に一つ」

「ん?」

「学園では私に近づかない方がいいよ。不幸になるから」


ジュリの表情は無表情。ただただ他人に恐怖を与えようとする表情である。ただ不思議と先ほどの怖い表情のように恐怖を感じなかった。それよりも何か物寂しさようなものを感じた。

「じゃあね!」

そう言ってジュリは背中に翼を生やし、学園に向かって飛び立った。


その後ろ姿を見ながら俺はーー。

「見事なまでに使い古されたセリフを吐いて飛び去っていきやがったな」

ポツリと呟きそれと同時に、この後もきっとジュリとは何かしらの形で関わっていくことになるんだろうな。

漫画やゲーム、ラノベだったら確実に起こるであろう展開を想像し、小さくなっていくジュリの後ろ姿をじっと見つめていた。


「それじゃあ私たちも行きますか」

「はい。ところで、メルクレストさん。さっきのジュリの言葉の意味って」

今の俺ではわからないことでもメルクレストさんならわかるかもしれないと思い、確認してみるとーー。

「はぁ、ここだけの話にしてくださいね」

あっさり話してくれた。

「ジュリさんはああ見えて学園内で上位5名に入るほど実力者なんですが、ありもしない噂のせいで彼女の陣営のメンバーはゼロ。勝利しても必ず陣営に入るのを断られているんです」

「その噂っていうのは?」

「陣営に属するメンバーの命を喰らうという噂ですよーーっとこの話はここまでです。早くマオウさんのところに行かないと……私が怒られる……」

「それともう一つ。さっきメルクレストさんが連れていたケルちゃんは?」

「ケルちゃんならこっちについてすぐお家に返しましたよ。なんでそんなことを?」

「いえ、気がついたらいなかったので気になっただけです」

実際どこにいったのか気になっただけだったので、これで疑問も解消した。

「そうですか」

そう言ってメルクレストさんは学園へと歩みを進め、俺もそのあとについていった。


しかし、ありもしない噂のせいで陣営ゼロって。力があるがゆえなのか、単純にジュリの運がないのか。おそらくどっちもなんだろうけど。

そこまで考えたところで、白い布が頭をよぎった。

「なるほど、だからふんどしか」

だれでもいいから陣営に入ってくれる人と巡り会えるようにってことなんだな。


ドンッーー。


考え事をしながら歩いていたせいで、止まったメルクレストさんにぶつかった。

「すいません」

「大丈夫ですよ。私も急に止まってしまったので」

どうやらマオウさんの部屋についてわけではないようだ。

「どうしたんです?」

「いえ、ちょっと視線を感じたもので」

「視線ですか?」


異世界の住人だからこそわかるのか、俺は全く感じることができなかった。

「しかしおかしいですね、今日は……」

メルクレストさんがブツブツと小声で呟いているが、俺には何を言っているのか聞き取れなかった。

しばらくしてーー。

「まぁ、この視線の感じでしたら問題ないでしょう。私のスパルタ学習を受けたがっている人達の誰かだと思いますよ」

なるほど、つまり変態達の視線を感知したということあ。それは大いに問題なのでは?

先生に連れられている俺、それを見た変態達、どうして俺だけが先生に連れられるのか。嫉妬に狂った生徒達がルール無視で襲いかかってくる。そんな可能性もあるのでは? ここはさりげなく否定しておこう。


「メルクレストさん、俺って今からメルクレストさんのスパルタ授業を受けるわけじゃないですよね」

「当然です。それ以上に『大切な』授業を受けて貰う必要がありますので」

さりげなく否定しようとしたら変な方向に飛び火した。っていうかこれから授業受けるんだ。

「あら、視線の雰囲気が変わりましたね。これはーー」

「メルクレストさん、それ以上は言わないでください」

メルクレスさんが言葉を続けようとしたところに言葉を被せ、先の内容を遮った。

これ以上話を聴くとフォローでさらに墓穴を掘りそうだ。だったら何も言わずにマオウさんの元へ向かった方が絶対に安全だ。


「殺気?」

「少しは俺の身を案じてくださいよおおおお!」

「いや、嫉妬ですね」

もうどっちだっていい。メルクレストさんの授業を受け隊の視線であればどっちも同じ意味だろう。

俺が顔を両手で隠していると、メルクレストさんが心配そうに声をかけてきてくれた。

「ソウタくん、大丈夫ですか?」

「大丈夫です。そして、今すぐここを離れましょう」

そう言って俺は両手で顔を隠したまま歩き出した。

「ちょっ、危ないですよソウタくん」

「いえ、大丈夫です! 指の隙間から廊下は見えていますので!」

「あっ、ではなく、その先はーー」


ゴンッーー。


俺は硬い何かに正面からぶつかった。

「壁です」

少し遅れてメルクレストさんの忠告を受けたが、すでにぶつかった後では意味がない。

「大丈夫ですか?」

すぐにメルクレストさんが駆け寄ってきてくれたが、今その行動を取られると俺はさらに厳しい状況に立たされるだろう。

「問題ないです。早くマオウさんのところに行きましょう!」

俺はメルクレストさんが駆け寄る前に立ち上がる。


「はぁ、問題ないのならいいんですがーー」

「はい! 何も問題ないーー」


ズキンーー。


一瞬お尻に痛みを感じ、周りを見渡したがーーメルクレストさん以外は誰もいない。


「やはり何か問題でも?」

「いえ、大丈夫です。それより視線はーー」

「それでしたら、ソウタくんが壁にぶつかったあたりから消えてますよ」

「そうですか」

もしかすると授業を受け隊の中に有角種がいたのかもしれない。そいつが近くまで来ていたのかもしれない。

ただ、今はすでにお尻の痛みも視線もない。ということは、何事もないと判断されて何処かへ撤退したんだろう。


「それなかよかったです! それじゃあマオウさんの部屋に向かいましょう!」

「そうよね……これ以上遅れると本当にやばいし……」

焦りからか視線がないからかメルクレストさんはいつもとは違う口調でポソリと呟いた。


その後は何事もなく、俺とメルクレストさんはマオウさんの部屋の前にたどり着いたのであった。

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