幽霊退治
俺は最近、不味いことに気付いちまった。
どうやら俺の部屋には、望まれぬ同居人がいるらしい。
そういえば、1ヵ月前からおかしな事はあったような気がする。
閉めたはずの鍵があいていたり、歯ブラシが女ものに代わっていたり……。
しかしあれだ、決定的なのは。
散歩から帰って来ると、部屋のものが全部入れ代わっていた、という事件。
仕方なくこうして生活してるけど、いい加減やばいってのは、わかっている。
特に押し入れ、押し入れやばい。
何か妖気が出ちゃってるし、開こうとしてもビクともしない。
そろそろ引っ越したいけど、そんな金は無い。
「っつう事で、塩買ってきた」
俺は押し入れの住人に聞こえるように、そう言った。
しかし、押し入れからは物音一つしない。
手に汗握るとは、まさにこの事だ。
俺はにじりにじりと、押し入れの引き戸に手をかける……。
「おらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ぎぃゃあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあっ」
キャー!
押し入れの中に居たのは、恐ろしいぐらいにボサボサの長い髪の女。凄まじい叫び声をあげたのは、そいつだ。
心臓が止まる程恐怖したが、直ぐ様バシンと押し入れを閉めた。
ゃ、やばいやばいやばい……アレはやばいって、まじやばいって……。
緑っぽいパジャマの髪の長い女……。
俺は突っ掛けを履いて部屋を出た。カンカンカンと階段をおりて、陽当たりの良い、ボロアパートの101号室を目指す。
「管理人さん、管理人さん! あの部屋出る、助けて!」
ドンドンドンドン木製のドアを叩くと、ガチャガチャ鍵をあける音がして、管理人のおじさんが恐怖にひきつった顔を出す。
「あ、あんた。3ヶ月前に死んだ、引きこもりの……」
やっべっ俺、餓死したんだった。