表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/57

アマミコと吊用之――因縁の対決

 沖縄の空高く――。

 雲の上で死闘を繰り広げていたアマミコと吊用之は、相打ちのかたちで落下していた。

 お互いの雷撃は、相手に甚大(じんだい)なダメージを与えた。

 アマミコは、とっさに膝を抱え、大打掛「飛衣(トビギン)」にくるまった。

 眼下に突如(とつじょ)現れた「光の波紋」の中へ吸い込まれていく。空間の(ゆが)みを感じた。

 その伸縮に合わせて、身体も伸びたり縮んだりする。薄れゆく意識の中で、両手を左右に伸ばした。ゆったりとした幅広(はばひろ)(そで)がはためき、翼の形に拡がっていった。


 一方、吊の身体は一瞬のうちに黒焦げとなり、宙に散った。だが、線香花火の玉のようなものが残って落ち続け、やがて海中に没した。

 吊用之は、「()(かい)(せん)」(下級の仙人)であった。死を迎えたが息を吹き返し、棺桶(かんおけ)から抜け出した。しかし、生き返ったわけではない。死後、ただちに肉体を離れるはずの「(こん)」と「(はく)」を、呪力で仮に留めているだけであった。よって、実年齢に見合わない容姿を保つことができ、妖物との融合も可能だった。

 アマミコ(マツカネ)との闘いで、「魄」は消滅した。だが、「魂」は残った。ただ人としての記憶は、衝撃でほとんど失われた。「魂」が落下した地点は、()(ぐう)なのか乗っていた船が、沈んだ辺りであった。


 トカムと「呉」の艦船も、交戦状態へ入った。

「左列の先行二隻を挟撃(きょうげき)する」

 李船長が、指示を下した。

「えっ?」

 今度こそは、真っすぐ突進するものと思っていた。しかし、命令である。ただちに舵を切った。両側から寄せて、敵船の腹に着ける。渡し板を掛けて、ダダッと甲板へ乗り込む。

黒鎧(くろよろい)の奴は、三人掛かりでやれ」

 小隊長が、率いてきた兵たちに命じた。職業軍人である黒雲都を短槍で囲み、突き立てる。

 

 他の船は煙幕に視界を(さえぎ)られた上に、乗り込んできたアヅミと戦っている。よって、二隻の僚船が襲われていることにすら気付かなかった。

「カン、カン、カン――」

 (かね)の音が、海上に響いた。すると、一斉にアヅミの攻撃が()んだ。

 しばらくして煙が収まったときには、敵の姿は甲板から消えていた。

 海に目を遣ると、またイルカたちに乗って島の方へ向かっている。味方の損害は、ほとんどなかった。お互いに顔を見合わせて首を(かし)げたり、声を掛け合ったりしていた。

「オイ、あれを見ろ!」

 兵士の一人が、叫んだ。二隻の僚船が燃えている。敵の船は、その場を離れ、逃走中だった。

「やられた――」

 徐温は、手にした槍の()(じり)を床にドンと突いた。(くち)()しさで身体が震えた。

 正面から突っ込んでくるものと思い込んでいた自分を呪った。一国の将軍となり(あが)め立てられているうちに、野盗時代の融通(ゆうずう)()()な戦い方を忘れ、旧来の戦略や戦術論に(とら)われてしまっていた。

(またしも(たばか)られたわ――)

 李の目的は、最初から二隻を食いちぎることにあった。アヅミの襲撃は他の船を混乱させ、救助に向かわせないためだけの「目くらまし」だったのだ。

 

 トカム船団は、歓喜に沸いていた。最初は「決死の特攻」だと思って覚悟していただけに、その安堵(あんど)感は、一入(ひとしお)だった。

 イルカに乗ったアヅミたちも、笑顔で手を振っている。だが、その「出し抜いてやった」という高揚(こうよう)感も、長く続かなかった。

「あれは、何だ!」

 先頭を駆けていたアヅミが、叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ