自分じゃ駄目なら、人に任せるべき
まぁ、俺は戦争を防ぐのに頭を使わないけど、問題を無視するわけではない。
餅は餅屋、戦争の事は政治家に任せればいいというだけだ。
という訳で、首相、あとはお願いします!
手は貸すので、俺達の代わりに悩んでください!!
「四方堂、ホントにこんな事でどうにかなるっていうの?」
「さぁ? でも、俺達だけじゃ『バタフライ・エフェクト』を期待できないのは事実だし。だったら初期値を徹底的に大きくして、最後の結論をぶち壊す。
ほら、何も間違ってない」
カオス理論、バタフライ効果。未来予測における初期値の重要性は語るまでも無い。
正味の話、戦争を防ぐのに冬杜では駄目、俺でも駄目、クラスメイトでも駄目。だったら他の、責任ある立場の方々に頑張ってもらうのが正道だと思う。
そのために政治家をやっているんだから、ここで頑張らないなら給料泥棒だと思う訳ですよ。
それに、国策に直接関わらない俺達がグダグダ行ってもしょうがないっていうのが未来を変えられない理由じゃないかね?
「やぁ!君が四方堂か。君とは一度、直接話してみたいと思っていたんだ」
「はじめまして、アメリカ国防長官殿」
「ははは! ルイスと呼んでくれて構わないさ!
それより、異世界の話を聞かせてくれないか? あとは魔法を見せて欲しい! 国にいる妻に自慢話の一つでもしたいからね!」
結果として首相がとある事件を理由にアメリカ大使館にいた国防長官を引っ張り出したのは予想外だったけど。
一国でどうにもならないなら友好国を味方につけるのは確かに基本戦術なんだけど。
国家間の協力に、異世界利権をチラつかせるとは思っていたけど。
単純に、各種利権を無視して個人的理由だけで会う事になるとは思っていなかった。
ルイス氏は50代後半の白人男性だ。
ただの海兵から出世して国防長官にまで上り詰めた叩き上げの軍人とでもいうべき人だが、TVカメラを前にした時の厳しい顔を想像できないほどニコニコ笑っている。仕事中とオフとは違う顔という事か?
プライベートの彼はカリスマある魅力的な男性なのだが、まったく問題がないわけじゃない。なんというか、ボディタッチが多く、肩を抱かれたり、顔を近付けられたりと、距離が近い。ホモい意味ではなく、別の意味で俺を狙っているために。
「アメリカはいい国だ。もしも遊びに来るなら、最高の旅を約束するぞ」
「姪の一人がいい歳なのにまだ結婚していなくて困っているんだ。そういえば、孝一に決まった相手はいるのかい? いない? なら、孝一が貰ってくれないか? 君のような男なら大歓迎だ!」
「それだけの力を振るうには、相応しいステージというものが存在する。孝一は将来、どんな仕事をするつもりでいるんだい?」
露骨に取り込みを持ちかけてくる。普通なら辟易としてしまうのだろうが、こちらに嫌な気分を抱かせないのはどんなマジックなのだろう?
露骨ではあるが本気ではなくジョークと感じられる喋り方をして、こちらに負担を掛けない。こういった、年下をいい気分にさせる手管は流石と言っておく。
俺はこれ以降自分から関わらないし、考える事だって完全に任せている。戦争を防ぐ、テロをさせない手段については一切話題にされなかった。
ただ、彼との会話で一度もその手の話題が出ない事だけは気になった。
きっと俺は、この問題において無力なのだろうな。
これは一つの余談である。
冬杜には記憶改ざんのペナルティという事で、ご両親から恥ずかしいエピソードの数々を、クラスメイト一堂に披露して頂くという、ほんの軽い罰を与える事になった。物理的ダメージが通らないようだし、精神的ダメージで勘弁してやろうという俺たちなりの心配りだ。
冬杜がマジで泣いて止めようとしていたけど、そこはもう、物理的魔法的に全力でさせませんでしたとも。
心情的に許せるかどうか、感情論で信用できるかどうかについては個別判断に任せ、公的に罰を課したという事で冬杜の件はこれでいったん区切り。
このあと冬杜は『未来予知』で国の為に身を粉にして働くのが決まっている。
戦争回避のため、その道のプロと頑張ってくれ。
きっと、1人で考えるよりはいい結果になるだろう。
とまぁ。
これで話が終われば良かったんだ。
戦争に関する話は政治家(+冬杜)任せ、手は貸すけどそれ以上は関わらない。テロと戦うアメリカさんも巻き込んだし、きっと何とかなるだろう。
異世界産業が今後どうなるかは横に置き、日本から人と技術を流し込んで異世界の日本化を推進する。
『転移門』を設置した周辺都市から奴隷を購入し、ノース村の人口増加を加速させる。
ある程度体裁が整ったらノース村を独立国として国連加盟を目指す。宇宙産業はそのついでに提案する方向で計画を立てている。予定では2年後には実現できるんじゃないかと考えていた。
ただ、放置していた最後の問題が、気休め程度の対策で抑えきれなくなった。
異世界がゲームシステムに侵蝕されているという問題。
誰が言い出したのか。
俺たちはこの問題をこう呼ぶようになった。
――『クロスオーバー・ゲームズ』――
一つの世界が今、ゲームとの交差する。




