表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
93/122

 これは予測できる話だ。

 以前、冬杜は俺や夏奈達を日本に送り帰した。

 だったら冬杜自身が日本に来れないという話など無い。


 ま、アレの性格からすれば俺の所に来るだろうけど、すぐには来ないだろうな。何らかの仕込みをしてから来るだろ。

 冬杜が日本に来たことを上に伝え、俺自身は動かず待たせてもらおう。





 冬杜失踪から3日。

 冬杜が発見されなかったが、冬杜が何を考えているのかだけは分かった。


「≪ディスペル≫」


 俺は協力者である与党幹部たちに魔法解除を行っていた。



 冬杜は、まず俺の協力者をどうにかしようとしているらしい。

 現在、日本の政治家たちは俺の協力者である。相手にしてみれば使い勝手の良い駒と対等ではない関係だが、それでも俺にとっても利用価値のある相手なのだが。

 昨日は連絡が取れず、念の為に会いに行ってみれば、冬杜の毒牙にかかっていたわけだ。記憶改竄ではなく魔法による行動不能状態。俺は東京都内を走り回る事になった。


 実効期間は1日2日の妨害だったが、周辺への根回しする為の会合が連絡なしでキャンセルされ、いくつかのスケジュールは数ヶ月の遅延を招くほどの被害が出た。

 地味に、ではない。かなり痛い。

 会合に集めた人間は暇な者たちではなく、それなりの立場にある者たちだ。その予定をすっぽかしたのだから、味方を増やすどころか何人かが損害賠償ものの敵対関係になり、俺のこれからに大きく不安を与える結果になった。



 これにより、俺に味方する、味方しようとしていると、冬杜に襲われかねないというリスクが増えた。

 俺が出張ればなんとかなるだろうが、俺は1人しかいないわけで。味方の政治家全員をフォローするなど不可能である。


 すぐにでも対処しないと離反者が続出するので、俺は切り札の一つ「座敷犬Lv99」「猫Lv99」を護衛目的で貸し出す羽目になった。

 『ブレタク』に知力なんてステータスは無い。Lvが高かろうが頭の中身はそのまま。魔法関係の能力も無いので魔法で一網打尽になる可能性は否定しきれない。ただし物理戦闘にはそれなり以上の戦果が期待でき、連れ歩くのも不自然ではないというメリットがある。

 実際は何の役にも立たなかろうが、護衛がいるだけで安心するという心理的効果を狙ってみた。

 ついでに、俺から送りつけられた監視要員ではないかという疑念を植え付ける為でもあるが。こちらは後ろ暗い所がある奴にだけ効果を発揮する予定。たぶん。





 暫定の対処を指示し、俺も打って出る事にした。

 時間が経てばこちらの体制が整い、俺の作戦は盤石になっていく。そんな甘い考えで受け身になったのは間違いなく失敗だった。

 冬杜がそこまでするはずがないという無駄な妄想により、大きな被害が出た。自衛隊員に剣を向けていたし、冬杜にとって守るべきは異世界の人々であり、日本の誰かではなさそうだと改めて認識を確認した。


 今のところ死者は出ていないが、いざとなれば大量殺戮すらするかもしれない。そんな相手だと考えねば、足元をすくわれかねない。


 こちらも思惑があり、日本では能力に制限がかかる。全力で暴れると被害が甚大になり、批判と損害賠償が凄い事になるのだ。某光の巨人の様に「正義の味方だからしょうがない」なんて言ってもらえない。出した被害は全部俺に跳ね返ってくるだろう。

 できれば話し合いで決着をつけたいけど、さすがにそれは虫がよすぎるだろう。



 異世界行きの『門』をこちらで開き、もう一度みんなと合流する。

 ついでに数人を連れていき、異世界を見てもらう。

 最後に一度みんなを日本に帰し、家族に会わせる。


 そんな計画を打ち立て、大々的に報じるようにお願いした。

 場所はいつもの教室ではなく、見晴らしのいい校庭で。


 これで異世界行きの話は現実のものとなり、多くの人を巻き込んで加速する。

 冬杜の描く未来とは大きく乖離するはずで、見逃すことはしないだろう。



 冬杜への餌というなら、これ以上は難しい。

 そして、これが罠だと冬杜は理解しているはずだ。


 冬杜はどう出るか、どう動くか。そして、どこまでやるか。



 決戦の日まで、あと5日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ