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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
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宣戦布告

「と、いう訳で。現段階で日本人以外が異世界に行くのは不可能です。

 改良すれば可能になるかもしれませんが、そのための研究をこちらでする理由もありませんし、研究に必要であろう物資ならびに人材を貸し出すことはありません」


「あちらにいる日本人を回収するための『門』設置はしますけど、それに関わりの無い 『門』の設置は行いません。

 ――そうではなく、異世界側の事情を考慮してですよ。いきなり日本から人が押し寄せれば混乱することは目に見えているでしょう? 

 現地の視察や早期の救助は確かに急務かも知れませんが、それは国交を結んでからでも遅くないと考えています。

 異世界人を見捨てるのか、ですか? それを言うなら、まず地球上で同じ事をしてからにしてくださいね。

 コストパフォーマンス? 命の問題を、お金に置き換えないでいただきたいのですが。ああ、緊急時に、救う命に優先順位を付けるのは当たり前ですけどね。すでにこちらで手を打っていますし、それ以上となれば異世界の命の方が時間とお金がかかりますけど? ちゃんと資料に目を通してください。

 あ、日本政府の方で異世界に関する各種法律の施行を待っているというのも、理由の一つですね。法を守るのは国民の義務ですから」


「他国を排除する理由の大きなものの一つに、政治的に使われたくないというものがあります。

 少なくとも、複数の国家が足並みを揃えられるなんて寝言(・・)を言う気はありませんよ。妄言、狂言、戯言。理想論を通り過ぎて現実を見ない愚者以外の誰が言うんです?

 言いすぎ? そうですね。では核兵器根絶が成ったら、その時は誠実に対応しましょう。

 ははは。たかがその程度(・・・・)の条件のどこが不満です? 核兵器廃絶は世界中の願いでしょう。それに向けて核兵器保有国が足並みを(・・・・)揃えるだけ(・・・・・)じゃないですか。ほんの数国が頑張ればいい内容ですよ?」


「NGOだけでも、ですか。それもお断りします。

 そうではなく、命の危険がありますので。なにかあった場合、私に責任が来るんですよ。貴方方が何を言おうと、私が責められるんです。

 ですから、お断りします。NGOが信用できないのではなく、私は世間を信用していませんから」


「私の判断で決まる理由ですか? 私が『門』を管理しているからですね。

 国際的な組織で管理するべき? 日本の独占は許されない?

 こちらから情報を開示する気はありませんが、独占はしていませんよ。むしろ、出来るという実例は示しました。独占を許さないと言うなら、あとはそちらが結果を出してください。

 私が管理しているのは、私が設置する『門』のみです。他にやりようがあるかもしれませんし、それに私から口を挟む気はありませんよ。

 国が法を制定した後でしたらそれを基準にするつもりですが、国が無体を言うようであれば「私は協力しない」と言うだけです。とは言え、国との折衝は上手くいっていますし。そんな事にはならないと思っていますけどね」


「情報の開示ですか? 知っている情報の大半は国に渡してありますので。あとは国の判断にお任せしています。

 ゲームの魔法を使える理由についてですか。私に分かるはずがないでしょう。それが分かればノーベル賞ものですよね。

 あっちでは日々の生活のために働いていたんですよ。そんな研究は出来ませんし、出来たとしてもしていません。それよりも優先順位の高いことはたくさんありますから」





 マスコミの相手は、とても面倒くさい。

 欲しい情報を言わないとすぐに野次を飛ばす。権利を主張するだけで、相手へのリターンや配慮など一切考えない。

 発言をするのも面倒だったので、30分ごとに休憩を挟ませ、そのたびにゴミ排除をお願いした。公の場で暴言を吐く程度の低い馬鹿を送り付けた報道元は、会社単位で弾く。後で晒すし、一発アウトですとも。ちゃんと事前通達はしたんだがな。それでもやる馬鹿が悪い。


 これで1000人近い報道陣が半分まで削れたのは僥倖だ。

 と言うか、それで半分も削れる報道陣の特権意識の方が凄いと思ったけど。暴言NGを通達したのにこちらに向かって「馬鹿野郎」とか言っても大丈夫なんて、考えて行動していないというか、そもそも普段から暴言を使っているのが原因なんだろうな。

 報道関係者の知性とモラルを問いたい。



 今回の情報露出はいくつか狙いがある。


 まず、単純に宣戦布告をしたという事。

 異世界という「利権」は、どの国にとってものどから手が出るほど欲しい宝の山に見えるだろう。権利を主張する、分け前を狙う、方法は様々だが間違いなく俺の周りが騒がしくなる。非合法な活動だって行われるだろう。

 両親には悪いと思ったが、二人には仕事を辞めてもらった。その代わりに退職金として国から合計2億円の援助が決定しているし、俺の方から護衛を派遣した。いざという時は異世界に逃げ込むつもりでもある。俺がどう動くにせよきな臭くなるのが確定している今、それが最低ラインだ。

 そこで「どうせ今まで通りの生活ができないならば」と開き直ってみたというのもあるが、利権に絡みたい人間、それらのうち違法行為をしそうな他国を挑発し、手を出させて叩き潰すのが目的だ。

 日本に対する圧力は必ずあるだろうけど、俺を矢面に出し最終的に責任逃れを出来るようにして、俺を損切りできるようにしている。後は裏で繋がっておけばいいだけだからな。表だって敵対しても、実は何も変わらない。


 各国の報道機関が注目している事もあり、俺の発言や行動が過激に見えただろうことが作用し、大いに紙面で叩いてくれるだろう。そしてそれを理由に俺は異世界への『門』を一般化しない方向で考え直したとして、更に世間を煽る。

 もちろん日本政府とはその方向で話し合い、調整が済んでおり、水面下ではしっかりと有効活用してもらい、「日本政府が粘り強く、誠実に交渉したから異世界に行く事が出来た」と評価が高くなるように誘導する。


 それとだ。

 こうやって「国際社会に対し強気の発言をする」というのは全体で見ればアンチを増やすだけの行動だが、その一方で信者に近い、英雄視してくれる者が出てくる。

 「日本に国益を」と宣言したことで、国内の少数が味方に付いてくれると思われる。過激な発言もしたので馬鹿な事をしていると批判する人間が8割、味方とその他がそれぞれ1割と言うのが政府関係者の意見だが。

 味方が3割を超えているようなら、その時は別の方向へ舵を切る予定だが、その可能性は低いだろうね。


 『バベル』を使い、あらゆる言語に対応してみせたのも狙いの一つ。

 複数の国から人が集まったので、『バベル』をセットしておいたのだ。質問は視聴者を考えて日本語でするようにお願いしたけど、内緒話は当然のように母国語を使う奴が多かった。

 その内緒話にも耳を傾け、追加で排除することもやってみせた。相手の国の言葉で突っ込みを入れたので、こちらの言語対応能力は分かってもらえただろう。

 このカードを切る事で「異世界に行っても言葉が通じるかどうかわからない」という説明に信憑性を持たせた。あらゆる言語に対応できるスキルを手に入れたという実証のつもりだ。

 その能力が手に入るかどうか、せいぜい考えてもらおうか。

 無理だという答えに、1千万○ンバブエドルを賭けてもいい。持ってないけど。



 他にも仕込みはあるようだけど、それは政府側が考えたカン(カンニング)(ペーパー)に従ってただけだし、全てを俺が知っているわけでもない。





 半日続いた記者会見を終えると、俺は椅子に崩れ落ちた。

 体力的にはまだ大丈夫だけど、精神的な消耗が激しい。



「お疲れ様でした」


 某与党政治家の秘書さんが、俺に労いの言葉をくれた。

 タオルとお茶を持ってきてくれて、こちらの様子を窺っている。


「会見は、どうでしたか? 上手くいきそうでしたか?」

「ええ。あれだけできれば十分ですよ。あとは我々の仕事です」


 50歳ぐらいの男性だが、表情と言葉は柔らかく、半分も生きていない俺に対しても丁寧に接してくれる。

 利用価値とかを考えてのことかもしれないが、先ほどまで相手にしていた連中とは比べ物にならないほど、俺の好感度は高い。

 さっきの連中が酷過ぎたので、比較するだけ無駄とも言うが。



 こうして俺の宣戦布告が終わった。

 誰が味方で、誰が敵か。

 その仕分けが、これから始まる。


 どんな戦いだろうと、こうやって味方がいる間はまだ大丈夫。

 俺たちを結ぶ利害の一致と言う分かりやすい絆はかなり強固で、この関係は長く続くのだった。

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