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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
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懐かしい世界(裏)

「君はまだ異世界とつながっていた? 情報のやり取りをしている? いや、今の言い方だと、四方堂君には 向こう(異世界)に行く手段が、有るというのか……?」

「はい。そうですよ」


 明宮隊長の問いに答えておく。


 保険っていうのは大事だ。

 こっちで使えるかはまだ試していないけど、向こうにいるうちに日本から(・・)異世界側に渡る魔法陣も作っておいたのだ。他にもあちこちを行き来するためのテレポーターの開発もしていた。……そっちは目処もついていないが。

 異世界生きの魔法陣はまだ試していないとはいっても、「出来る」という確信がある。


 『門』の魔法陣のデータと魔力の杯をストレージ側に置いているというのも大きい。あっちにいる誰かが『門』を開き、行けるようになるというパターンもあるし。

 俺はもう一度異世界に行けることを確信している。



「そうだ、それなら冬杜君がどうなったのか、何か言ってなかったかい?」

「交渉中で、今は手が離せないみたいですね? 早く日本に戻りたいって気持ちもあるみたいですけど、今こっちに戻ったら冬杜が暴走しそうだとか。影響がどうなるか分からない以上、慎重を期してまだ戻らないらしいです。

 それと、俺には「まだ戻ってくるな」と言ってましたね。だから行きたくても、今は行けません」


 冬杜が自衛隊を襲った件については「心身喪失で無罪」が確定している。殺し殺されが身近にある異世界に行ってしまえば、日本人としてあるべき精神性を維持するのが難しいという判断だ。

 これで怪我人が出ていれば「心神耗弱」で執行猶予つきの判断にもなるだろうが、未遂であった事からそのような判断がなされた。

 逆に俺たちの記憶を改ざんしていた件については、能力の維持が(・・・・・・)前提(・・)ではあるが、有罪が確定している。さすがに、そんなことができる奴を野放しにしたくないという判断らしい。拘束するための正当な理由が欲しいんだろうな。


 そんなわけで、日本に戻る、行き来できるようにする前に冬杜をどうにかしたいと、みんな頑張っている。

 ただ、古藤や三加村はご立腹のようだが、それ以上に三浦さんと春香が般若の如くお怒りで、冬杜は現世で地獄に堕ちてしまった。


 特に春香は夏奈の代理を務めてしまったわけで。それも性的に。

 俺からは「冬杜頑張れ。超頑張れ」か「イキロ」としか言えない事態になっている。

 ……言わないけど。言ったら俺にまで飛び火するから。



 それでも信念を曲げないあたり、そうとうな頑固者だ、あれは。





「――とまあ、本当にそれでよろしいのですね?」

「私としては、それで必要な要望を受け入れてもらえるなら、何ら問題ありません」


 所変わって校舎内のとある一室。

 俺は政府関係者と談合に勤しんでいた。



 やっているのは、「異世界開発の権利について」の、利害の調整。広大な異世界の大地を日本が独占するために、必要な手順を踏んでいるわけだ。


 冬杜は日本というか地球の大国が異世界に行くことを拒んでいるが、俺はむしろ大義名分を掲げて進出を手助けする側になる。

 表の理由としては、生産性の低い異世界の一般人が不幸だからだ。


 平民が食べる物に困らない生活を、出来るだけ広げたいと俺は考えている。全般的に技術力の低さをどうにかするべきだと思うのだ。

 得た利益を一部の王侯貴族が独占するかもしれないが、何もしないよりはいい。

 「やらない善よりやる偽善」ではない。やりたいと思ったからやるのだ。それも、出来るだけ俺のやりたいように。不幸になる奴も出てくるけど、それ以上に幸せを振りまけばいい。


 根底にあるのは、大きな力を得た人間として大きな事をやりたいという欲求。

 チマチマと根回しをしているが、派手に、でかい事をしたいという我儘。


 力を隠して小さくまとまる、賢く振る舞う。

 せっかく大きい力を得たのに、それじゃあ勿体無い。

 どうせだから、世界(・・)を相手に戦ってみたい。



 異世界に行く前の俺には絶対出来なかった、傍若無人な、馬鹿な喧嘩。思わず笑みがこぼれる。

 先を考えるだけで、なんだか楽しくなってきた。


 さぁ世界よ、俺の遊びに付き合ってもらうぞ。

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