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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
89/122

懐かしい世界(現)

 客観的に考えれば、俺の能力は人間じゃなくなっていた。


 100m走……0.5秒。

 重量挙げ……2t以上は、用意できなかったらしい。

 フルマラソン(42.195㎞)……15分3秒。

 その他能力……測定不能。


 0距離で撃たれた弾丸を素手で摘んだり、そもそも刀で斬られても傷一つ吐かなかったりと、俺の人外具合は「明らかに別の生き物」というレベルと認識された。

 検証に付き合っていた研究者の俺を見る目は、終わるころには人間以外の何かを見る目だったと思う。


 もっとも、水中で息を止める肺活量の測定だけは人並み。1分しか持たなかった。



 この日は身体能力を測定しようとするだけで終わった。






 今日はネタかと言いたくなった。


 用意されたのは鋼鉄製の檻。最初は腕力任せに突破することを期待されたけど、さすがにそれは無理だった。人の限界がという話ではなく、単純にそれが俺の「上限」だった。

 とは言え、脱出しろというだけなら簡単なお遊びでしかない。俺は『ショートジャンプ』で何の気負いも無く脱出してみせた。


 研究者が頭を抱えていたけど、これ、クラスメイト全員が出来るんだが?

 手錠に足枷をつけ、鎖でぐるぐる巻きにされ。それでも脱出できが、俺は引田○功じゃないと言いたい。



 他にも『ポケット』から騎士の装備と食材の入った木箱や金貨・銀貨の木箱を数スタック分取り出し、素材の分析をしてもらう事に。

 分析には数日かかるという回答を貰ったが、いくらでも出せるから返却しなくていいですって。そのまま売ってもらっても構いません。





 魔法関係は、研究者が途中でさじを投げた。


 言われるままに魔法を使うけど、中規模の魔法でストップがかかる。大魔法クラスは校庭一つでは狭すぎるので、後日海でやる事になった。

 超広域魔法? 使用禁止のお願いというか、あれは懇願かな? とにかく使わない事で合意した。


 補助魔法による他人の身体能力測定が一番研究者に優しかったと思う。



 夏奈たち、日本にいる他のクラスメイトの話を聞かされた。

 ただ、会うのはNGと念を押される。


 これは後で聞いた話だが、会えないのは本人よりもご家族の意向が強いかららしい。



 曜日の感覚無かったけど、今日は日曜日で。

 他の、まだ異世界にいるクラスメイトのご家族と食事会を行った。全員無事で、たくましく生きているという話でみんな安堵していた。


 ただ、冬杜の件は秘密にしている。

 口止めされている事もあるし、無駄に(・・・)心配させるだろうから言う気はない。





「他のみんなが、心配じゃないのか?」

「え?」

「その……あの静音という少女、彼女に害されているとは思わないのか?」

「ああ。それは無いし、そもそも冬杜じゃあ(・・・・・)みんなには(・・・・・)勝てない(・・・・)ので、気にしなくてもいいです」


 そうやって俺について調べる最中、研究者の護衛とか俺への監視とか、そういった諸々を押し付けられたのは陸上自衛隊第一師団第一偵察隊の面々だ。

 要するに、異世界経験者で俺の知り合いだからとババを引いたわけだ。


 研究というのは、一つ一つの検証に時間をかける。

 短時間に何度も魔法を使うのではなく、一回魔法を使ったら俺には10分20分休憩が入り、研究者だけで検証が行われる。

 その待ち時間は彼らとの雑談タイムだ。


 で、彼らが気にしたのは、全く焦りを見せない俺の態度。


 異世界に仲間を置き去りにし、日本に強制帰還させられた俺。

 普通に考えれば再び異世界に向かおうと必死になっているのではないかと彼らは考えたわけだが。最初、大人しくしているのは対策などを考えているからと思ったが、それにしては落ち着いている。こちらを油断させようとしているのではと勘繰っても、俺の能力を考えれば止める手段が無い事に気が付く。

 何日経っても落ち着いた様子の俺に、逆に不信感を持ったらしい。


 言いたい事は分かるけど。

 そもそも、前提条件を考えれば冬杜が何もしないというのが簡単に分かるんだけど。いきなり殺されそうになった事もあり、彼らの持つ冬杜への評価は相当酷いもののようだ。


「冬杜は、みんなの保護者みたいなものですから。危害を加える側にはならないでしょう。

 『唯一神(独善的な奴)』なんてギフトを持っているあたり、善性で悪さをするとは思いますけど」

「む。そうなのか?」

「はい。善意の押しつけ、そういった事はすると思いますけど。それも友人連中にバレてしまえば逆に叩かれて終わりですよ」

「は? すまない。言っている意味がよく分からないのだが」

「冬杜じゃあ、残った連中を押さえるなんてできっこない。そう言っています」


 明宮隊長をはじめ、隊員の皆様方も理解できない様子だ。

 それはそうかもしれない。俺の能力がかなり高い事は証明済みで、その俺でもどうにもでき無さそうな、見事ハメて日本に送り帰すなんて荒業をやった冬杜が他のクラスメイトに敵わないなんて、そんな考えが無いのは仕方がないだろうな。


「戦闘能力で言えば、古藤は俺よりも上です。ごく一部の面では俺の方が上ですけど、総合的に見たら俺じゃ(・・・)勝てません(・・・・・)。俺の戦闘能力って、あの村では4番目ぐらいなんですよ。

 それに、戦いで勝てない事と喧嘩で勝てないのは違いますよ? もし喧嘩するのであれば、春香や三浦さんの方が強いです。物理的な話じゃなくて、精神的な話で」


 異世界に行った直後であれば、俺は最強だったと思う。

 けど、俺は編成のギフトでみんなを強化し、能力の底上げを行った。

 熟練度の問題で『ブレタクⅢ』の能力だけを見れば俺が最強で間違いないけど。そもそも古藤は自前のチートなギフトを持っているし、他の連中だって底上げした分に俺の強化を加えれば俺に迫る事も可能だ。何人かは戦闘に全く使えないギフトだったりそもそもギフト無しなのでそこまで強くは無いけど、過度に保護する気にならない程度には強い。


 戦闘能力以外を見れば、みんなは図太く生きている。良くも悪くも。

 それに対し冬杜はシリアスすぎるというか、深く考え過ぎなのだと思う。

 だから暴走するし、自分の考える「最善の未来」のために余計な事をする。

 そんな冬杜のやり方をみんなが認めるなんて思っていないし、俺よりよほど上手く冬杜の考えを潰してくれると信じている。


 だから、急いで異世界に向かう理由が無い。


「……いい、友人なのだな」

「ええ。言葉が足りず、考えが空回りする俺よりも出来た連中ですよ」


 俺の考えに明宮隊長らは苦笑を漏らす。

 彼らの中では異世界にいるみんなが「冬杜の奴隷やおもちゃのような扱いを受けている不幸な子供」といったものだったのだろうな。

 助けに行きたかったが。彼らの苦笑いの中にはそんな意思が漏れていた。



「それはそうと、話は変わるが」

「何でしょう?」

「異世界には、こちらからも行けるのか?」


 そろそろ研究者に呼ばれるようなタイミングで、ふとそんな事を聞かれた。

 対する俺の回答は至ってシンプルだ。


「何時でも行けますし、今も文通をしていますが、何か?」


 その答えには、それを聞いていた全員が度肝を抜かれてしまった。驚きのあまり、固まっている。


 いや、俺のギフトは健在なんですよ。

 『ストレージ』が仲間内で共有という説明をしたと思うんですけどね?


 今でも共有化したままですけど、何か?

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