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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
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冬杜 静音④

 不死殺しではなく、不死者の封印とか。フィクションの世界じゃこういった手段はそこまで珍しい題材じゃない。

 漫画やゲームで培った手札を冬杜がどれだけ防げるか。勝負の分かれ目は、そこが焦点になる。



「ウンディーネ!!」

「はい!」


 まずは小手調べ。

 水の精霊ウンディーネを召喚し、冬杜の全身を水で包む。

 包んでしまえば足場が無くなり踏ん張りがきかなくなるし、歩いて移動はまずできない。泳いで水から出ようにも、水は不定形にして自由自在。出られるものではない。

 呼吸できなければ意識を失うのを、俺は自分で試している。HPが減らない事と脳内の酸素が不足するのは別枠なのだ。


 しかし冬杜はあっさり脱出をしてみせる。

 移動スキル『ショートジャンプ(空間転移)』で水の束縛を無視したのだ。本来は壁越えや高い所への移動で使うスキルだが、こういった使い方もできる。

 呼吸できなくなれば冷静に判断するのが難しくなると思ったんだけど。冬杜の奴、スキルを使いこなしていやがる。



 そうやって自由になった冬杜の姿が見えなくなった。

 俺は嫌な予感に突き動かされ、反射的に行動を起こす。


「ふっ!」

「きゃっ!」


 ウンディーネの束縛から抜け出した冬杜は、そのまま『ショートジャンプ』で俺の背後を取ると切りかかってきた。


 俺は冬杜が見えなくなった時点で前に出て、そのまま後ろに向けて切りかかり、これを迎え撃つ。

 漫画やアニメのパターンで言えば相手の姿が見えなくなった時は大体が後ろで、そのまま攻撃してくるものだ。後は頭上かね?

 なので前に出てしまえば敵は自分がいた位置にいる事が多く、攻撃までの流れを反射的に行ったわけだ。


 冬杜はまさかこのタイミングで攻撃して迎撃されるとは思っていなかったらしく、腕力差もあり食堂の壁まで吹き飛ばされた。

 ……吹き飛ばされる事で衝撃を逃がしたか。

 ダメージを喰らわないくせに防御行動をしっかりするとか、厄介だな。無敵の余裕を見せてくれればその隙に付け入れるのだがに。

 いや、もともと冬杜は防御系の訓練がメインだったか。甘い事は考えない方が良さそうだ。



 それにしても、対する冬杜が何を考えているのかは、今一つ分からない。

 明宮隊長から預かったスマホはストレージでなく俺の『ポケット』に移してある。つまり、冬杜が記憶を改ざんしようと、もう自衛隊がこの場に来た事実は消せないはずだ。記憶を改ざんしても、またすぐにバレるはずだ。無駄だろう?

 冬杜の勝利条件の一つに「記憶改ざんが正常に維持できる状況の構築」があるのは間違いないと思われる。


 そうなると、冬杜の勝利条件は?

 それを満たすための邪魔なものは……?



 俺は状態異常系魔法の≪ストーン≫や≪シェイプチェンジ≫を使うが、その(ことごと)くが無効化されている。


 無力化を狙うが、無理をする必要はない。

 時間を使って、クラスの誰かが来るまで持たせればいい。

 味方を増やして、説得可能な誰かに引き継げばいい。


 その考えが甘すぎたことに、俺は気が付けなかった。





「――バイバイ、四方堂」


 冬杜と剣で打ち合う。

 ぶつかり合い、弾かれ、距離を詰め。戦いは魔法無しに切り替わる。

 剣を打ち合ったところで蹴り飛ばされた。剣の間合いまで距離を詰めようと、俺は冬杜に向かって駆け出す。


 そして俺の目の前に、黒い球体が生み出された。


 それは見慣れた『門』であり。

 異世界と日本を繋ぐ架け橋であり。

 俺を異世界から排除する、冬杜の一手。



 『門』を抜ければ、そこは見慣れた学校の教室。先ほど別れた自衛隊の人たちがいる。

 いや、それだけじゃなくて見知らぬ大人が妙な機材で何かを調べていて。

 日常を塗りつぶす非日常で彩られた、俺の良く知っていた世界があった。





「マジか……」


 異世界への、日本の侵略を止めたい冬杜の選択は。

 俺を日本へ追放する事だった。

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