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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
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冬杜 静音③

「皆さん、一旦日本に戻ってください!」

「四方堂君! これを!」


 まずは自衛隊の方々に帰ってもらうべく、俺は声をかけた。

 明宮隊長は先ほどのやり取りで狙われているのが自分たちだと分かってくれたのか、その言葉に素直に従ってくれる。だがその前に、俺にスマホサイズの何かを投げつけた。


「日本にいる、君の家族からのメッセージだ! 記憶を改ざんできても、それがあれば!」

「ありがとうございます!」


 明宮隊長らは渡すものを渡すとすぐに姿を消した。元の場所で帰還用魔法陣を使うのだろう。さっそく渡した物が役に立つことになった。


 冬杜が時々弱いが連射の出来る魔法で自衛隊を狙うが、それは俺の方で全てガードした。

 やらせはせん、やらせはせんよ! 



 勝利条件の分からない俺ではあるが、敗北条件のいくつかははっきり見えている。


 冬杜を殺さない事。重度の障害が残るようでも不味いが、クラス内における冬杜の立ち位置を考えれば、殺した後にいい結果があるとは思えない。

 自衛隊の方々を殺させない事。助けに行った先で死者が出て。殺したのが現地の誰かではなく、現場の何かではなく、俺達要救助者だったら? 日本政府の対応がどうなるのかは考えたくも無い。俺達はまとめて犯罪者扱いになりかねない。


 冬杜の骨を2~3本折ってもいい。後で治せばいいだけだ、その痛みで制圧しよう。

 まずは絶対安全な場所に逃げてもらおう。門が開かれる場所は固定のようだし、また後で来てもらえばいい。


 勝てなくてもいい。負けなければそれでいい。

 当面の行動目標を決め、俺は迷いを捨てた。





 言葉のやり取りで考えを曲げられると考えるのは、甘ずぎる。一度ぶっ飛ばして心を折り、三浦さんあたりに説得してもらうのが最善だろう。

 それに、俺自身がその手のやり取りをしたいと思っていない。

 身内だったと思っていた時なら例え無駄でも言葉を尽くしたかもしれないが、今の冬杜を「敵」「裏切り者」と考えている俺が言葉で説得?

 どこの阿呆だ、それは。


 もしも冬杜の心を変えられるとしたら、それは冬杜の事を大切に思っている誰かだろうな。



 食堂で戦い続けるのはあまり嬉しくない展開だ。下手をすると建物が火事になる。

 かと言って入り口から外に出ると、自衛隊の方々が冬杜の攻撃範囲に入りかねない。


 だったら、と、俺は≪ぶちかまし≫で冬杜を裏口の方へ吹き飛ばした。

 ≪ぶちかまし≫は単純な体当たり攻撃だ。ダメージが低い代わりに命中率が高く、ノックバック効果、要するに対象を弾き飛ばす追加効果がある。ゲームでは高い所から突き落としたり、壁に挟んでダメージアップを狙ったものだ。なかなか使い勝手がいい。


 ドアを破って吹き飛んだ冬杜だが、俺はその姿に違和感を感じる。

 ダメージを(・・・・・)受けていない(・・・・・・)。HP表記を見ても、ノーダメージであることが分かった。

 ≪ぶちかまし≫はダメージの低い攻撃でしかない。しかし、ダメージが0になるわけではない。少なくとも攻撃力カンストの俺がやれば400点はHPを削れるはずなのだ。


 それを可能にするとしたら……。


 頭の中に浮かんだ嫌な予感。

 冬杜はそれを肯定するように口の端を少し持ち上げる。

 最悪だ。冬杜の奴、チートまで(・・・・・)コピーしやがった《・・・・・・・・》。


 冬杜の言うギフト『唯一神』、言葉にいい印象は無いが、かなり酷い。マジで何でもありかよ。

 一神教の神様なんて、全知全能を謳いながらも不完全な存在じゃ……?


 って、ああ。

 不完全だな。俺が日本とこの世界を門で繋ぐのを防げない程度には。


 思考を切り替えろ。

 絶対に勝てない相手じゃないんだ。

 俺の優位性(アドバンテージ)が全部覆された訳じゃない。


 『唯一()』という言葉に一つの対抗策が浮かぶが、それを即却下する。


 さぁて。

 古藤に続くチートキャラ。

 どうやって潰すかね?

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