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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
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冬杜 静音②

 人間関係っていうのは、単純に考える事もできるし複雑にすることもできる。

 本人の気持ちの持ちようって面が大きいと思っている。


 俺の場合、最初に「敵」「味方」「その他」で大きく分類する……事はしない。

 最初に気にするべきは、相手との接点だ。「学校」「家」「ゲーム」「ネット」「その他」でまずカテゴリ分けをしている。

 で、「学校」の場合は「クラスメイト」「先輩」「後輩」「教師」「同級生」で分けて、並行して「部活」「休み時間」「授業」って分け方を更にする。

 そのカテゴリの中で基準を作り、「友人」「敵」「ライバル」「その他」といった分類をする。


 あとは「授業」カテゴリでは「ライバル」でも「休み時間」では「友人」の「同級生」とか、そんな考え方を当て嵌めているだけだ。

 最初に「敵」「味方」を考えるよりも、状況や立場で関係が変わる事を意識しているわけだ。


 まぁ、普段はそこまで意識しないけど。たまに、冷静に相手を見定めたい時だけこの考え方を思い出すようにしている。



 俺にとって冬杜は、庇護の対象だった。

 クラスメイトで、仲間意識が強くて、友達想いで面倒見のいい奴。そんなふうに見ていた。


 この世界に来た初日、一緒にいたのが人を殺した俺に怯える奴ばっかりだったら、俺は1人で動いていただろう。

 あのとき冬杜が勇気を振り絞って俺に頭を下げたからこそ、俺はクラスメイトを守る事にしたのだ。


 その後も俺とみんなの間を取り持ち、俺達と村人の間で動き回り、全体の調整役をやっていた。戦闘能力やらなんやら、いろいろと出来るようにはなった俺だが、そういった社交性が身に付いたわけじゃない。人間関係の調整とかは全部任せていた。

 頼れる仲間。それが冬杜への評価だった。





 俺には冬杜が何をしようとしているか分からない。


 日本帰還の芽を摘む?

 それは不可能だ。俺を殺さない限り。そして俺がHP固定のチート持ちである限り、冬杜には打つ手が無いはず。戦闘において冬杜ができる事なら、俺はそれ以上にできるのだから。


 明宮隊長を殺そうとしたのだし、俺達と日本政府との関係悪化を狙っている?

 これならまだ可能のように思えるが、俺が彼らを守り切れなくても、1人でも守れたなら逆効果になる。反冬杜でまとまりかねない。俺を危険人物として信用せずとも、冬杜が敵対している間は共闘するだろう。


 もう一度記憶を改ざんしようとしている? そのために自衛隊の方々(不要な因子)を消そうとした?

 これが一番考えられる理由かな。どんな改竄をするにしても、自衛隊がいれば整合性を取る事が難しくなる。ほぼ間違いなく、いたら困る人たちだ。



「そういえばさ、冬杜。夏奈達はむこう(日本)で無事保護されたって。ここでの出来事は忘れたみたいだけど、一足先に帰れたみたいだ」

「へぇ……。そうなんだ」


 相手の狙いを推測するのは、交渉の為だ。


 冬杜はきっと敵だ。

 だけど敵でも交渉の窓口を持ちつつ戦うべきだと思っている。

 戦って勝つのは、おそらく簡単だ。基本ステータスが違うし、何よりこちらはチート持ち。戦力的な意味で負ける要素が無い。


 それに、やっぱり冬杜はクラスメイトなのだ。

 俺は気にしないが、冬杜が死ねば悲しむ奴が絶対にいる。例え裏切り者でも死なせるわけにはいかない。


「あ。それ、無理」

「何?」

「アタシを懐柔しようとかさぁ、四方堂にできる訳ないじゃん」

「お前……まさか……」


 武力で押さえつけ会話で妥協点を探すつもりでいたわけだが、それを口にする前に冬杜はいきなり駄目出しをした。

 表情から考えを読んだのかもしれない。

 口にした言葉から色々と察したのかもしれない。

 しかし、それよりももっと手軽で確実な手段がある事を、俺は、俺達はよく知っている。


「当たり。これがアタシのギフト『唯一神(なんでもあり)』ってわけ」

「『唯一神』って、それ、どんなゲームのチートだよ……」


 冬杜は俺の考えを読んで(・・・)、また先回りして答えを言った。

 ニヤリと笑うでもなく、俺から目を逸らし、辛そうな顔で。


 答えに思い至った俺ではあるが、現実はそれを遥かに超える答えだった。

 俺は冬杜の能力を「こちらの脳に干渉する能力」程度に考えていた。記憶を改ざんしたり、思考を読んだり。そこから類推したのだが、冬杜のギフトはそんなチャチな物じゃなかった。


「四方堂、意外と察しが悪いわー。そもそも、なんでゲームなのさ? ゲームに拘る理由なんて、どこにも無いっしょ?

 日本人は100年前にも来たわけでしょ。そんな時代に何のゲームがあんのよ? 将棋? 囲碁? どんなギフトが貰えるっての。ゲームの形をしてたのは、アンタらが作った先入観の所為だっての。

 まー、ゲームなんて取っ掛かりがなきゃ、『本当のギフト』を扱えるようになれなかったかもしんないけどさー」

「本当のギフト……?」

「そ。

 どっかのアニメみたいにさ、私ら地球人のイメージ力って、この世界を書き換えるほど強いみたいでさ。それがギフトの正体なのよねー。

 って、喋りすぎ? ああ、もう。調子狂うわ」


 ほぼ無意識に、いつものように冬杜の相手をしていた。

 そうしたら冬杜の方もいつものようにいろいろと教えてくれたわけだが、さすがに途中で気が付いてしまった。

 敵に与える情報など無い。そんな思いだろうか、冬杜は会話を切り上げる。



 この場合、俺の勝利条件は何なのだろうか?

 それも分からぬまま、俺は冬杜と剣をぶつけ合わせた。

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