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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
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開かれた門③

 伊澄という、聞いたことの無い名前を聞かされた俺は首を傾げた。

 だが、そんな俺の態度を疑問に思った明宮隊長が今度は首を傾げる。


「伊澄君はクラスメイトで友人なんだろう? 心配するのがそんなに不思議かい?」


 クラスメイト?

 言われたことが理解できず、俺は眉をひそめた。

 何だろう――この掛け違えたボタンのような違和感は。


「質問があります。俺のクラスメイトは、何人でしたか?」

「ふむ。――君たちのクラスは25人だ。間違いない」

「そうですか」


 俺の質問に対し、明宮隊長は何か考えるようにしてから答えた。質問の意図を(はか)ったのだろう、その意図に気が付きどこか悩むような顔をした。


 俺の記憶では、クラスメイトの数は俺を含めて24人。

 回答にあるクラスメイトが25人という事は、俺の記憶が違っているか、ゲートがパラレルワールドのような別世界に間違って繋がったか、明宮隊長の記憶が間違っているかの3択になる。


 何かが違うのは間違いない。

 そして俺の直観が言う。

 「間違っているのは俺の記憶」だと。



 思えば皇王竜を倒したあの日からしばらくして。俺は何にと言い表せないけれど、どこか違和感を感じていた。


 それは手遅れになる前に気が付けという警告のようで。

 これ以上愚を犯すなという怒りの声のようで。

 早く帰って来いという、哀願のようであった。



 俺は自分が間違っているという前提で思考を組み立てる。

 俺の記憶が改ざんされたと考えるべきだろう。おそらくそれは誰かが意図した事。つまり犯人がいるはずだ。それも、身内の中に。


 誰が、なんのために?

 誰が得をしている?



 いや、その前に確認しておくべきことがあった。


「もう一つ聞かせてもらえませんか? このノース村にいるクラスメイトは俺を含めて19人です。

 クラスメイトが25人として、伊澄さん以外に日本にいるのは何人でしょうか?」 


 それは死んだはずのクラスメイトの安否。

 もしも、あの時死んだと思っていたクラスメイトが生きていたならば。


「伊澄君を含め、6人だな。2ヶ月ほど前だろうか? 倒れているところを発見した。行方不明だった約半年間の記憶は持っていなかったが、全員無事だよ」

「ああ……そうですか…………。良かった」


 俺の記憶の方が間違っていなくてもいい。むしろ、現実がどうであろうと間違っている事にしたい。

 俺は天を仰ぎ、空を見る。



 これで冬杜も大丈夫だろう。

 この時の俺は、そんな甘い事を考えていた。

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