皇王竜討伐⑤
皇王竜の咆哮は至近距離で喰らえばダメージ付きで吹き飛ばされるほどの威力がある。
俺はHP固定だからダメージは喰らわないが、ノックバックを防げない。ものの見事に地面へダイブさせられた。
「田島! 何か情報! こいつだけじゃなくて、他の奴でもいい、復活ネタはあったか!?」
「ねーよ! 俺だってこんなん見たの初めてだ!! どうなってんだよ!?」
俺は起き上がるとすぐに田島に確認をする。
が、田島にとってもこれは異常事態らしい。否定の怒声を浴びるだけで終わった。
皇王竜のHPを見れば、ゼロになったはずがどんどんと回復していき――あれ?
俺はHPの下、MPの所を見て驚かされた。
皇王竜に、MPがある。
『ドラゴン×ハンター』はファンタジー世界を舞台にしているが、剣と魔法の世界ではない。鉄と鋼とモンスター素材の、硬派な世界観だ。よってMPなどというステータスは無い。
つまり、理由は分からないが、皇王竜は『ドラハン』の世界観からこの異世界に適応し、魔力を獲得したという可能性が出てきた。
「全員補助魔法でブースト! 防御優先で! アレは俺が抑える!!」
俺の仮定が正しいかどうかは分からないが、それよりも今は生き返った皇王竜?をどうにかするのが先だ。俺は長期戦に備えて指示を出す。
後ろの連中はそれでいいとして、問題は目の前の化け物のHPだ。
さっき回復していくところを見ていたが、HPが999から???になったのが、バーが1%未満の時だったことだ。つまりHPは10万オーバー。
ついでに魔法防御力まで生えてきたからな。俺の火力で100発以上攻撃しないと倒せない。他のみんなの火力は俺に大きく劣り、手数優先だと出せて200ダメージ程度。逆に相手からの攻撃は500ダメージ程度が予想される。当てられたら2発で終わりとか、厳しいなんてもんじゃない。ハードすぎる。
「再生系のスキルが無けりゃ……いいんだけど」
油断するのはただの馬鹿。想像は最悪ぐらいでちょうどいい。
いざとなればみんなは逃がして俺だけ残るつもりでいよう。
俺は、死なないからな。
「≪フルバースト・マジック≫!!」
皇王竜はただ攻撃されるだけではなくなった。突進し、生え変わった尻尾を振り回し、空を飛んではブレスを撃つ。
目の前にいる俺だけでなく後ろのみんなを狙おうとすることが多くなり、俺は戦場を駆けずり回る事になった。≪神聖領域≫の効果範囲はそこまで広くない。離れすぎれば急に動きが速くなり、みんなでは避けきれなくもなった。
幸いターゲットがコロコロ変わるので、戦場を広く使い、連続して攻撃を喰らわないように散開して戦っている。
俺も馬鹿の一つ覚えではないが、最も有効だろう≪フルバースト・マジック≫を連射する。何発も頭を狙って叩き込むが、今までよりもダメージが低い。というか、ピヨらない。
さっきまでは簡単にピヨったのに……っ!
しかも皇王竜は時間経過で再生する。単位時間当たりのダメージ量と回復量の均衡は僅かにダメージが勝っている程度。古藤の方もチャージが完了次第≪神滅≫を使うが、結果として思うようにダメージを出せずにいる。
どうにも、手詰まり感が拭えなくなってしまった。
「そうだ、耐性獲得だ! 何度もピヨるとだんだんピヨり難くなるみたいに、魔法を喰らいまくったから魔法に耐性ができたんだ!!」
仕切り直してから30分。
皇王竜にじわじわとダメージが蓄積して、残りHPは4割程度まで削った。
ただ。そこから先が減らせない。というか、皇王竜のHPは回復に転じ出している。
理由は明白。俺達の攻撃が通じなくなり始めたからだ。
見れば魔法防御力がカンストし、古藤の剣以外では俺の≪フルバースト・マジック≫しかダメージを出せなくなっている。大きい魔法を使おうとしても、魔法陣構築中に邪魔をされて潰される。
実質、俺と古藤だけしかまともに攻撃できない。
そうなると相手の回復量が俺達の与えるダメージ量を上回りだし、状況が悪化する。
俺が武器戦闘に切り替える?
残念ながら、俺が出せる最大ダメージは≪フルバースト・マジック≫だ。一点へのダメージを見れば武器攻撃もありだが、出が早く範囲攻撃で頭以外も潰せる≪フルバースト・マジック≫の利便性には敵わない。
何か、状況を打破する策が必要だった。




