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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
5章 迷宮世界のエトランジェ
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皇王竜討伐③

 皇王竜討伐開始。



 まずは皇王竜のところまで行かないといけないのだが、その途中にモンスターが出没するようになっていた。

 出てくるのは主に恐竜のラプトルみたいな外見をしたモンスターで、二足歩行で走り回る結構大きめのモンスターだ。背の高さは2m近く、体長は5mぐらい。走る速さは人間の駆け足の2倍ぐらいだろうか。体当たりに加え、小さな前足でのひっかき、噛み付きが攻撃手段。捕捉としては連携が得意な事か。毎回3体以上で襲いかかってきて、残り1体になると逃げようとする。

 あとは馬鹿でかい蜂やバッタのような虫系モンスターだけど、こっちは積極的に襲いかかってくるわけでもないし考えなくていいか。


 対するこちらは鬼か悪魔か。全員が戦闘に慣れているので、迷いなく敵を処理(・・)していく。具体的には首を刎ねるだけの単純作業です。御馳走様。

 その理由の一つが神騎士のスキル『神聖領域』というもの。簡単に説明すると敵の移動を阻害するスキルで、自分の周囲にいる相手は動きが鈍るのだ。SLGゲーマーにはZOC干渉スキルと言えば分りやすいだろうか?

 敵にしか効果が無いからなかなか熟練度を上げられなかったスキルだが、ダンジョンで少し鍛えられていたこともあり、雑魚戦では問答無用の威力を発揮した。本来の用途である移動阻害に加えて攻撃行動にも影響を及ぼし、あらゆる行動が遅延する。接近しないと攻撃できない相手はただのカモでしかない。

 よって、今の俺たちがやっているのは戦闘ではない。ただの作業だ。


 倒した後の死体は何故か消滅する。剥ぎ取りを行わないと素材は入手できず、それは田島達しかできない作業となっているため、時間の都合で死体はストレージに放り込んでいる。ストレージに放り込んでおけばなぜか死体は消えないので、剥ぎ取りは後回しだ。



 ボスまでの道は楽勝だった。





 モンスター生息地に入ってから15分程度で皇王竜のところまでたどり着く。

 ゲーム的な感覚で言えば時間をかけすぎらしいが、実際はこんなものだろう。あの手の(アクション系)ゲームを直接やった事は無いが、マップ画面はエリア間を省略していたから、その辺を考慮すれば妥当と言える。というか、戦闘時間込みで15分なら早い方じゃないか?



 皇王竜はリラックスしているのか、昼寝をしている。

 近くで見ると馬鹿でかい皇王竜は目測で体長20mを軽く超える。30mあるかもしれない。寝ていて伏せの状態だけど、それでも背中の高さは4~5mぐらいか? 立ち上がったら10mに届くかもしれない。

 俺のスキルでHPを確認すれば「???」と、HP999以上という表記。しかも頭や翼、尻尾などにもHP表示があり、その全てがHP???と規格外の化け物ぶりである。総HPはいったいどれぐらいなのだろうか? それに物理攻撃力や物理防御力もそれなりに高い。みんなもレベルが高いしHPは700前後と高めだから即死はしないだろうし大丈夫だろうけど……。


「寝てるときは誰かが一撃入れるまで起きないし、ダメージが倍になるから最大威力の攻撃を叩き込むのが鉄則なんだけどさ。四方堂と古藤ってどっちの方が強い?」


 俺が相手のスペックに驚いていると、田島が俺と古藤を見比べてそんなことを言った。

 睡眠状態に攻撃するとダメージ2倍か。だったら――


「古藤、任せた」

「ああ、任せろ」


 やっぱり最初の一発は古藤に任せるべきだろ。俺()は追撃に回る方が都合がいい。


「全員、召喚魔法の準備。打ち合わせの通り、≪魔法強化≫からの≪マルドゥーク≫で。古藤が一撃入れたら発動な」

「「「了解!」」」


 俺は全員に補助魔法をかけると、古藤と並んで無造作に皇王竜に近寄る。

 古藤は剣を構えて、大技≪神滅≫のチャージに入る。≪神滅≫は『エタブレ』シリーズや『ブレタク』シリーズでも最大威力の大技で、ボス戦で最も有効なダメージソースだ。単体相手の技だが乱発しにくい≪フルバースト・マジック≫と違い連続使用可能で使い勝手がいい。もっとも、≪フルバースト・マジック≫は戦闘開始から多数の敵を殲滅するのに最適という利用法があるので、どちらが上という話でもないけど。


 古藤は尻尾の付け根で待機し、俺は頭の方に行く。

 少し離れたところでみんなは魔法陣を描いており、俺たちはその完成を待つ。


 10秒、20秒と長い待機時間。『ブレタクⅢ』中、最も時間のかかる魔法だから待ち時間が長い。

 召喚魔法は魔法陣構築に時間がかかり消費魔力がかなり大きいが、その分威力も最高クラスで広範囲攻撃。初手に時間をかけられる今しか使い道がないが、これならもしかするとハメ殺しできるかもしれないという期待すらある。


 40秒経過。全員の準備が整った。俺は古藤に合図を送る。皇王竜はまだ寝ている。



「この剣が全てを斬り裂くなら、我らが未来を阻む運命をも斬り裂こう。≪神滅≫」


 古藤の全身から光があふれる。光は奴の持つ剣に集まり、剣の刃が3mぐらいまで大きくなる。そしてその剣が皇王竜の尻尾に向かって振り下ろされた。

 光の剣、≪神滅≫の刃は確かに皇王竜の尻尾、その付け根を両断せんと斬り裂くが、威力が足りなかったのかあのサイズを斬るには何かが足りなかったのか。骨を断つところまで刃が埋まったがそこで剣は止まり、尻尾を切り落とすには至らなかった。


 皇王竜はその痛みで目を覚まし、目の前の俺を視界に捉えた。

 そしてゲームのように咆哮を放とうとして――


「≪フルバースト・マジック≫」

「「「≪マルドゥーク≫!」」」


 俺の≪フルバースト・マジック≫の爆裂と≪マルドゥーク≫の刃に曝され、ズタボロになった。

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