皇王竜討伐①
「対策会議を開くぞ」
皇王竜が姿を見せてから、その翌日。
俺達は皇王竜討伐に向けて準備を進めていた。
皇王竜は村の上空を飛んでいたが、村そのものに興味を示さなかったらしい。そのまま飛んでどこかに行った。
しかしその存在を看過することは出来ず、それゆえの対策会議だ。
この皇王竜討伐に関しては、ほぼ全員が賛成した。
危険だと分かる相手を放置できないという意見。
得られる素材に期待する意見。
何が起こっているのか知りたいという意見。
それぞれ理由は違うだろうが、戦うことを決めている。
一部の例外、春香などは非戦闘員として村で待機。
総力戦とは言わないが、俺を含むクラスメイト23人が戦いに挑むことになった。
……正直、過剰戦力だと思わなくも無い。
「――っていうのが基本的な攻略手順だけど」
戦闘員になった俺達は、田島講師の「対皇王竜戦・ドラゴン×ハンター基礎知識編」の講義を受けていた。
皇王竜は俺にとっては未見のモンスターだが、田島達にしてみれば何度も戦った相手である。攻撃パターンから攻略方法まで、この世界に来て数カ月たった今でも鮮明に思い出せるレベルで数をこなしている。……レア素材のドロップ率は、相当低いらしい。
ゲームと現実は違うし、ゲームでは使えなかった魔法が俺達にはある。アイテム持ち込み数や人数制限がなくなっているのも有利な点だ。
逆にゲームにあった装備スキルや料理サポートが無くなっている。オトモもいない。ついでに無敵時間のある回避などは田島達だけの特権状態。
結論として難易度がどのように変化しているのか分からない。
特に注意されたのはブレスによる広範囲攻撃――下手な装備では即死するほどの威力らしい――と、動けなくなるハウリングボイスや地響き。突進からの体当たりは緊急回避、尻尾の振り回しなどはガードして吹き飛ばされないようにするのも大切らしい。タゲを確認し、安全なら勇気を持って攻めきる姿勢がないと時間切れになるとか。
ドロップアイテムというか、討伐報酬のために部位破壊も必要。余裕があればだが、角を破壊し、翼を破り、尻尾を切断する。
罠などは短時間だが有効。落とし穴と電撃罠、スタングレネードに捕獲強化ネット。数秒でも時間を稼げるなら活用すべき。
攻略情報から対策はいくつも思いつくが、それが有効かどうかはぶっつけ本番で試すしかない。運が良ければチートな俺と古藤だけで決着がつくだろうけど、油断は禁物だ。俺たち二人以外は召喚魔法を中心に、距離を取って戦わせようと思う。
できれば魔法でハメ殺せると良いのだけど……。
「そういえばさ」
対策会議が進んで役割分担などの打ち合わせに入ったところで田島がふと思い出したように疑問を口にした。
「どこに行けば皇王竜がいるんだ?」
「地図上に移動先の選択肢があるから大丈夫」
それは戦いの場所がどこになるかという事。
皇王竜は村を無視して飛んで行ったので、目視ではどこに行ったか分からないという話だ。
ただ、これについては俺の編成画面からマップ画面に移動するだけで解決している。イベント戦闘用の時みたいに、行先が追加されているのだ。
皇王竜の棲み処は村から王都方面に3日ほど移動した場所。山脈のどこかにいると表示されている。スキルをフル使用なら全員で行っても片道1日で済む距離だ。
……我が事ながら突っ込んだ方がいいような気もするが、誰に突っ込めばいいのか分からない。何に突っ込むべきかも分からない。マップ画面は謎仕様だな。便利だからいいけど。
倒す敵と。
倒す方法と。
どちらも確認済みな俺達は、武器と防具を準備するのだった。




