ダンジョン攻略3回目
ダンジョン内は最後に潜った3週間前からそこまで変わっていない。
敵のレベルが上がっている。
罠の密度が増している。
たった、その程度だ。
見敵必殺。
俺は索敵範囲にいる奴を魔法で潰すだけの簡単な仕事をしている。
「お兄ちゃん、終わった?」
「ああ。もう敵はいない」
潜っているのは俺と春香の2人だけ。他の連中は俺たちと組む気がなさそうで、こちらも本気で仲間が欲しかったわけじゃないので2人だけで潜る事にした。戦力は足りているので問題ない。
で、俺が前に出て敵を殲滅。罠は春香でも感知できるので気にしていない。キョロキョロ周りを見ているし、罠はすぐに分かるみたいだ。
ダンジョン内は謎の天井光源で明るいからお化けが出そうといった不気味さはないが、索敵範囲の狭い春香は突然現れるように感じるモンスターに毎回驚いて身をすくめる。
俺は魔法戦闘スタイルという事で魔法職の一つ『魔導師』のクラスで戦っている。春香は少しでも感知範囲を広げるために『冒険者』になっている。やっぱり専門職になった方がスキル効果が大きいので。
「うぅ、怖いよぉ」
「大丈夫だから。敵は弱いし罠もあからさま。大して危険でもないよ」
「でも……」
春香は基本的に憶病で、自分から戦おうというタイプではない。罠に対しても注意深く周囲を観察しているので、引っ掛かる事が無いので仲間としては安心してみていられる。
問題と言えばその臆病さから俺の左腕を掴んで離さない事か。魔法主体で戦っているから気にならないけど。
それにしても、こうやって怯える春香には癒される。
戦う事を厭わなくなっているクラス女子には正直引いているし。いや、なんでダンジョンで戦えるんだよ元は普通の女子高生ども。戦う力を得る事と戦える事は全く違うっていうのに。アマゾネスか、奴らは。
やっぱり普通は「こう」だよなぁ。必要ないのに自分から危険に挑むとか、馬鹿かと思うし。
何かを殺すことに慣れるとか、やっぱり良くないと思うんだ。そういう意味だとクラス女子はもう一般人じゃなくって逸般人だな。表だって口にする気はないけど。
「ほら、さっさとドロップを回収して行こう?」
「うん、分かった……」
赤井も知らなかったダンジョン内のルールでいくつか分かった事だが、敵を殺すならオーバーキルは控えめにするといいらしい。
前回は手抜きせず、全力で攻撃していたので跡形も残らない。結果、何もドロップしなかった。今度は適正ダメージになるよう威力を調節しつつ戦っているのでアイテムがドロップするようになっている。
落ちてるアイテムを回収する。
手に入るのは毛皮、小剣、革の鎧。あとは小銭。大したものは無い。手に入るようになったとはいえ、わざわざダンジョンに潜る価値はないんだけど。
まぁ、みんなが欲しいのは戦闘経験とか熟練度、冒険心を満たす何かなんだろうけど。
「春香って昔からお化け屋敷とか苦手だったよな」
「ダンジョンだよ? お化け屋敷よりも怖いよ。血の臭いも酷いし、もう気持ち悪いの」
逆に言えば、冒険心とかそういったものに興味を持たない春香には欲しい物が無く。血の臭いをはじめとする悪臭や殺意を向けてくるモンスターが嫌でしょうがない。
場の空気を読まないわけではないから、こうやって言われればダンジョンに潜る事もするが、好んでするはずがない。
子供のころのようにからかってみるが、反応が弱い。かなりまいっている様子で、これ以上潜るのは危険かもしれない。
「じゃ、帰るか」
「うん!」
そんな春香とダンジョンの最奥まで行く必要もないだろうし。多少は経験を積んだって事でもう帰っていいよな?
帰ろうと言った後の春香はすごく嬉しそうだし。
すぐに戻ると何を言われるか分からないし、戻ってからしばらくはシュークリームやコーヒーで時間を潰してアリバイ工作を行った。
その後ダンジョンで手に入ったものの検分が行われ、俺たちが手を抜いたことはすぐにバレた。
とはいえノルマがあったわけじゃない。早く帰るぐらい、本来なら怒られるようなことじゃなかったんだが……時間を潰したのは拙かった。
俺はちょっと怒られ、また春香とダンジョンに挑むことになるのだった。




