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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
5章 迷宮世界のエトランジェ
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村への悪影響

 季節はそろそろ春、ダンジョンが見つかってから1月が過ぎた。

 俺はダンジョンがもたらした変化に舌打ちしたい気持ちを抱えていた。



 ダンジョンに潜るのは命がけだ。

 たとえ俺たちが先行して罠やモンスターの傾向を探ったとしてもそれは変わらない。状況は刻一刻と変わるから、情報は常に鮮度を求められる。

 だから、ダンジョンに潜る連中が油断するという事は無い。事前に聞いた情報は参考程度。たまに失敗するので、情報が正しいとは言えないことを実体験で理解するからだ。


 俺はそんな危険に挑戦するみんなを苦い思いで見ている。

 命を危険に晒している事もそうだが、「その後」に問題が起きているからだ。


 具体的には、例えばだが俺と同じベッドで寝ている三浦さんと夏奈(・・)の件で。



 古くから言われることだけど、戦争の後は略奪と並んで強姦が行われる。戦闘で気が立った連中をどうにか鎮めるには、金と酒、そして女が有効だからだ。

 これは極度の興奮状態に陥った人間は生存本能が刺激されるからだと聞いた気もするけど、これ、男だけじゃなくて女でも同じことが言えるんだ。


 金は意味が無く、酒は十分な量がある。あとは性欲を満たすために女子が動くことは、そこまで不自然じゃない。

 男連中は何も気にせず――いや、古藤とかは後ろ暗い気持ちになりながらか? 娼婦を買って処理しているが、女子連中はそうはいかない。

 まぁ今はセルフサービスのようだけど、夜のお相手を探そうかという流れになっている。


 で、三浦さんと夏奈はこうやって俺が相手をしている。

 こっちでシたことのある相手だからと、ダンジョンに潜った後限定ではあるが、俺のところに来るようになった。

 ……一度で2人同時を相手にとか、最初がそうだったからと俺に求めないでほしい。素面(シラフ)では難易度高いよ。



 俺のクラスは女子の数が圧倒的に多く、俺が2人面倒を見るにしても、他の連中がどうするのか。

 現地人に手を出してくれれば問題が解決しそうな気もするが、今のところその兆候は見られない。主なターゲットは三加村(ロリコン紳士)だ。どっちも頑張れ。





 俺はダンジョンに興味が無いというか、潜るメリットを抱えていない。

 熟練度はすでにカンスト、得られるお宝は絶対に必要という訳ではなく、日本に帰ろうとするだけなら不要の一言。

 強いて言うなら保護者としてだが、それも必要と思えないほどみんなもダンジョンに適応しつつある。だから俺がダンジョンに付いて行く必要はない。


 そんなわけで、ダンジョンの様子やダンジョン後の話を聞こうと思うと、他の誰かを頼る必要がある。


「という訳なんだが、お前は大丈夫なのか?」

「ああ、もちろんだ心友! ただ、心友が言うとおりサカってる奴が増えたな。俺は断ってるが、誘われる回数は増えたし、熱意も徐々に増してる感じだ。

 ダンジョンの方も徐々に成長しているみたいで、難易度もあがってる。

 結果だけ言えば、状況は悪化する一方だろ」


 聞く相手は三加村だ。

 戦闘能力で言えば村でも3位確実の三加村は、ダンジョンに誘われることが多い。たぶんダンジョンに潜った時間はクラスでも最長間違いなしだ。冬杜はやる気があろうが、なんだかんだ言って対外交渉の仕事があるために潜る時間は少ない。


 そしてその三加村が言うには、ダンジョンに慣れてダンジョン後に高揚しなくなるといった希望的観測はできないとの事。

 で、ちゃんと治めない限り、そのうち暴発の危険もあると言う。


「男娼……手配するべきか?」

「いやいや、心友よ。それは不味くね? クラス女子に男を買わせるって酷くね?」

「じゃあ相手を頼めるのか?」

「すまん。無理だ」


 現実的な問題解決手段として、娼館――それも女性用のそれを用意することを考えてみたが、三加村はあまりいい顔をしなかった。

 だが、欲求不満を募らせたクラス女子がどういった行動に出るかは俺たちに予想できるはずも無い――正しくは俺たちが襲われるとか想像もしたくない訳だ――から、可能な限りそのはけ口を作っておく事こそ、村の治安を考える人間に必要な行動だと思う。


 どちらかといえば俺はクラス男子でも不人気に属するので、被害が出るとしたら三加村や古藤なんだけど。

 自分が大丈夫だからと甘く見て、油断したところを――という懸念は拭いきれない。三浦さんの情夫をしている俺は性的な意味で、裏で人気があるかもしれない。

 だからこそ平和な今のうちに行動したい。



「お、そういえばさ」

「なんだ?」

「心友は滅多にダンジョンに来ないだろ。心友の従妹の涼宮もそうなんだけど「2人もたまには潜った方がいいんじゃないか?」って話が出ててさ」

「……春香は忙しいから潜らなくても不思議じゃないだろうが」

「でもさー、いざって時の対応能力強化が目的なんだぜ? この村が攻められたとして、パニックを起こさないようにするにはやっぱりダンジョン経験は無駄にならないと思うぞ。他の連中もそれを心配してた」

「はぁ、分かったよ。考えとく」


 話の終わりがけ。そのタイミングで三加村が思い出したように俺をダンジョンへと誘う。俺と一緒に春香の事もだ。

 俺は気分が乗らないからダンジョンに潜らないが、春香の方は農作業の中心人物として仕事があるのでダンジョンに行かないだけだと聞いている。夏奈の話では2~3回は行ったらしいので、もう行かなくてもいいだろうと俺は思っている。

 しかし他の連中はそんな春香に危機感が足りないと思っている様子。一番の懸念材料であったブリリアントとの関係が良好だから、もう他にノース村を攻める馬鹿などいないと思うのだが。それでもダンジョンに潜った方がいいとみんなは考えている。避難訓練みたいな感覚か。


 手間ではあるが、俺は春香と一緒にダンジョンへ潜ることを約束するのだった。

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