領主①
4章終わりまで毎日更新します
「ふーん。まー、話を聞くだけならいーんじゃない?」
「やっぱり領主絡みだと思うか?」
「半々ねー。取り込むってだけならもう取り込まれてるし?
アタシは功績のあった下の連中に追い抜かれたくないNo1が焦って動いたって気もするケド」
先ほどのやり取りをみんなに伝えると、そこまで間違っていなかったのか、及第点を貰えたようだ。
ただ、と冬杜は少し考えこむような顔をした。
「やっぱさー、有益そうな奴って取り込みたいじゃない? 貴族様なんだしぃ、自分がやられるとか普通考えないっしょ。危険だって考えずにさ。
たださぁ、嫌っている奴の下より信頼してる上司の下の方が部下って頑張るじゃん?
アンタ、前に衛兵殺っちゃったの、マズったかもね」
ん?
どういうことだ?
「ホラ。襲われたところを衛兵が助けて、その結果感謝したアンタが有利な商取引を持ちかける。
そーゆー展開も考えられね?」
……?
あ。
確信は無いけど、って顔をした冬杜の言葉が脳に染み込む。
全方位から囲まれていたから「逃がさないようにする為包囲している」って判断したけど、「周囲の横やりを防ぐ為、人を遠ざけている」と考える事も出来た。
つまり、領主側のヘイトを稼いでしまい、友好関係を結ぶフラグをへし折った……?
やっちまったぁぁ!?
拙い、俺の思考が殺伐としてきたみたいだな。自分の命を大事にするのは最優先だが、あっさりと殺す判断をするのはよろしくない。強いのがいたわけでもないし、脅威度が低かったのにあそこまでする必要があったか?
冷静さが、思慮が足りていない。今度があれば、もっと視野を広く考えるべきだ。
やってしまった過去は受け入れ、忘れずにおけばいいだろう。気にし過ぎると身動きできなくなる。
フォローが必要かどうか考えたが、表だってやったことを認めなければ、相手次第ではあるが無かった事に出来るかもしれない。それはもう領主の反応を見てから考えればいいだろう。
時間経過がいい方に作用するかもしれないし、な。一月後に期待しよう。
こうして俺たちは納品を終え、その後は特に何も無く、ブリリアントの町から完全に撤収したのだった。
そして一月経った。
ブリリアントに持ち込む品は品目を変えず、量だけ少し増やした。少しだけ、である。商取引ができるほどではない。
これ以上取引先を増やすのは得策ではなく、牛という生き物を扱っている以上、急な増産が不自然だからだ。それができるという事は、こちらの勢力をより大きく見せるという事。規模の小さい事を侮られるより、規模の大きさを脅威を見なされる方がリスクが大きい。まだリスクを増やすわけにはいかないだろう。
という訳で、前回を同じメンバー6人でブリリアントに入る。
今回の税は自腹だ。何度も「幻霧楼」の世話になる気は無い。信用とか貸し借りとか、無償は無償じゃないんだし。
「幻夢楼」との商談はルーチンみたいなものでしかない。こちらが渡した品物の確認をしてもらうのと、相手から渡された銀貨の真贋確認しかやらないし。
雑談でこの店も領主との付き合いがあり、この店に売った商品の一部を領主側に流したという話を聞いたが、売った物のその後にまで興味はない。
俺たちの商品を知られたわけだが、それは領主が客として来るだろうことが予想の範囲内だったから今更だ。
無償で献上せよという話になったら逃げるし、売れという話なら契約を理由に躱すだけ。強引に売れと言われた時は幻夢楼を盾に、そちらと交渉してくださいと撤退するし。幻夢楼のオーナーの転売を認めたのには、そういう理由もある。
で、宿で休んでいると「天津風」の使いが来た。前回と同じ、門番の青年だ。
「お迎えに上がりました」
ただし一人ではなく、馬車の御出迎え付き。頭を下げて出迎える御者とメイドさん(?)がセットで来た。
馬車の方はちゃんとした造りの、豪華なものだ。使っている宿屋は前回と同じ普通の宿なので場違いのように見える。
「お荷物があれば、お預かりいたします」
メイドさんがそのように申し出る。どうでもいいが、このメイドさんは30代半ば程度で、ベテランっぽい風格を醸し出している。漫画でもないのだから、若いメイドが彼女より有能という事はまず無い。前回の「こちらを軽視しているのでは?」といった抗議に対する回答なのだろう。
少し気を良くしたように見せ、相手の敬意を受け取ったと顔に出してみる。
するとメイドさんは心なしかほっとした表情を見せたので、こちらも相手を信頼しているのだと証明するため荷物を渡した。
古藤に三加村、赤井たちも荷物を渡し、馬車に乗り込む。
……娼館に女性を連れ込むような真似をするわけだが、大丈夫だっただろうか?
女は美しさに貪欲だというし、洗髪関係や化粧品なんかを要求される可能性が大きくないか?
考えてもしょうがない。
交渉の主力は三浦さんだし、生産状況も分かっているだろう。
きっと正しい答えを選んでくれるはずだ。




