夜の夢
「すまねぇな、あんちゃん。助かったよ」
金物を扱っている店を数軒見つけたが、商品を購入する事は叶わなかった。
金属製品は軍が買い占め売り切れのまま、材料である鉄鉱石すら使い切り、何も残っていないのである。
俺は前に増やした手持ちの鎧と剣をその場で売却し、「材料にするなり売り払うなり、自由に使ってくれ」と言っておいた。
鉄不足の金物屋は色を付けて購入してくれ、これが結構な現金収入になり、2000枚以上の銀貨を得る事になった。こちらの物価から日本円換算をしてみると、200万円ぐらいの現金になったのだ。
銀貨も増やせるから現金にさほど大きな意味は無いのだが、それだけの大口取引をした、つまりは恩を売った状態になったのだ。ついでに大金を手にしたのだからいい娼館は無いかと話を振り、鍛冶屋の店長からお奨めの娼館と女の子を聞き出すことに成功した。予想外の幸運である。
……「その程度は先に考えておけ」とは言って欲しくない。その程度も思いつかない程度に、こちらは素人なのだから。クラスチェンジで商人になっても、実際の商談以外では効果が発揮されないようなのだ。
思わぬ情報にホクホクした顔で俺はみんなと合流。
すると先に来ていた古藤と三加村が言い争っていた。俯き気味の古藤に、三加村が険しい顔をして何か言っている。
「もう少し考えろよ」
「でも、見捨てるわけにはいかないだろ」
「この場で助けたとして、その先はどうするんだ? ずっと面倒を見るわけじゃないし、ここであんなふうに助けるのは無責任だと思わないのか?」
「偽善の何が悪い!」
「手持ちの資金を使い切って、逆切れしてんじゃねー!」
なんとなく、状況は分かった。
普通、キャッチなどには反応しないのが正解だ。だから俺は声をかけられても完全にスルーしていたが、古藤はそれができなかったのだ。
で、手持ちの食料や銀貨を全部分け与えたのだろう。アホか。
とりあえず、こんなところで言い争う姿を見られるのは良くない。最悪、兵士が来るだろう。
なので俺は二人に割って入る事にした。
「ほい、ストップ」
「心友?」
「四方堂?」
物理的に割って入り、三加村を止める。
「心友、古藤の肩を持つのか?」
「おう。この場で騒ぐほどのミスをしたわけでもないし、そう責めてやる事も無いだろ?」
「こいつは、渡された軍資金を自分の勝手で使い切ったんだぞ?」
三加村は大きな声こそ出さないが、低く、強い声で非難の言葉を口にした。
「使ったと言っても、簡単に増やせるただの小銭だし? 孤児の中に村の子供が混じっている可能性だってある。そっちから情報を貰えるかもしれないって思えば、そこまで無駄にしたってわけでもないだろ。ストレージの方には……うん、手を付けてないな」
共有化されているストレージの食料品に手を付けていれば、半殺しコースだけどな。それをしていなかったので、今回は大目に見よう。というか、俺達とは別方向の集団に繋ぎを作ったと思えば悪くない。
お金は使うためにあるのだ。
「けど、集団行動で勝手をする奴をそのままにしたら駄目だろう? 何か罰を与えないと」
「まー、それもそうなんだけど」
まあ、集団生活って互いに集団のルールを守るのが前提条件で、それを疎かにすれば成り立たないって面があるし。俺の発言が甘いっていうのは確かだな。
それにこういう時はリーダーがグダグダになったら駄目か。要反省だな。
「じゃあ、今回の罰は村に戻ってからって事にしておくか。罰ゲームは女子も交えて、みんなで考えよう」
「うげ」
「ま、それならいいか」
正直、誰かに罰を与えるとかはあんまり考えたくない。
リーダーなんてみんなやりたがらないわけだ。ドSでもない限り、ストレスが溜まるっての。
その後、男子全員が集まったので娼館に向かった。
そして、マジでいい夢を見る事になった。
俺達が向かった娼館「夜の夢」は結構いい店らしく、この街では上から数えた方が早いというか、3番目にお高い高級娼館だった。
一見さんでも身なりが良さそうで金払いが良ければ客として扱ってくれるギリギリのラインで、一番いい店とその次にいい店は紹介状などが無ければ相手にしてもらえないという。
ちなみに、6人分の代金は銀貨で約6000枚。お一人様1000枚で100万相当と、俺が鉄装備を売って稼いだ額の3倍である。洒落にならん。
余談ではあるが、金貨による取引は、普通はしないらしい。よほどの大店でも無い限り、信用されないのだ。だから一般市民の貨幣は銀貨までである。
「夜の夢」は高級店であるが、大きさはそれほどでもない。高級感を演出しつつ狭さを感じさせない雰囲気を意識してはいるが、敷地面積はファミレスよりも狭い。
アパートの玄関程度の広さしかないエントランスで受付を行い、入店料の銀貨500枚をまず支払う。そしてに案内される1階のホールは高校の教室程度の広さで、テーブルは3つしかない。そこで女の子とおしゃべりをしたりお酒を飲んだりしながら誰にするかを決め、女の子の代金を支払う。お酒代は入店料に含まる。あとは2階と3階の個室で致すようになっている。
個室は狭く、ベッドとお酒を飲むためのテーブルが置いてあるぐらい。防音には気を使っていて、壁に耳を当てようが隣の部屋の様子を窺うことは出来ないほど分厚く作られている。あと、ベッドはふかふかで、バネと羽毛を使っているんじゃないだろうか。ここだけ文化のレベルがかなり違う?
女の子のレベルも思っていた以上に高く、ちょっと異世界を舐めていたと痛感した。
さすがに髪や肌の綺麗さではクラス女子の方が数段上なんだけどな。
そして夜の技。
プロの技は凄かったです。
下半身的な技と会話テクニックとかにやられてしまい娼婦から情報が引き出せなかったのは、うん、しょうがない。終始相手のペースだったよ。
抱く気の無かった古藤と田島もヤることをヤッていた様子で、こちらも情報を引き出すところではなかった模様。
ホールでは女の子の情報を聞き出そうとするが上手くはぐらかされ、逆にこちらの情報を引き出された。
個室ではテーブルにお酒とグラスがあったのでお酒を楽しむのかと思ったが、部屋に入ってすぐに押し倒され、そのままなし崩しに数回戦、終わった後は疲れて眠った。
明け方に小間使いの女の子に起こされ、その場で朝食を摂ってから外に出た。
色気耐性というか、マジで欲しい。
魅了耐性はあるんだがなぁ、効果が無い?
なぜにー?




