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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
3章 傀儡世界のマリオネット
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閑話 乙女たちの内緒話(三浦 瑶子)

 楓に私は手を引かれていきます。

 楓は相当怒っているみたいです。孝一さんへの気持ちを考えれば当然ですね。



 楓と知り合ったのは1年生の時、料理部に入った時の事です。


 高校入学当時、両親の仕事が忙しくなり、私は家の手伝いの為に料理を覚える事にしました。それまで、学校の実習以外で料理をした事が無かったわけです。

 料理を覚えるために料理部に入るというのは、単純ですが良い手だと思いました。


 そしてその考えは間違っていませんでした。

 料理を覚えた事もそうですが――


「瑶子ちゃん、これ、持っていきなよ」

「おやつもあるわよー」


 私は先輩方に気に入られ、差し入れの類を貰えるようになったのです。

 家庭の事情は説明してありました。

 中には家まで来て、掃除を手伝ってくれる先輩もいました。


「可愛い後輩だからね、どうにも放っておけないんだよ」


 みんないい人で、とても良くしてくれました。

 ただ……


「瑶子ちゃん、これ食べる?」

「これも美味しいよ、瑶子ちゃん」

「えー。瑶子ちゃん、こっちの方がいいよねー?」


 同級生まで後輩扱いっていうのはどうなのでしょうか?


 いえ、私が小学生のような外見だという自覚はありますよ?

 ですけどね? 3年生になった今でも部員全員から後輩扱いは酷いと思うのですよ。



 そんな扱いの私ですが、楓とは結構仲が良かったのです。孝一さんへの思いも随分聞かされました。

 ですから、楓が孝一さんと復縁したいというのはよく知っています。その感情が、やや病んでいるようなほどに深い事も。


 それでも2年前、恋人(孝一さん)といろいろとあった時には、味方しませんでしたけどね。

 あれはさすがにどうかと、当時の私も思ったものです。

 浮気は重罪なのです。フォロー不可なのですよ。

 ……日本にいた時の話ですが、別れてからの2年間一度もぶれない恋心に感心し、今では協力してもいいと言ってしまいましたが。





「楓、行くならこっちです」

「瑶子ちゃん?」

「ゆっくり話すのに、適した家ですよ? 私と孝一さん(・・・・)の家ですから」

「ふふ、そうね。じゃあ、案内して頂戴」


 そんなわけで、孝一さんとの関係を考えれば、楓と揉める事は予想していました。

 普段はしない「孝一さん」呼ばわりで挑発しつつ、こちらのテリトリーに引きずり込み、用意された状況に持っていきます。楓とは3年間ずっと友人でしたからね。いい武器がある以上、コントロールするぐらい簡単なのです。

 今度は私が手を引く状況になり、楓を引っ張っていきます。



「瑶子ちゃん、ごくろう!」

「待っていましたよ、楓さん」

「あー、気分おもーい。ん? 赤井さんと瑶子ちゃん? ああ、もうそんな時間なのねー」


 そして私たちの家まで楓を連れてきました。

 今回話し合うために来てもらったのは孝一さんの友人「伊澄 夏奈」さん、従妹の「涼宮 春香」さん、無関係なクラスメイト代表「(たちばな) 水奈(みな)」さんの3人。

 本当は静音にも来てほしかったんですけどね。孝一さんを引き離すため食堂に残ってもらいました。


「瑶子ちゃん?」


 家の中にいた3人を見て、楓が少し怯みます。

 私の性格と合わせて、自分が嵌められた事に気が付いたのですね。同じハメるのでしたら私は是非孝一さんに――ではなく、罠にかかり、不味い状況というのを理解したわけでしょう。相変わらず、楓は反応が可愛いですよね。


「さぁ、お話(・・)を始めましょう?」



 孝一さんの異常を理解する者として、私たちは1人でも多くの協力者が欲しいのです。

 頑張ってくださいね、楓。

 私たちだって頑張りますし。

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