王都脱出
アンデット、ゾンビ化した神官長は素直に全ての情報を俺に教えてくれた。
情報を引き出した後、ゾンビ神官長はこの場に置いて行くことにした。どうせだから、日が昇る前に暴れさせて後方攪乱を行う事にしたのだ。
≪ネクロマンシー≫の事を知り、王国が俺を危険視して殺しに来ることも考えたが、その時はその時だ。返り討ちにするだけ。拠点を守るのならば戦える仲間――進化した馬たちがいるので、不可能ではない。最悪、『召喚魔法』で殲滅するだけだ。
余談であるが、レベルは40まで上げておいた。10レベル級が100人もいれば絶対に勝てないほどの戦力差にはならないと思うけど。朝日が昇れば自滅するだろ……しないか。ゲームの時に天候なんてファクターは無かったし、弱体化した事なんて無かったからなー。頑張れ兵士諸君。超頑張れ。
肝心の異世界人召喚魔法の方は、特に問題なく使えそうだった。
季節や場所、気象条件などの縛りが無く、問題になるのは魔力、つまりMPだけだったからだ。神官長クラスを基準に1万人分もの魔力を「魔力の杯」というアイテムに集める必要があり、その準備のために連続使用が出来ないだけだった。そして「魔力の杯」は神官長の部屋に保管してあったらしいので、すぐに回収しに向かった。
神官長のMPはたったの120で、常人と比較すればかなり多い方だ。だがMPを120万というのであれば、俺のチートが無かったとしても1日で集め終わる。あっちにいる女子9人の平均MPは魔法系クラスになれば700ぐらいで合計6300、『瞑想』スキルでMPを回復しながらやれば200セットも無理な数字ではない。
試しに俺のMPを注入してみたが、5分と掛からず満たすことができた。
この場で試す気はないけど、これだけで準備完了という訳だ。何というイージーモード。ノース村に戻ったら他の使い道でも考えてみよう。MPをストックするって、おもしろい事もできると思うんだ。
「おせーぞ四方堂!」
「私らの準備はばっちりだよー」
俺の方の準備が一通り終わるころには、クラスメイト一同の準備も終わっていた。時刻はすでに深夜の2時。二日連続の夜更かしである。
藤村さんの準備も終わっていたようで、一安心である。
「三加村、頼めるか?」
「おう、任せとけ心友!」
移動には馬車を使うが、それを牽くのは馬ではない。三加村の召喚モンスターである『ドラゴン・パピー』と『ワルキュリア』の霊鳥だ。御者出来る奴はが俺以外にいないので御者を必要としない召喚モンスターに頼る事にした。
使う馬車は3台だが、ドラゴン・パピー側に二台を連結して引っ張らせるので問題ないのだ。
ここまで自分のギフトを隠していた三加村だが、ここに至ってみんなにも自分の能力を教える事にしていた。知られたくない相手が王国側の人間であり、どこに目があるか分からないから隠していたと説明。この説明には不信感を隠しきれない奴もいたけど、揉めるほどではなかった。
「門は任せていいんだよな?」
「まーね。とは言っても力押しなんだけど」
「……どうするんだ?」
「開かない扉なら、殴って壊せばいいだろ?」
「脳筋だ!!」
三加村に失礼なことを言われたが、これぐらい考えなくても何とかなる問題なのだ。つまり考える必要が無いだけで、俺が脳筋という訳ではない。
現在位置は王城の敷地内にある馬房。
そこから出るには王城を囲う城壁を越えねばならないのだが、馬車を使う以上、正規のルートを使うしかない。空を飛んでみんなを外まで運んでから馬車を調達することも考えたのだが、最後は派手に暴れる事で警告とするため、この方法を選んだ。
風属性のドラゴン・パピーは他の属性のものよりパワーが無いけど、ドラゴン・パピーの中では力が無いというだけ。レベルカンストまで育っているので馬車を2台牽くぐらいは簡単にできる。
ワルキュリアの霊鳥は元々馬車を牽くためのオプションで、乗っているのが多人数とは言え馬車1台分なら特に問題ない。
3台の馬車は、普通の馬が牽くのと同じ速度で進ませる。馬車の耐久性能の問題でそれ以上の速度を出すことが出来ない。
そんな馬車を後目に、俺は徒歩で先行する。
最初の門は上から下に落として閉めるタイプで、高さは5mぐらい。何本もの鎖を巻き上げる事で開くのが正常な操作。
材質は鉄をメインとした金属製。完全に鉄だけで作るほどの材料や資金が無かったのか、重量の問題か。強度はそれなり、重さはかなり。
で、俺にとっては大したことのないシロモノ。砕き吹っ飛ばすのは簡単だ。問題はその方法で、下手な壊し方をすれば馬車が通る道を塞ぐことになる。出来るだけ穏便に、丁寧に開門しよう。
「≪オーラブレード≫」
まずは門を半ばから両断。
普通の剣で切るのは難しいが、オーラで強化した一撃なら容易い話。
「続けて――≪三連脚≫」
あとは切った下半分を蹴り飛ばし、吹き飛ばす。門の左右もわずかに壊れるが、道を塞ぐほどではない。
下半分が無くなり、残る上半分も落ちてくる。それも同様に吹き飛ばしてから、両断され吹っ飛ばされた門を道の脇にどかした。
追って後から来た場所と合流し、王都から出る前に同じ手順をもう一度繰り返す。
じゃあ、外の赤井たちを回収するか。




