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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
3章 傀儡世界のマリオネット
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王都脱出前に

 各自自室に戻り荷物の整理をしてもらう間に、俺は暗躍することにする

 具体的には、藤村さんの洗脳を解く。


 状態異常解除魔法の≪リセット≫はあらゆる状態異常を治してくれる。あの場で治すことも考えたんだけど、それだと操られて何かしていたことを周囲に知られてしまう。

 そうなれば藤村さんを排斥しようという流れが出来てしまうかもしれない。今後を考えれば無駄ないざこざのタネなど無い方がいいという事で、秘密裏に治すのだ。



 藤村さんは旅の荷物を作ることなく、問題の貴族の元へ向かった。

 洗脳なんていう厄介な能力持ちなど、生かしておけば後でどんな禍になるか分からない。今のうちにその貴族も始末してしまおう。





「と、言う事で、彼らは王国から離反するようです」

「うむ。報告、御苦労。

 聞いての通りだ。異界のサルども、他人の恩を知らぬ奴らが。立場を分からせてやる必要があるようだ。お前らの出番だぞ」

「イエス、マイロード」


 問題の能力者は、貴族だけあって城の中でも良い部屋を与えられている。金銀財宝を飾った部屋は悪趣味な成金的に見えるが、この世界の貴族ならそれが当たり前というか、良い物という文化なのだろうな。謁見の間も似た様に飾ってあったし。

 公爵家の次男と聞いていたが、見た目は日本人と言っても通じるぐらいに普通の男だ。特に美男子という事も無いし、黒髪黒目で日本人で通せそうな顔のつくり。……昔の転移者も日本人だったのか?

 年は13歳とまだ若く、命令されてこんなことをしているのかもしれないが。同情の余地など、今の俺には無い。甘いことを言って生き残れるほど自分が優秀ではないと思っているので、この場で斬る事は確定だ。


 問題は、この場に騎士が詰めている事。護衛なのだろう、10人の騎士が傍を固めており、部屋の前にも6人ほど警護の兵が付いている。

 ≪フルバースト・マジック≫は敵味方の区別が出来ない範囲魔法だから使えないし、別の手段を講じるか。


「『魔法範囲拡大』からの――≪シェイプチェンジ≫」


 まずは部屋の前にいる警備兵をどうにかする。

 選んだスキルは『魔術』の≪シェイプチェンジ≫。小動物などに変身させ、無力化する魔法だ。ある程度固まっていたので、範囲を広げた魔法で一網打尽である。今回はフェレットだったようで、扉の前では6匹のフェレットが駆けずり回っている。


 そのまま部屋の中に押し入り、同じ手順で全員無力化する。――今度は豆柴か。小さな犬が、何が起こったか分からずに走り回っている。その中でも藤村さんだけ選んで≪スリープ≫。眠らせておく。


「バイバイ、坊主」


 範囲を広げていないので、寝ているのは藤村さんだけである。俺のマップ表示なら誰が能力者か分かるので、うろちょろしている豆柴の一匹の、首を刎ねる。死体は人間に戻らないのでチビ犬のままだ。

 眠ったままの藤村さん(豆柴)を腕に抱え、残りも処分する。殺さなくてもいいかもしれない? そんな事は無い。翻訳のアイテムがあるのだから、犬にしても意思疎通はできると思う。だからきっとこの場で処分が正解だ。慈悲は無い。

 そのまま死体は放置し、俺は藤村さんの私室に向かった。



 藤村さんを部屋のベッドに寝かし、≪リセット≫で豆柴化と睡眠状態を解除する。ついでに洗脳が解けたことも確認し、何も言わずにそのまま立ち去る。

 ついでに他のクラスメイトの様子をそれとなく観察してみたが、王国の密偵がそれぞれに張り付き、監視していた。監視されたままというのも厄介なので、これも闇に紛れて始末する。クラスメイトの中には気が付いた奴もいた様だけど、俺がやったという確証は……状況証拠だけで特定されるか。まぁいいや。そこまで大きな問題にはならないだろ。

 情報漏洩を防ぎつつ、ではない。こういった諜報関係の駒を潰すことで相手の初動を遅らせたいだけ。人数が人数なんだから、どうせすぐにばれるだろうけど。今は夜だし、多少荒っぽい事をしても露見し、騒ぎになるまで間があるだろうから、ね。





 あとやっておく事は召喚魔法の情報を得る事だけ。俺たちが逃げた後では相手が雲隠れするかもしれない。その前に決着をつけるべきだ。

 翌朝、太陽が昇ると前には移動を開始する予定だ。それまでに俺たちの召喚主――神官長『アドマイヤー=ツェッペリン』を鹵獲しないといけない。少々手荒な方法で。


 奴のいる場所は聞いている。

 王城から少し離れたところにある神殿脇の宿舎らしい。神殿に勤める人間は基本そこに居るらしいので、神官長も例外ではない。他より豪華な部屋が用意されていて、夜はいつもそこにいるのを三加村の召喚モンスターが確認している。

 護衛の姿も確認されているが、それぐらいは何とでもしよう。こちらの兵士たちは戦力的に厳しいとは思っていない。幸い、転移者の子孫は王族や公爵ぐらいしかいないので、その中に混じっている可能性は低いだろう。いたとしても……敵対するなら、潰すだけだ。いや、すでに敵対しているから、殺して回るのは確定事項。そこは割り切る。

 あ、さすがに転移者を探し出し、皆殺しにするつもりはない。あくまで直接敵対した相手だけを潰すだけだ。



 ちまちまといろんなことに手を出した結果、すでに時刻は夜の12時近い。

 潜入した神殿は、それなりに兵士らしき者たちが巡回している。

 しかしそれは念のためというか、厳戒態勢といったものではない。ただの日常、その延長線上のものだ。巡回と言っても隙間だらけで兵士の質だって低い。マップに表示される兵士のレベルは神官長の周りにいるそこそこ連中が高いけど、20レベル後半が上限。脅威になりそうな者はいない。ギフト(ゲーム能力)持ちも皆無。イージーモードだ。

 神官長の位置、周囲の状況。それらがマップ一つで丸分かりなのだから、誘拐するのも簡単だ。見つからないよう窓から侵入し、眠っていた神官長に≪シェイプチェンジ≫を使ってから確保する。


 神官長は子豚になった。

 運搬中に気が付き「プギー!!」と叫びながら暴れるが、≪シェイプチェンジ≫は無力化の魔法だ。押さえつけるのは全く持って簡単だ。顎を砕きかねない強さで握り、王城まで連行した。



 王城、人の来ない一画で抱えていた子ブタを地面に放り投げる。

 相も変わらず喚いているが、言語翻訳スキル『バベル』をセットしていないので、何を言っているのか分からない。

 子豚の状態で騒ぐのはまだ構わないが、人間に戻してから喚かれても面倒だ。子豚状態のまま半殺しにして、「死んでいない」が「生きているとも言い難い」ところまでHPを削る。それから人間の姿に戻した。


 で、禁呪使い(ブレイクセオリー)のスキル『禁呪』をセット。

 神官長の首を刎ねた。



「≪ネクロマンシー≫」


 わりとどうでもいいことだが、尋問は相手が本当のことを言うかどうかという不安が付きまとう。

 その危険を回避するにはどうすればいいか?


 嘘を言えないようにすればいい。

 その手段として選んだのが≪ネクロマンシー≫。死者をアンデットにする魔法だ。これで神官長をアンデットにして、正しい情報を引き出すわけだ。


 正直、外道と言われても仕方のない所業をしている自覚はある。

 だが、安全に日本に戻りたければ、ここは躊躇しちゃいけない。甘い事をして間違った情報を得た時、帰れなくなる可能性が高いのだ。自爆魔法でも教えられたとすれば、自分は大丈夫だろうが、周りを殺すことにもなりかねない。


 こいつは、敵だ。


 だから殺してでも召喚魔法の情報を奪うのである。

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