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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
1章 召喚世界のゲーマーズ
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セルフ・ステータス

 そこは、石でできた大部屋だった。

 海外旅行などした事は無いが、パンフレットなどで似た様な部屋を見たことがある。海外の大聖堂がこんな造りだった。


「おい、ここはどこだよ?」

「え? あれ? 藤堂さん? あれ? 私、部屋にいたはずなのに……?」

「痛っ! 何よ、一体……」

「……寒い」


 周囲から声が聞こえる。

 それは聞き慣れた声で、それもそのはず。クラスメイトの声だった。

 周囲を見渡せば、私服姿のクラスメイト達。担任はおらず、生徒のみ。それも着の身着のままの姿でここにいる。


 俺と同様、外にいた連中はまだいい。靴を履いているし、防寒対策もしっかりしている。

 だが屋内にいた連中のほとんどは暖かい場所にいたため、そこまで厚着をしていない。靴下すら履いていない奴だっている。とても寒そうである。


 俺は手にした缶コーヒーをコンビニ袋に戻し、周囲を観察することにした。

 何をするにも、まず情報が足りない。



「あっ! 孝一!」

「兄さんもいたんだ……」


 俺が周囲を見渡し状況を確認していると、友人と従妹から声をかけられた。

 俺を呼び目の前に来たのは、クラスメイトの中でも特に仲のいい二人。


 1人目、名を呼んだのは「伊澄(いずみ) 夏奈(かな)」という合法ロリ。

 身長は俺と比べ頭一つ分どころではなく、40㎝近く差がある。ツインテールというロリにしか似合わない髪型をした元気娘。

 1年の時から同じクラスというのに加えて教室では席が隣という事もあり、普段からよくしゃべる相手だ。クラス内では一番仲がいい相手である。


 2人目、俺の事を「兄さん」といったのは「涼宮(すずみや) 春香(はるか)」で、俺よりも2ヶ月ほど後に生まれた従妹である。

 家が近所なので小さい頃からよく遊んでいたし、中学時代は学力が近かったために同じ学校に通う事になっている。今だと学力に大きく差がついてしまったが。

 親戚で仲がいいとは言っても、学校ではあまりしゃべらない。だからこうやって寄ってきたのはかなり意外だ。


「やっぱり二人もいたのか……」

「やっぱり? 何か分かってるの?」

「ただの状況判断だ。ここにいるのって、全員クラスメイトだろうが」

「あー。言われてみれば、そうだねー」

「そうですよね。どうしてここに、は、分からないですよね……」


 春香と夏奈は周囲を見渡し、観察する余裕が無かったようである。ちょっと落ち着けば分かることも分からないほど混乱しているようだ。

 まぁ、異常事態でしかないからな。俺だって冷静だってわけじゃなく、現実逃避しているから慌てていないだけだからな。



 そうやって周囲を観察しつつ現状把握に努めていると、ふとした思い付きが頭をよぎる。

 それは、ネット小説で読んだことのある展開。「異世界トリップ」という話。


 現状を当てはめれば、これに近い“何か”が起きたと考えるのが妥当だろう。

 屋外にいた俺、自室でゆっくりしていた奴もいて、服装はバラバラ。そうなると異なる場所にいた俺たちが一瞬でここに集められたことになり、これは普通に考えるとありえない、物理現象に反するであろう状況だ。

 俺たちが普通の高校生であることは明白で、であるなら何らかの外的要因によりここに集められたことになる。そしてそれは自然現象と考えるのが難しく、何らかの作為を感じる事から、「異世界トリップもの」のなかでも「国などによる勇者召喚」に相当する物ではないかと予測できた。

 この予測を補強する材料として、教師がいないことが挙げられる。教師のような大人がいると、そこに「頼れる存在」がいる事になり、国が俺たちを上手く操れなくなる可能性が高まるからだ。


(そうなると、これから接触してくる“誰か”は味方と考えない方がいい。最低限の自衛・自活手段を得るまでは大人しく従うにしても、可能な限り早めに逃げるべきだな)


 俺は現状からそのように判断すると、自分にできる事を確認できないかと考えた。

 小説では何らかのチート能力というものを得ているパターンがほとんどで、そうでなければ異常な成長速度を有していることが多い。これはわざわざ異世界から人間を誘拐するぐらいの労力をかけているのだし、有用な者を召喚しているはずだからという希望的観測によるものだ。

 言葉が通じ文字が読めるなら技術士官や文官として登用することもできるだろうけど、それすら出来ないかもしれない異世界人を呼んでまでする事ではない。特に技術チートをするなら“学生”ではなく“社会人の技術者”を召喚するだろう。であれば、その他の有用性、主に戦闘に有用で魔力チートと呼ばれるものやユニークスキルを持っている可能性が高い、はずだ。


(じゃあ、まずは基本だな。≪ステータス・オープン≫)


 俺は“お約束”に従い、ステータスを見れないかを確認する。

 が、当たり前のように何も反応しない。


(別の単語なら反応するか? それとも、口に出さないと拙いのか? まぁ、何もない可能性はあるとしても、現地人と接触する前に試すだけ試しておきたい)


 失敗からいくつかの仮説を思い浮かべ、思うままに試してみる。


(≪コマンド・オープン≫≪ステータス・チェック≫≪コンフィグ≫≪メニュー閲覧≫……)


 適当に思いつく単語を並べ、思い浮かべる。口に出すのは思考だけでどうにもならないと見切りをつけた後でいい。

 口に出して失敗するのは、せめて周囲に人がいないときにしたい。


(……≪編成画面≫。お!? ヒット!!)


 そうしていくつの単語を試しただろうか。試行錯誤を繰り返すうち、とうとう俺は目当ての物を見付けることに成功した。


 俺の目の前に現れたのは、見慣れたゲーム画面。

 この世界に来る前にやっていた、『エターナル・ブレイブ・タクティクスⅢ』の編成画面だった。

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