エンディング & ???②
「試したいこと?」
三加村の言葉に、俺は首を傾げた。とぼけるつもりで。
三加村は俺の肩を掴むとにこりと笑った。ただし目はちっとも笑っていない。
「何をしようとしてたんだ?」
「ゲームを再現するつもりだったんだよ。リアルとゲーム、一番の違いを再現するつもりだったんだよ」
「は?」
「ゲームを再現?」
いやもう。今はそのためのギフトを古藤に消されたから、もう出来ないわけだが。
あのギフトはブラフだけど。ごまかし程度に応える分には都合が良いな。
「『セーブ&リロード』。基本だろ?」
「ああ……そうきたか」
ゲームとリアルの一番の違い。
それは「やり直し可能かどうか」だと思う。
ゲームなら、セーブポイントまで何度も戻ってやり直せる。
リアルでそれは出来ない。セーブポイントなんて無いからだ。
俺は、『編成画面』を『スタート画面』のギフトにする事で『セーブ&リロード』を再現しようとしたわけだが。神域に入ってすぐに作ったセーブデータが全て消されており、ロード画面には「No DATA」の文字が表示されるだけだ。
せっかく過去のデータをでっち上げ、この世界に来たばかりの頃まで戻れるようにしたのに。
三加村はTRPG、つまりやり直しのきかないゲームをやっていたからこの手の発想が無かったらしい。
こいつだけは予想していなかったらしく、驚いている。が、他の連中の何人かは気が付いていたようで、「やっぱり」という顔をしている。
「なるほど。やり直して悲劇を無かったことにするわけか?
戦争なんかは被害が大きすぎたからな。あれが無かったことにできるなら、それはそれでアリかもな。
ま、もう出来ねーみたいだけど」
話を聞き終えた三加村は納得したように頷いた。
が、話はそれで終わってくれなかった。
「ダウトです」
今度は三浦さんだ
「嘘ですよね、それ」
「……何を根拠に?」
「三加村君が選んだ選択肢、「ちろりろりん」って聞こえましたよ。四方堂君から答えを聞き出せなかった、失敗の音です。
だから。今の答えは嘘、ですよね?」
三浦さんが冷たい目で俺を見る。
ああ、嘘を言った事に本気で怒っている。今まで見た事の無い、般若のような顔で俺を見ている。
思わず、口元が引きつった。
「ここまで来て、隠し事は無しですよ。ね、静音?」
「は?」
あ。
ここで冬杜に話を振るって事は。
もしかして、バレてる?
首を三加村の方に向ければ、してやったというドヤ顔が目に入った。さっきのは演技だったわけか。
なんかイラッとした。あの顔をぶん殴りたい。が、ぐっと堪える。
「『セーブ&リロード』、似てるけど違いますよね。正しくは『ニューゲーム』ですよね。ああ、引継ぎありですから『セカンドゲーム』でしょうか?」
三浦さんは頬に指を当て、小首を傾げながら、俺の方を見ずに言う。
冬杜は俺に向かって両手を当て、頭を下げている。どうやら白状させられたらしい。
はぁ、と大きく息を吐く。
あんまりみんなを巻き込む気は無かったんだけど。
どうやらそうもいかないらしい。




