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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
終章 神話世界のワールド・エンド
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ゲーム・オーバー・ワールドエンド⑥

「なぁ……俺達、3人とも人間をやる必要ってあったのか?」

「楽に勝てる方が良いに決まってるだろ。気にすんなよ」


 顔を合わせる事も無く、サクッと消した悪神の命運。

 あまりにも手ごたえ無いこの終わりに、古藤はどこか釈然としない顔をした。


 それはそうだろう。

 奴は物語で言えば悪のラスボス。たとえ後ろに真のラスボスや裏のラスボスが控えているパターンがあろうと、普通は死闘の果てに倒す相手だ。雑魚その1なみに片づけてしまっては、浮かぶ瀬も無い。

 とは言え、わざわざ苦戦なんてしたくない。周到な準備と果断な処置を以て挑む以上、苦戦などしてはいけないのだし。


 それに、奴を倒すことは目標の一つであってゴールじゃない。俺の戦いはまだ続いている。

 しばらくは世界の改変に挑んでみるが。


 ……やっぱり駄目か。


「二人とも。悪いニュースと、凄く悪いニュースがある」



 俺たちの目標は、大雑把に言うなら「自由な世界で幸せになる事」だ。

 細かい事は横に置き、今手にしている大きな、大きすぎる力は要らない。大きすぎる力は悪魔の誘惑の様に心を腐らせる。

 神様の力なんてものは必要だったから手にしたけど、欲しかったわけじゃない。人にできない事まで何でもできる今は、努力と友情を必要としない「つまらない人生」しか齎さないのだ。


「そっちでも試してほしい。俺達の力がはく奪できるかどうかを」


 だから、力を封じて元の生活に戻りたかった。

 適度に人外でいっぱいできる事があって、だけどそれだけで何でもできる訳じゃないっていう、「ちょっとぬるめの人生」に。


「……無理だな。3人とも揃って帰ることは出来ない」

「こっちもだ、心友。2人までなら帰れるけど、3人共は出来ないねーよ」


 だけど、それは許されないらしい。

 力を得ることは出来たけど、力を捨てるのは無理みたいだ。


 協力してやればなんとかできるかもと、色々試した。

 それでも俺達には道筋を見つけることができなかった。


「しゃあねーな。誰か1人残るって事で、2人は帰るか? それとも3人でここに居るか?」

「いや、それよりも。結論を出すのは“凄く悪い事”を聞いてからにしてくれ」


 因果の意図を紐解いて、可能性が完全に閉ざされている事を悟った三加村は、諦めを口にすると共に今後の方向性を問うてきた。

 が、それももう一つの問題を解決してからだ。


「異世界だけど。ポップモンスターとかなんとかしようと頑張ってたんだけど」

「ん? 止められなかったのか?」

「いや……この世界、崩壊しかけてる。と言うか、崩壊の真っ最中」

「はぁ!?」

「悪神、相当無茶しやがったらしい。俺達が地球への道筋を作ったからかな? この世界を捨て去るつもりだったみたいだ」


 これはなぁ。お約束イベント発生か?





「エリアA1、コンプリート!」

「エリアH8、コンプリート!」

「エリアA8……アウト! 上書き再制作に入る!」

「エリアA2、再計算! エリア1のしわ寄せ来てる!」


 崩壊しつつある世界。

 それを8×8の盤面に見立て、修復可能か挑戦している。細かいことを言いだすと多次元世界を平面上に押し込むのは不可能なんだけど、データ上のやり取りなので無理矢理、概念的に盤上に押し込んでみた。



 で、世界の崩壊ってやつが何なのか。

 簡単に言えば、崩壊した場所は「存在しなかったことになる」。

 そうなると世界に矛盾が生じ、因果的に近しい所から順に「矛盾に喰い潰される」。

 これが世界の崩壊だ。


 実は俺達もいくばか関係していて、例えばチートによる減ったはずのMPが減っていないMP固定も一つの矛盾として世界を蝕んでいた。

 多少の矛盾なら世界が修正してくれるけど、許容量を超えれば世界崩壊を促進する。

 この辺りは書き換えが必要なデータ量に比例すると思っていい。


 俺達がやっている「世界の修正」とは、矛盾の解消とその手伝い。

 出来なければそのエリアを見捨て、周囲との齟齬が出ない新しいエリアに上書きする。

 放置すれば世界が亡ぶのだし、躊躇する気はない。例えそれだけで何千何万と言う命を奪う事になろうと。

 ノース市周辺は死ぬほど頑張ったので無事だけど。

 むしろそこを中心に調整してるけど。



「こうなると、『ゴジ○』思い出さね?」

「何で『○ジラ』?」

「あー、心友は初代を観てねーのか。名作だぞ?

 アレだ。オキシジェンデスト○イヤー? ゴ○ラ殺す薬品だっけ? それ作った博士が「これは世界が知るにはまだ早い。強大過ぎる力は不要」ってラストに自殺すんのよ。

 俺達の力ってさ、マジで世界滅ぼすレベルじゃん。ヤバくね?」

「世界の為だろうと死んでやる気はサラサラ無い」

「四方堂の言葉が正しいな。2度とこの領域に人が来れないよう、ギフト関連のシステムを壊したうえで俺たちの力を封印するだけでいい。

 あとは俺達が残った力を悪用しなければそれでいいだろう」

「捨てれたら、だろ? 使っちまう気がしないでもないし、こっから日本の様子は見れないんだぜ」


 凄く悪い事。そんな言い方をしたが、状況はそこまで厳しくない。緊迫した雰囲気を出して遊べるぐらいに余裕がある。


 そうして作業がひと段落したところで、三加村が変なことを言いだした。俺達の力が危険だと。

 この力が世界にとって危険ってだけで、俺達が死んでやる理由にはなりえない。古藤も同じ事を言う。自制心さえしっかりしていればなんとでもなるだろ、これぐらい。


 三加村は難しい顔をしているが、それ以上何も言わない。

 命を捨てるより力を捨てる算段を付ける方が効率がいいし、力を捨てる事に誰もが否定的な意見を持っていないわけだが。なんで三加村はいきなりデッドエンドを言い出した?

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