ゲーム・オーバー・ワールドエンド②
さて、神に挑めると仮定して。
その前にやるべきことを済ませておくべきだろう。
「――と、いう訳で。俺たち3人で神に挑もうと思う。
もしかしたら、全く関係ない神のところに行くかもしれない。
もしかしたら、俺たちをどうにかできる強さを持った神かもしれない」
俺は集めたクラスメイト達の顔を見渡し宣言する。
「けど、いい様にされて、玩具のように生きるなんて真っ平ごめんだ。俺はもっと自由に行きたいし、そんなムカつく奴、この手で殴ってやらなきゃ気が済まない。
ガキみたいな我儘だって分かっていても、俺たちはやる。
だから、みんなはここで待っていてくれ」
不退転の決意を、みんなの前に出す。
賛同も何も必要としていないが、それでも何も言わずに行くのは不義理というものだ。
これが俺たちがやるべき最初の一歩。
完璧じゃなくても、僅かでも、筋を通す。
せめてそれぐらいはしようと思う。
「待てよ」
俺が言葉を締めくくると、黙って聞いていた仲間の中から一人の男が立ち上がる。
『ドラ×ハン』ギフト持ちの田島だ。
「勝手なこと抜かしてんじゃねーぞ、四方堂。俺らだってなぁ、カミサマって奴にはムカついてんだ。
俺も行く。手前ぇらだけで終わらせよーとすんんじゃねーよ」
声を荒げてはいない。
しかし、有無を言わさぬ強い口調で田島が吼えた。
俺は内心に溜め息を隠す。
分かってはいたんだ。田島をはじめ、何人かの心が折れていないことぐらい。
クラスメイトの気骨はそんなに軟じゃない。戦争で折れたのもいるけど、折れていない奴だっていて、そいつらはあの地獄でも心を折られない強さを秘めていることぐらい、俺は知っている。
そして、田島に続こうと何人かが立ち上がろうとした。
だけど。
今回ばかりは遠慮してもらう。
「田島……。お前さ、俺に勝てるか?」
足手纏いなのだ。
弱い奴を連れていけるほど、今度の戦いは甘くない。
だから、ふるい落とす。
「HPが減らねーっていうチート抜きなら勝てるさ。俺の『緊急回避』ならお前の≪フルバースト。マジック≫だって無力化できるし。持久戦にすらしてやらねーよ」
「いんや。それもアリでだ。チートのままの俺に勝てるか?」
「はぁ!? 無茶言うなよ! 死なねー奴にどうしろって言うんだよ!!」
まずは無茶振り。
俺の攻略ができるかどうかを引き合いに出す。
「この二人は、それができる。だから連れて行くんだよ」
「な……? クソッ!!」
戦闘能力でランキングを付けると、最強は三加村。次に古藤。俺は三番手だ。今のところ。
能力の汎用性とかできる事の幅広さとか。そこまで考えると俺が一番動ける奴なんだけど。戦闘能力だけを抽出すると、結果はこうなる。
そして、不死殺しぐらい、この二人はいくつも対案を思いつく。そして実行できる。
「俺が最低ラインなんだよ。だから諦めろ」
言われた言葉を理解できないほど、田島の頭は悪くない。
悔しそうにするけど、それ以上のことは何も言わない。他の連中も最初に立ち上がった田島に続こうとした為に、先頭の田島がコケた今は立ち上がる事が出来なくなってしまった。
この中で、冬杜ぐらいは連れて行けるんだけど。こいつは何も言わずにそのまま残る事を選んだ。
冬杜は冬杜なりに役目を理解していて、自分が残ってみんなを守る役を負ったと分かっているのだ。だから無言で俺たちを見送る。
この後、総理やルイス長官に話を通し、後顧の憂いを完全に断った。
「早く戻ってきなさい。まだ仕事はたくさんありますよ」
「グッドラック! 孝一!」
彼らは彼らなりに、大人として子供のやりたい事を尊重した。
2人から無形の信頼と激励を受け取り、俺たちは戦いの場に赴く。
うん、見送られる側って言うのは気分のいいものだな。
背中を押してくれる誰かに感謝しつつ、これが最期の我儘だからと、俺たちは覚悟を決めた。




