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クロスオーバー・ゲームズ  作者: 猫の人
6章 箱庭世界のリターナー
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クロスオーバー・ゲームズ②

 とりあえずゴブリンの数を減らす事、ゴブリンが増えないように対策をする事の2点から実行しよう。



 心の折れたクラスメイトは基本的に放置、しばらくは療養してもらう。

 古藤や三加村など何人かは悔しいと思うだけで済んだので、彼らだけは全員連れ出すことにする。長距離移動用にスキルを組み替え、空を移動して廃王都を目指す。



「今更だけどさぁ。空から物を落とすだけでも良かったんじゃないか?」

「……ああ、鎧の入った木箱を落とせば下にいる奴は潰れて死ぬな。でも足止めになるとは思えないし、時間効率が悪すぎる。『ストレージ』から物を取りだすのは時間がかかるからな」

「そこは、ほら。先にポケットに移しておくとか」


 空を行く間、航空戦術についてみんなで話し合う。

 個人で空を移動できる俺達は、戦闘機のような役割もこなせる。低空であれば対空射撃などを警戒しなければならないが、高空を行けばいいだけだし、何よりゴブリンアーチャーなどは高い所に弓を飛ばすことが難しいので警戒する必要があまりない。

 前回は攻撃が貫通するからと、地上で戦っていたが。きつくなったら空に逃げるという選択肢があるのは精神的な余裕を作る。次に備え、色々と考えておくべきだな。





 それにしても、前回の戦争では30分程度で2万以上のゴブリンを殺したわけだが、秒間10匹以上殺していた事になる。15人だったからおおよそ秒間1殺でいいか。

 見渡す限りに血と臓物をまき散らした地獄絵図だったけど、今日もまた、酷い。


 俺達は廃王都を目指しているわけだが、道中で戦わないという訳ではない。

 大きめの集落があれば潰していく方針のため、前線基地のような扱いだったいくつかの集落を潰している。

 基本は雑魚しかいないゴブリンの集団。先制攻撃で大規模広範囲攻撃魔法を叩き込んでいるため、やっている事は作業に近い。


 中には人間を飼っている集落もあったが、助けるような真似はせずに外からゴブリンごと消えてもらっている。

 奴らは人間牧場と言うか、繁殖用に人間を確保しているのだけど、その体にはゴブリンの()が仕込まれており、いろんな意味でもう助けられないのだ。最初に一回だけ助けようとして、もう駄目だと諦める事にしているのだ。少なくともゴブリンを孕んだ女性は、何度も見たいものではないし、殺すために連れ出す真似をしたいとは思ってない。

 だから2回目以降は人がいるかどうかを確認していない。


 もしも「それでも助けるべきだ」なんて言う奴がいたら、「お前が助けろ」と言ってやるさ。当たり前だが、俺達は手を貸さないので自力で頑張れ。





 廃王都まで何もせず移動に専念すれば半日で辿り着くのだが、殲滅戦を数回挟んだことで道半ばで野営をすることになった。


 道中の食事は『ストレージ』経由でノース村で作ってもらった出来立て料理を食べている。

 が、寝るときはノース村の恩恵を受け取れない。『転移門』は戻ってこれる保証が無いので使う気になれず、現地で寝るしか方法が無い。


 三加村が敵対モンスターの侵入を阻む魔法を使えるのに加え、三加村専用の召喚魔法で強大な魔法を操る防衛用魔法生物『ガーディアン・センチネル』を配備してもらうから、それらを頼って寝ずの番は無しですませる。

 こういった時、TRPG系の能力などは使い勝手がいい。戦闘特化のゲーム系能力では、こういった生活に密接する部分で対応力に差が出る。



 三加村の召喚するモンスターは、一撃入れたら還ってしまう『ブレタクⅢ』の召喚魔法とは違い、1日召喚状態を維持できる。

 つまり、おやすみからおはようまでの間であれば何の問題も無い。


「なあ、三加村」

「なんだい、心友?」


 ただ、召喚されたモンスターを見て思った事を一つ聞いてみる。


「たしか、三加村って『テンペスト・ドラゴン』だっけ? かなりでかいドラゴン、()べたよな?」

「おう! 心友には確か、ブリリアント近くに行くときに乗せた事があったよな」

「この間のゴブリン戦で、あいつを喚んだら、もう少し楽になったんじゃないか?」

「……ああっ!?」


 三加村の召喚は10分ほど時間がかかる。その為、戦闘前に召喚していないと召喚しようという気にならない。

 あの戦いでドラゴンを召喚していれば全く違った結果になった気もするが、既に終わった戦いの事だ。次から気を付けてもらうしかない。


「即時召喚なら戦闘中でもいけるんだけどなー。10分しか持たないけど、普通に喚べたのに。あああ、戦闘勘が鈍ってる……」


 できたんかい。

 まぁ、いい。廃王都で出番があるわけだし、その時は全力で暴れてもらうから。


 というか、三加村だけの問題じゃない。廃王都の前に全員の戦力を確認しないと駄目だな。


「みんなー! ミーティングやるから集まれー!」


 今回の作戦に参加する8人。

 その全戦力をどう使うか。


「普通、もっと前に確認するよなー」


 皇王竜の時は強力な個体を相手にするための話し合いをしただけだし、その後も似たような戦いばかりで、こういった大軍相手の戦術はまともに話し合ったことが無かったんだよな。まともに戦争するなんて考えていなかったし。


 想定していなかった。


 それだけの事だが、その代償は重かった。

 地震とかもロクに対策してないし、これもそういった甘い考えで世の中舐めていたって事なんだろうな。

 やっぱり普段からの備えって大切だ。

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