事後処理
いろいろあって、女子たちはすぐに寝直すことにした。
俺はというと、もう少しやる事があるからまだ起きている。
そう、捕まえてこっそり運搬しておいた、騎士の尋問が待っているのだ。
捕まえた捕虜の尋問。女子連中とは離れた場所で、隠れてやる事にした。
時刻は深夜の2時を回ったところ。普通なら寝ているんだけど、高ぶった気が鎮まらず、俺の目は冴えている。
「さて。まずは目的を教えてもらおうか」
目の前にいるのは20歳前後の若い金髪男。身なりがいいし、訓練された騎士って感じだから、貴族の出なんだろうね。それなりにプライドも高そうだ。
今は必死に俺を睨みつけているけど、顔芸は未熟なようだ。不安を隠し切れず、口元がわずかにピクピクしている。
武器と鎧などの防具は取り上げたので、今は鎧下だっけ? コットンみたいな厚手の布の服を着ているだけだ。とりあえず両腕を後ろで縛ってから体を木に縛り付け、指なども動かないように固めておいた。視覚情報を減らすために目隠しもしておく。
「……」
俺の質問に対する男は無言。
俺は警告も何もなく、男の右耳を切り落とした。
「ぎゃぁぁっ!!」
「さて。まずは目的を教えてもらおうか」
「あ、あ、あ! 耳がっ! 俺の耳がっ!!」
「さて。まずは目的を教えてもらおうか」
「うわぁぁっ!」
騒ぐ男を無視して、俺は質問を重ねる。ついでに反対の耳も切り落とした。
「さて。まずは目的を教えてもらおうか」
「あ……うぁー」
両耳を失ったショックと痛みで気を失ったのだろう、男は意識を手放していた。
今度は回復魔法で傷を癒し、腹を蹴って無理矢理意識を覚醒させる。
ふーん。回復魔法で部位欠損は治らないんだな。
「さて。まずは目的を教えてもらおうか」
「ひいっ!」
男は怯え、俺から離れようと体をよじらせる。だが縛られていてはそれも叶わず、ロープをギシギシを鳴らすだけだった。
「さて。まずは目的を教えてもらおうか」
「話す! 話すからもうやめてくれ!!」
今度は鼻を削ぎ落そうかと思っていたのだが、ナイフが鼻に当たった所で相手の心が折れた。
早かったなー。いや、拷問用の訓練を受けていなければこんなものか? 普通はそんな訓練を施さないし。
「俺たちの目的は、お前らを皆殺しにする事だ! 山賊を使っていたのは女を何人か売り払う為で、仲介させるために雇った! 上司から言われてこの任務に就いたから、陛下や国の上層部の意思でもあった!
なあ、助けてくれよ! 命令されて仕方が無かったんだ! 俺たち兵士なんて使い捨てで、逆らったら反逆者扱いになるんだ! やりたくない仕事でもしょうがなかったんだよ! 俺、まだ死にたくないよ!!」
生き残るために、必死で命乞いする兵士。
生き残らせれば、まず間違いなく俺の情報が相手に伝わる。それは今後を生き抜くうえで障害となるだろう。あえて情報を伝えて手出し無用にするという選択肢もあるけど、有用だと追手がかかる方がはるかに厄介だ。向こうの連中の何人かを人質にされれば、クラスメイトとは言え見捨てざるを得なくなる。
だから問答無用で騒ぐ兵士の首をナイフで斬り裂いた。
返り血を警戒して後ろから切ったけど、服の袖に多少跳ねてしまった。ああ、面倒くさい。
先ほどまでは遠距離から魔法で殺していたから、そこまで実感が無かった。
だがこの手で直接人を殺すと、それはまた違った感触を俺に伝えてくれる。
――俺は、人殺しだ。
沈んだ心を切り替えるべく、顔を左右に何度も振る。
俺は水で血を洗い落とすと、馬車に戻った。




