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Nostalgia - 追憶 -  作者: 天野 花梨
To find each other, and to feel.
9/40

Love is space and time measured by the heart.

1. .That brings back memories.


「統轄長、何を見られて居るんですか?」

「ん?うんまぁ~」

「何を隠したんですか?」

「なんでも無いよ?それより藤堂君、今日の仕事は?」

「あっはい。本日のスケジュールをお伝えします」

 藤堂はスケジュールと今日の必要書類を渡した後、時宗の隠した紙を奪い取った。

「あぁ~、藤堂君!子供の様な事をするんじゃない」

「いや、何時も統轄長が御子様の様な事をなされて居るので、つい」と言って奪い取った紙を見る。

「なんで隠すんですか?伊集院教授の結婚式の写真ですよね」

「机の引き出しの奥から出てきたのを懐かしくて見てたら、急に藤堂君が現れたからつい衝動的に……」

「何時もそうやって余計な仕事を隠すからですよ。条件反射になっているんじゃ無いですか?」

「ハッハハ~  参ったなぁ」

挿絵(By みてみん)

 また時宗は1枚の写真を見ながら言う。

「誠と雅治とは、長い付き合いだけど

 この時の誠は輝いていて世界中の誰よりも幸せ者だったな」

「元奥様はお綺麗なかたですね」

「あぁ、そうだね」

「こんな笑顔の教授初めて見ます。

 あっこの人、学園の校長ですか?」

「ん?そう、唯野氏だよ」

「この隣の方は?」

「ん?兄貴、唯野氏の奥様だね」

「統轄長も若いですね。玲音様とそっくりだ」

「23 位だったからな」

「統轄長は何歳でご結婚されたのですか?」

「ん?俺?俺は25だよ。そう言う藤堂君は何時結婚するのかな?」

「パワハラですか?」

「なんでだよ?」

「職場で結婚の話をふるのは立派なハラスメントですよ!」

「藤堂君、君から結婚の話は持ちかけて来たんだろ?」

「こんだけ仕事させて、結婚相手探す暇どこにあるんですか?」

「齋藤君と飲み潰れて居る暇は有るだろ?」

「拓哉程、理解のある女性が居ればとっくの昔に結婚してますよ!」



2.Those were the good old days.


 時宗は写真の中に引き込まれていく。


 挙式前に新郎の控え室で雅治と一緒に新郎の誠と話をしている。

「俺が主役じゃないんてなぁ~。まあ仕方ないかぁ~、今日だけだぞ?主役を誠に譲るのは」とからかいながら雅治が言う。

「こんなに早く結婚を決めるとはね?」と時宗が言う。

「ずっと高嶺の花だと思っていた人だからな。OK貰えれればさっさと年貢は納めるさ」と誠は満面の笑顔と少し照れながら言う。

「兄貴がこの前結婚して立て続けの結婚式だな?時宗お前まで急に結婚するとかいうなよ?」と雅治が時宗を見ながら言う。

「俺?無理無理。相手は居ないし、出来たとしても相当な条件のいい家柄か名門の娘じゃないと親父はともかく親戚や一族の猛烈な反対が目に見えてる。俺は結婚なんかしないさ」と苦笑いしながら言う。

「誠は考古学の発掘研究を辞めて教員に納まるのか?」

「いや、続けるよ?彼女が続けても構わないって言ってくれてる」と嬉しそうに答える。

「なんだ?のろけか?ハイハイごちそうさま」と雅治が笑う。

永遠(とわ)に幸せになってくれなきゃ困るよ?せめて俺達が結婚に憧れるような家庭を築けよ?」と時宗が言う。

「あぁ、お前らが結婚したくて仕方が無くなる程、幸せな生活を見せつけてやるよ」と誠は満面の笑みで笑う。

 喝采を浴びながら 素晴らしい未来へ続くと信じて。



「教授の奥様は何をなされて居た方なんですか?」

 藤堂の言葉で現実に引き戻される。

「ん?あぁ、あの学園の事務員だったね」

「だから唯野氏も出席されて居るんですか?」

「ん?兄貴は仲人だし、俺らの恩師だ。俺達の兄貴だ。親戚は呼ばなくても兄貴は絶対に呼ぶさ」

「統轄長は唯野氏を【兄貴】と呼んでいらっしやるのは、どういう………」

「ん?高校の時の担任?担任というより、本当に兄貴と同じ存在だったな。オックスフォードに入れたのも、色々な世界を見させてくれたのも兄貴のおかげだしな。俺は香織姉さんが居るが、そんなに話す事も相談することもなかったし、雅治は妹がいるから頼られる側だし、誠は一人っ子だからな。本当の兄弟の様に色々頼ったり相談できる存在だったのさ。だからあの学園も兄貴が居るから作ったんだよ。

 藤堂君達は学園が出来て間もなくして入ったんだろ?」

「ん?そうですね。山崎氏達が一期生で僕らは三期生ですね」



3.Love is space and time measured by the heart.


「誠は大学院卒業してあの学園の教授になったから君達が入学したのと同じ頃だね。

 彼女とは一目惚れだったらしいけどね。誠が一目惚れなんかするのかと雅治とびっくりした思い出が有るね」

「でも、離婚されたんですよね?」

「ん?そうだね」

「誠が憧れた【結婚】と【彼女笑顔と幸せ】が違って居たんだね。

 誠は、結構早くからその事を感じはじめて居たみたいで、度々兄貴に相談していたみたいだけど俺達には幸せそうな所しか見せなかったな。

 段々とお互いの愛が覚めても好きだと言うあの頃の気持ちを嘘にしたくないから繋がってたい離れたくないって結婚生活をなんとか修復しようと頑張っていたらしい。

 仕事で心が離れて行くならとあの頃の誠は考古学の発掘研究を捨てる覚悟までしていたからね。

 でも、その考えがますますダメにしたんだろうな。

 兄貴がそんな誠を見かねて『別れた方がお互いの幸せなんじゃ無いか?このままお互いの傷深くしあっても彼女笑顔は戻らないぞ』って言われて離婚する決意を固めたけど、今度は奥さんの方が『別れる気はない』と言われてかなり揉めていたな。

 結局、雅治の父親に頼んで離婚調停して別れたんだよ」

「なんで心離れていたのに奥さんは離婚に同意しなかったんですか?」

「さぁね、兄貴と雅治の親なら知っているかも知れないが、俺と雅治にはいくら聞いても教えてくれなかったな。

 ただひとつ教えてくれたのが、ただ一言『愛してるが言えなくなったら結婚生活は終わりだ』って」

挿絵(By みてみん)


4. It’s all history.


「統轄長は、奥様とはどこで出会われたのですか?」

「ん?スイスだよ?慣れない仕事で息が詰まりそうになっていてそのストレスを発散すべく海外に1人旅していて、出逢ったんだ」

「一目惚れ?なんですか?」

「ん?う~ん話さないとダメなの?」

「言えない様な事なんですか?」

「人聞きが悪いな。そんなわけ無いだろ!ただ恥ずかしいじゃ無いか?」

「後学の為に是非ともお聞かせ下さい」

「後学にはならないよ?俺の話は」

「こんなに仕事に追われて忙しい上に、自由奔放な統轄長でも結婚出来ると言う事は大変いい学習になるかと」

「自由奔放って……。酷いけど言い返せないなぁ~。う~ん……。まぁ、ちょっとだけね。

 あの頃は会社に入りたてでただ居るだけの息が詰まりそうな会議ばかりで、俺の仕事と言えばただ親父の雑用と飾りだけの仕事しか任されず、ただ時間だけに追われる日々で本当に息が詰まりそうだった。だから空いた時間を狙って親父の目を盗んでスイスに1人旅に出たんだ。

 ただ期間は1週間でそれ以上は大事な会議が入っていたから流石にすっぽかすと2度と旅行させて貰えなくなるようなある意味強行な日数での行き当たりばったりな旅だったんだよ。

 あの当時は、インターネットも普及してないし、携帯がやっと普及しはじめた頃で海外からの通話とかは出来ない頃だから本当に行き当たりばったりで下手すると帰る為の飛行場までの交通手段が無かったりしてさぁ………」

「なるほど、差し詰め何も考えずに郊外の村か街に出掛けて帰る汽車が本数が無くて飛行機の出発時刻に空港までたどり着けなかったとそう言う事ですか?」

「う~ん、近いようでちょっと違うな?」

「ん?違うのですか?」

「う~ん。乗っていた列車の中で仕事の疲れが出てしまってさぁ列車内で寝てしまったんだよね。その時に荷物全部盗まれちゃってね~。ハッハハあの時は参ったよ」

「えっ?パスポートと財布は?肌身に身に付けて居たんですよね?常識ですよね?」

「そうだね。常識だよね。うん、そうなんだけどさぁ~。あの頃はさぁ~若かったし、それまでは大体、旅行は兄貴と雅治や誠と一緒に行ってたし……」

「えええっ!もしかして、もしかして、そこまで頭のねじが外れて居たんですか?」

「藤堂君………。そこまで言わなくても」

「いや、これでも十分言葉選んでますよ?拓哉になら、そこまで頭が悪いなら一生治安のいい狭い日本から出る資格が無いと言いますよ?」

 時宗は苦笑しながら「藤堂君、間接的に言っているよね?」

「えっ?気のせいですよ?」

「ふっ、気のせいねぇ……」

「それで、どうされたんですか?」

「あぁ。目を覚ましてバックが無くなって居るのに気づいて真っ青になりながら一生懸命荷物を探している時に、ママに逢ったんだよ。

 遠目から何となく私の隣に座って居た女性が女性の物とは思えない大きめのバックを持って下車したのを見かけてなんかおかしいと思っていたら、私が目覚めて荷物を必死に捜している姿を見てやはりと思って声かけてくれたんだ。親切にも警察まで一緒に行ってくれて犯人の特長と降りた駅を証言してくれてね。それに全くお金がない状態だったから、日本大使館まで一緒に付き合ってくれてそこまでの交通費も立替てくれたのがきっかけだよ」

「奥様は心の広いかたですね」

「うん、あの頃も今も綺麗で優しいよ」と時宗は机の上に飾ってあるのメアリーの写真を見ながら言う。

「でも、玲音様がそれ聞くと絶対『親父、情けない男だな?ママに何から何まで世話になっているんじゃん』って言われますよ?」

「藤堂君、玲音のまねまでして言わなくていいから。それにこの話は玲音達には絶対に言わないでくれよ」

挿絵(By みてみん)

「それで?」

「もう良いだろ?これ以上は」

「何の後学にもなりませんが?これからが大切なんじゃ無いですか?」

「私の話は後学にはならないよ?他の人から聞く方がいいよ」

「私の周りには残念ながら幸せな結婚されているのは統轄長と五十嵐先生、橘先輩だけですが?橘先輩には聞こうと思っても聞けませんし、五十嵐先生には流石に聞きにくいのですが?」

「あっ仕事しないと!そうだ!こんな事を話している暇は無いよ?」と時宗は明らかにごまかそうとしている。

「………………………」

「また、今度話すからさぁ~いいだろ?」

「そうですか?なら今度、奥様に直接聞きます」

「えっ?ママに?そう言う時は必ず玲音達が居るだろ?辞めてくれよ。勘弁してくれよ!」

「この好奇心は、もはや止められません」

「藤堂君、何?涼しい顔で言っているの?」

「では、失礼しま………」

「分かったよ。教えれば良いんだろ?雅治や誠にも言って無いんだから誰にも言うなよ?間違っても玲音だけには絶対言わないでくれよ」

「秘書ですから統轄長の守秘義務は心得てますよ」と藤堂はにこりと笑う。

 反対に時宗はふて腐りながら仕方なく続きを話し始める。

「なんとかママのおかげですぐに指名手配かけて貰ってお金や飛行機のチケット以外は戻って来たんだよ。

 大使館から橘君に電話をしてお金も送金してもらったのでお礼にママを食事に誘ったんだ。

 その時はまだ綺麗な人だとは思って居たけど結婚する気は全く無かったんだけどね。ただ親切にしてもらったし女性なのに1人旅していると聞いたから時間の許す限り一緒に旅をしないか?と誘って見たんだよ。そしたらママあっさりOKしてくれてママの旅行計画に乗っかったんだよ。

 その旅でママの事を色々聞いて興味が深まってさぁ、まぁ日本に招待したんだよ。是非とも今度は日本にも遊びに来てくれと。

 そんなこんなで楽しい時間はすぐに過ぎて行くだろ?気がつくと帰りの飛行機のチケット取るの忘れててさぁ~。また橘君に電話したら散々怒られて本当に参ったよ」

「そりゃあ~。橘先輩の気持ちはよく分かります。仕事忘れて、しかも日本大使館にも厄介になって帰りの飛行機のチケットが無いとか…………。私ならスイスに永住を薦めます」

「藤堂君、ずっと同行してね」

「それで?」

「あぁ、どうしても大事な会議に間に合う様に帰るには一度イギリスかフランスに飛んで帰るしかなくて。しかし、その日フライトは全部キャンセル待ちで空席は無く、しかも日本行きのフライト考えると絶望的な状況でね……。その時またママがイギリスに帰るチケット譲ってくれたんだよ。急いで帰る必要はないから明日以降の便を取るって」

「御厚意に甘えたんですね」

「う、うん。だってさぁ~。その時の会議すっぽかすと本当にじいさんに泣き言入れるだけでは済みそうもないからさ。橘君もこれ以上は庇いきれないと言われてたからね。

 だからママの連絡先と住所聞いて無事帰れたんだ。あの時のママは本当に天使の様に見えたよ。それで帰国してすぐにお礼に日本の扇子と日傘を送ったんだ。ママは芸術家だろ?日本の日傘はカラフルできれいだしロンドンは天候の変化が激しいから役にたつかと思ってね。それをいたく気に入ってくれてね。何度か日本に招待するために手紙や電話をやり取りしてて、話や趣味も合うし何より一緒にいて心落ち着くからこの人とはこれからの人生をずっと一緒に居たいなぁと」

挿絵(By みてみん)

「でも、一緒に居る時間少ないですよね?週末婚ならぬ月末婚状態ですよね?」

「いやぁ玲音が小学校入学まではずっと一緒に居たよ。でも、子育てでママのやりたい事を犠牲にするのもなんなんで半々で子育てするように話合ってママは仕事に復帰したんだよ」

「半々ねぇ……」

「いやぁ~。玲音には少々可哀想な事になってしまったけど、俺の仕事を放り出す事は出来ないだろ?それにママの両親に結婚の許しを貰う時にママのやりたい事を犠牲するような事はしませんと誓ったしね。グループの事も内緒にしてたしね」

「えっ?奥様の御両親はグループの事知らなかったんですか?」

「あぁ、言って見ろ!絶対に許してくれるもんか、跡取りになれとか散々条件出されてはぐらかしてなんとかOK貰ったくらいなのに、櫻グループの後継者です。なんて言って見ろ追い出されるよ。だからぎりぎりまでママにも内緒にしてたしね」

「えええっ奥様も知らなかったんですか?」

「薄々は変だなとは思って居たみたいだけど聞かれ無かったしね」

「詐欺師真っ青ですね。会長はよく許されましたね?」

「ん?親父?ずっと反対してたよ?」

「許してくれないなら、駆け落ちでもなんでもする。もし、連れ戻されても絶対、あの人意外とは結婚しない。孫なんか絶対あり得ないからと親父に言って会社の辞表をじいさんに渡したんだよ」

「なんで会長でなくおじいさんなんですか?」

「いや、親父だと、何かとうるさいからさ。じいさんを味方した方が早いだろ?まぁそんな訳さ」

「流石に参考にはならないし、玲音様が同じ事したら統轄長は絶対お許しになりませんよね?『玲音、お前は、もっとよく将来を考えてだなぁ~。人生はやり直しは出来ないんだぞ!』とか自分の事は棚に上げて言いますよね?」

「ん?多分そんなことは無いと思うけどな?玲音には自由な恋愛して欲しいからね。それにしても藤堂君、物真似で話すのは止めてくれよリアリティが有りすぎる」

「統轄長は、どこまでも自分には甘い方ですよね」

「そうかなぁ。そんなこと無いと思うけどな?まぁ、人生上手く行っていれば良いじゃない?」

「ちなみにプロポーズの言葉はなんだったのですか?」

「藤堂君、それ聞く?普通は聞かないだろ?」

「え?そんな恥ずかしいプロポーズしたんですか?」

「何でだよ?な、わけないだろ?普通だよ」

「なら教えて下さいよ」

「絶対、玲音達には言うなよ?」

「心得てますよ」

 "Will you keep my heart forever?"と顔を真っ赤にしながら時宗が呟く。

「うわぁ~ 本当にその言葉を面と向かって言ったんですか?"あなたは私の心の中に永遠に居続けてくれない?"と」

「もう、藤堂君忘れろ!ほら、仕事するよ!ほら、ほら」

 "Will you keep my heart forever?"

「もう!いいから忘れろ!忘れなさい!」

「いやぁ~。余りに強烈過ぎて『私の心に留まってます』よ」

「藤堂君!今日聞いたことは全て忘れなさい!」


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