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Nostalgia - 追憶 -  作者: 天野 花梨
To find each other, and to feel.
6/40

True love stories never have endings.

1. I am going back to Japan temporarily.


 加藤雅治20歳

  両親は櫻グループの弁護士事務所に勤務

 3歳違いの妹と2人兄弟。

 櫻 時宗と伊集院 誠と幼馴染みであり、親友関係にある。

 2年前にオックスフォード大学に高校時代の恩師唯野雄大氏のお蔭で現役合格を果たし今に至る。

 両親の思惑とは違い、法曹関係とは別の海洋学を学んでいる。

 イギリスに来たのは親友の時宗が親の意向でオックスフォードで経済学を学ぶと言うので誠と3人一緒に目指し、唯野氏よる強力な指導と櫻グループからの奨学金のお蔭で3人とともに無事合格を果たしイギリスにいる。

 最初はケンブリジ大学を目指したが最終的に迷いながらも海洋学の権威アリスター・クラベリング・ハーディ氏が教授をしていたオックスフォードを目指した。


 時宗と誠とは同じイギリスに居るが専攻科目がそれぞれ違うため月に1、2度会うと言う約束以外は3人に何か問題が起こらない限り顔を会わす事は無かった。


 彼にとって両親の関係は理想的な家族では無かった。親友の時宗の所も似たようなものであったが、「まだ息子に感心が有るだけ自分の両親よりもましだ」と時宗に話している。

 流石に、オックスフォードに行くと言った時はびっくりしていたが【息子がオックスフォード在学】と言う肩書きが増えることに喜んでお金を出したと言って居る。

 その点に於いても、雅治は「そこらの三流大学と言われる知名度の低い大学だと、【どうしてもこの学部に行きたい】と言っても両親は何も興味も示さず黙って予備校のパンフレットを差し出すだろう」と揶揄する。

 雅治は、親からの干渉を嫌い、干渉されない様にする為か、成績は何時も上位に居た。


 両親から離れ、イギリス生活を満喫していたある日、妹から連絡が入る。

「七海どうした?珍しいな?お前から連絡してくるのは」

「兄ちゃん、一度日本に戻って来れない?」

「ん?何でだ?」

「お父さん倒れたんだよね。一応今は、命に別状は無いけど…入院してるんだよ」

「いつ、何で倒れたんだ?」

「3日前、心筋梗塞、心臓が弱って居たみたい。五十嵐さんに病院紹介してもらったの」

「和也?」

「うん。倒れたと連絡が入った時、誰に相談していいのか分かんなくて、お母さんは、法廷に入ってたらしく連絡取れなくてさぁ。五十嵐さん医学部でしょ?だから連絡したの」

「そうか、大変だったな。わかった、今日、明日とは言えないが、近いうちに帰るよ。

 しかし、よく和也の連絡先知っていたな?」

「今、週1回だけ家庭教師してもらっているんだよ」

「ん?和也は京都に居るんだろ?なんで?」

「最近お父さん関西方面の企業の顧問弁護士になって単身赴任したから。家の事はお父さん何も出来ないでしょ?だから私も一緒に関西に来たんだよ」

「母さんとは別居中なのか?」

「お兄ちゃん!別居中って人聞きが悪い。単身赴任だよ!夫婦仲悪くて別れて住んでる訳では無いんだからさぁ」

「その解釈でいくと七海が居るから単身赴任でも無いだろ?」

「それもそうだね。お兄ちゃんは、相変わらず口がたち過ぎだよ?本当に弁護士か検事になればいいのに、もったいない」

「アホか!なんでそんな他人の揉め事に 進んで首を突っ込む仕事に就くかよ?」

「お兄ちゃんらしいね~。でもお父さんもお母さんも、お兄ちゃんには弁護士になって欲しいみたいだよ?」

「俺は、あの人達の地位や名誉と言う飾りの為の人生じゃないよ。

それより七海はどこの大学志望で何になりたいんだ?」

「医学部に行きたくて、大学はお兄ちゃんと違って頭は、良くないから受かるところ?」と笑う。

「そうかぁ~。頑張れよ」


 電話を切る。

(日本に一度帰るかぁ。和也が七海の家庭教師ね。)


 五十嵐 和也とは父親同士が友人で家族同士での付き合いがあり、よくうちに遊びに来ていた。自分より、2つ年上で、とにかく頭が良かった。

 天体観測が好きで泊がけで遊びに来た時は必ず夜空の星を見ながらプラネタリウム並の解説をしてくれた。

 いつも【凄いね】と言うと照れながら【そうかな?なら将来天文学者でも目指すかな?】と笑っていた。

それがいつの間にか京大の医学部に入った。どうして京大?関西に出なくても東大でも良かったのでは?と聞くと大阪は昔から医療関係が集中しているからその方が色々といいかなと思ってと言っていた。


挿絵(By みてみん)


2.Long time no see.


 数日後、雅治は急遽日本に戻ってみた。

 実家には、母親の生活の痕跡しかなく、その母親も仕事中で家には誰も居なかった。

 そんな実家を見て帰ってくる必要が有るのか?と思いはしたが、妹にはやさしい兄貴である、何時も妹の頼み事には嫌とは言えなかった。

 母親の事務所に行く途中、母校である高校に寄り唯野に会いに行った。

 学校の事務室に行くと今は授業中だと言うことであの数学準備室で待たせて貰う事にした。

 懐かしい準備室は雅治が居た頃と何ひとつ変わって無かった。

 何時も座って居たソファ、時宗が買った珈琲メーカー、唯野の膨大な数学の専門書。

雅治は、懐かしく思いながらあの当時を思い出しながら唯野の珈琲豆を勝手に出し棚から自分達が使っていたマグカップを出す。

(まだちゃんと俺達のコップは置いてあるんだな?)

 カップを洗って出来あがった珈琲を入れてソファであたかも自分の部屋の様にくつろぐ。


 数十分後、何も知らない唯野が準備室に帰ってくる。

「兄貴お帰り」

「ただい……ま?ん??えっ?雅治?」とびっくりして持っていた教科書を落とす。

「雅治、お前!大学は?まさか?退学になったのか?」

「なんでだよ?」

「ならなんで、ここに居る?」

「父親が倒れたから一度帰って来てくれと妹から頼まれたからだよ!なんで久しぶりに会った第一声が【退学】なんだよ!」

「いや、お前なら放り出されても無理は無いかと」

「なんでだよ?酷いな。折角帰国後、一番に兄貴の顔見に来てやったのに!」

「何言ってるんだ。親父さん倒れたのに、ここより病院に行けよ!」

「命に別状ないし。今、関西に居るらしいから母親に居場所聞かないと病院が分からないんだよ」

「そうか、親父さん大事でなくて良かったな。誠や時宗達は元気なのか?」

 唯野は落ちた教科書を拾い上げながら聞く。

「専攻が各々違うから月に1、2度くらいしか会って無いけど元気だよ?

 時宗は暇さえあれば、誠と一緒にイギリスやその周辺の世界遺産巡りしてるよ。

 まぁ誠も考古学関連しか付き合って無いようだけどな」

「相変わらずなんだな?なんで世界遺産なんだろ?」

「さぁな、時宗の考えてる事は奇想天外な事が多くて俺には理解出来ないよ」

「雅治。お前がそれを言うのか?」と呆れながら唯野が言う。

 そこにノックがして1人の女性が入って来た。

「あっ」と唯野は罰が悪そうな顔をした。

「ん?」と振り返ると綺麗な女性教師が立っていた。

「あっすいません。来客中でしたか?」と女性教師は雅治を見ながら言う。

「いや、こいつは客なんて言う上品な者では無いから。ちょうどいい紹介するよ。加藤雅治君だ」

「あぁ、彼が………」

「ん?」

「彼女は野口 香澄さん。ここの生物学の教師だ。それと私の婚約者だ」

「野口 香澄です。お噂は予々雄大さんから聞いて居ます」

「あぁ、加藤雅治です。よろしくお願いいたします」とは言ったものの雅治は鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。

「雄大さん出直しますね」

「あぁ、ごめんね。また、後で連絡するから」と唯野が言うと彼女はにっこり微笑んで去っていく。

「兄貴いつの間に……。数学バカかと思っていたら……。隅に置けないな」

「雅治!どういう意味だよ!俺だって28だぞ、結婚するには早くも無いだろ?むしろ遅いくらいだ」

「いつ結婚するの?」

「ん?そうだなぁ。式に弟達3人を呼ばないと一生涯ずっと文句を聞き続けなければならない苦行は何としても避けたい。

 特に時宗あたりは、かなり面倒くさいからな。お前らがちゃんと卒業して帰国するまで待つよ」

「留年したらどうするんだよ?」

「えっ?お前、留年しそうなのか?もしかして卒業できそうにないとか?

 入るのも難しいが出るのはそれ以上だからな?」と雅治に唯野は詰め寄る。

「俺が留年するわけないだろ?」

「えっ?時宗あぶないのか?あいつよそ見激しいからな。世界遺産巡りなんかさせずにきちんと勉強させろよ!」

「あいつ、ああ見えても器用貧乏だから何でもこなすから大丈夫だよ」

「なら問題無いだろ?」

「なんで誠は心配の対象外なんだよ!」

「あいつはよそ見しないし、自分の興味有ることは極めるからな」

「しかし、兄貴には勿体無いくらい綺麗な人だな?生物教師にあんな人いたか?」

「あぁ、お前らと入れ替わる様に入って来たんだよ」

「ふーん。つまんねぇなぁ~」

「雅治、お前は何を考えている?」

「帰ったら時宗と誠に報告しないとなと」

「いや、しなくていいから。下手したら時宗は講義ほったらかしてわざわざ彼女を見にここに来るとかするから」

「うん、間違えなくやって来るな。

 目を輝かせながら『兄貴~、ゆうだい兄貴!兄貴の彼女どこ?』ってな」

「雅治、似すぎ……辞めてくれ」

「でも、俺達卒業するまで後2年もあるよ?」

「そうなると兄貴30じゃん。30で長すぎた春とか洒落になんないよ?」

「雅治お前が、30越えても独身だったどうするんだよ?」

「俺?俺は結婚なんかする気なんか無いから一生独身だよ?」

「えっ?お前が?お前の様な女好きが?」

「なんで結婚なんかで人生縛られ無きゃいけないんだよ?御免だよ!」

「お前も、変わっているな?まぁお前の人生だ好きに生きればいいよ。

 そろそろ母親の事務所行った方が良くないか?」

「ん?そうだなぁ。もうこんな時間かぁ。

 兄貴、幸福の女神は前髪しか無いんだろ?もたもたしていると掴みそこねるぞ?

 俺達は兄貴の為なら何時でも喜んで帰ってくるから早く式をあげてやれよ?女を待たせるなんて男として失礼だよ!

 だけど絶対、俺達は結婚式に呼んでくれよ?」

「あぁ、お前らは俺の大切な弟達だからな、ちゃんと呼びつけてやるよ!」


 雅治は母校を後にして、母親の居る法律事務所に向かった。


(女を待たせるのは男として失礼かぁ~。雅治は女性に対しては日本人とは思えない程、紳士的だよなぁ。

 なのに結婚は人生の終わりの様な考え方はなんでなんだろ?

 雅治の両親は夫婦仲は決して悪く無い様に見えるのだけどなぁ~。それなのに雅治は、両親に対して態度は辛辣だよな。でもその反面、妹にはかなりやさしい兄貴なんだよなぁ~)


 唯野は数学準備室の窓から学校を去って行く雅治の後ろ姿を見ながら思っていた。




3. True love stories never have endings.


 雅治が母親の勤務する法律事務所に行くと、書類に埋もれながら裁判資料を読んでいる母親がいた。

「相変わらず忙しそうだね、母さん」

「雅治お帰り、大学はどう?どうせなら法曹科に取り直しては?留学費用はなんとかするわよ?オックスフォードに行って法曹科取らないなんて勿体無いわ」

「それは母さんの価値感だろ?俺には何の価値も無い。それより親父の具合はどうなの?」

「仕事が忙しくて不規則な生活と猛暑で弱っていた心臓に負担がかかり過ぎたみたいよ。幸いすぐいい病院に運ばれて治療受けたおかげで多分、もうすぐ退院するはずよ」

「母さんは見舞いに行ったの?」

「行きたいけど今、裁判の最中で行けないから父さんの世話は七海に頼んで居るのよ」

「そう、七海の居る住所教えて」

「えっーと、どこにやったかしら」

 母親は机の引き出しを捜す。

「おかしいわね、ここらへんに入れて……」

「母さん、なら父さんの入院している病院の名前は?」

「ええっと、これ、七海の連絡先の番号だから七海に聞いてくれる?」

「旦那の入院している病院の名前も分かんないのかよ?」

「仕方ないでしょ?私も忙しいのにお父さんに七海取られて大変なんだから」

 雅治は溜め息つき

「俺、これから関西に向かうよ。七海と父さんの様子みたらそのままイギリスに戻るよ」

「折角、帰って来たんだからご飯でも一緒に食べましょう。次はいつ帰って来るか分かんないのでしょ?今日はこれから向かっても新大阪の駅に着くのは深夜頃になるでしょ?明日の朝一番でもいいでしょ?」

「でも、母さん忙しいんだろ?」

「後、30分待ってくれれば、終わらすわよ」

「なら、向かいの茶店で待っているよ」

「そう、悪いわね。終わり次第行くわ」

 結局雅治は結局1時間待たされた。

「その間、七海に電話をかけ父親の居る病院と七海達が居る住所を聞いた」


 雅治は、よく時間を守らない時宗に対して「どんなに待たされようと俺の堪忍袋の緒が切れないのは、うちの両親に慣らされたお陰だからな。時宗、お前うちの親に感謝しろよ!」と訳のわからない事をよく言う。


 雅治は母親とレストランで食事しながら聞く。

「七海はどこの大学受けるつもりなの?」

「京大と阪大だって聞いてるわよ?」

「なんで関西なんだ?権威有るところなら東大でも慶應でもいいのでは?」

「そりゃぁ。和也さんが居るからでしょ?」

「ん?」

「七海は和也さんの事が好きみたいよ。だから関西には、お父さんを口実にして行ったのよ。

 まぁ和也さんなら優秀な医者になるだろうし性格もいいから反対する理由は無いけどね?」

「七海が言ったの?」

「ええ」

「和也は?」

「七海の事は好きみたいだけど医師免許取るまでは恋愛とかする余裕が無いって七海には言ったみたいよ?」

「しかし、例え京大医学部行っても入れ違いじゃないか?」

「和也さんは、大学病院に残るらしいわよ」

「ふーん。知らないのは俺だけかよ」

「縁談が進んで居るわけでもないし、婚約したわけでも無いのに広める必要は無いでしょ?それに雅治はそう言う事には興味示さないでしょ?」

「自分の妹の事なのに興味有る無しが関係有るのか?」

「そう、悪かったわ。でも、『イギリスに行っているお兄ちゃんに婚約するわけでもましてや結婚する訳でもないし、七海の片思いだから報告することはないよ』と七海が言ったのよ?」

「ふーん。そう」

 雅治は妹までもが何か他人の様な隔たりを感じて寂しかった。

 次の日、朝一番の新幹線で関西に向かった。

 新大阪駅には七海が迎えに来ていた。

「お兄ちゃん!こっちこっち!」

「元気そうだな?」

「元気だよ?お父さんはぐったりしているけどね」

「容態は?」

「もうすぐ退院だよ」

「そう。和也と話したいだけど連絡とれる?」

「なんで?」

「母さんから聞いたよ。和也を追いかけてここまで来てるんだろ?」

「ばれてるのかぁ~」

「そんなに、好きなのか?和也は恋愛している余裕は無いと言ったんだろ?」

「それは和也さんの誠意だと思うよ?」

「まぁ答えは、本人から聞くとするよ」

「取り敢えず親父の病院連れて行ってくれ、明日にはイギリス帰らなければならないからな」

「いいなぁ~。イギリス私も行きたいなぁ~」

「必死に勉強すれば通るだろ?」

「無理だよ~。京大すら必死で勉強してもあぶないんだよ?寝る暇を惜しんで勉強しても判定はぎりぎりだよ?」

「お兄ちゃんが居る時しっかり勉強を教えて貰っておけばよかったよ」と七海は笑う。

 地下鉄で千里中央まで行き大阪モノレールで阪大病院に向かう。

「お兄ちゃんこっち!こっち!ほらあれ!あれが太陽の塔だよ~」と万博公園で指差す。

 時宗がみたら間違えなくここの駅で降りて見に行こうと言うだろうなと思いつつ記念に時宗に見せびらかす為に写真を撮る。


 雅治の父親はいつも冷めて居る態度しかとらない息子が、わざわざイギリスから帰国して見舞いに来てくれたことに驚きを隠せなかった。

「気分はどうなの?」

「うんまぁ、軽い症状だったんだが大事をとってね入院したんだよ」

「それよりイギリスの生活はどうなんだ?折角オックスフォード入れたんだ法律の方も勉強してみてはどうだ?」

「母さんにも言われたけど俺は法律関係は全然興味無いから。

 もう、若く無いんだからわざわざ大阪まで単身者赴任までしなくてもいいのでは?」

「顧問弁護士した方が稼ぎがいいからな。七海も医学部行くとなると公立でもお金はかかるからね」

「俺の学費のせいか?なんなら奨学金をもっと貰えるよう手配するよ?」

「いや心配しなくても大丈夫だ。気が変わって法律関係の方に進む気になって卒業が伸びても大丈夫だから」

「いや、それは無いよ。悪いけど親父達の望みは叶えてやれないよ」

「七海に頼めよ。医学部行くのと法学部行くのも変わらないだろ? 」

「まぁ、七海は和也君と病院経営したいみたいだからな。法曹界より医学関係だろうな」

「和也と話ししたの?」

「いや、お互い忙しくて話せて無いよ」

「そう俺、明日イギリスに帰るよ。若く無いんだから体大事にしろよ」

「あぁ、雅治。お前も体に気を付けろよ」

 雅治は病室を出て七海を探す。

 すると、和也と七海がやって来た。

「雅治、久しぶり」と和也が言う。

「久しぶり!和也も元気そうだね」と雅治は返す。

「少し2人で話しがしたいんだけど時間作ってくれないか?」

「あぁ、今日1日は大丈夫だ。取り敢えず屋上でも場所移すか?」

「そうだな。七海は、親父の見ていてやれよ?」

「うん、わかったよ」


 病院の屋上は青空がひろがり、郊外の為周りの緑が気持ちいい天候だった。

「オックスフォードの生活はどうだい?うらやましいよ」

「ん?オックスフォードが?それとも海洋学?」

「手厳しいな」

「俺は、周りくどいのは性に合わないから、単刀直入に聞くよ?和也は、七海の事をどう思っているの?

 優しさで遠回しに七海の気持ち断って居るなら通じて無いから、傷が深くなる前にきちんとはっきりと気持ち伝えてやってくれないか?」

「卑怯かも知れないけど自分でも正直よく分からないんだよ。今までずっと妹の様に思って来たから。でも、七海ちゃんの気持ちは正直嬉しい。

 それに、恥ずかしながら俺の実力では京大で医学部の勉強は生半可なものでは無いから気を抜くとすぐ堕ちていくからさ。今は、付いて行くので精一杯なんだよ。

 正直今、恋愛する心の余裕が無いんだ。俺は、色々な最先端の医療を学びたいんだ。だから朝から晩まで色々な患者と向き合わないと、俺には今、恋愛に使う時間が無いんだ。そう言う時期ではないんだよ。

七海ちゃんの俺に対する気持ちは本当に嬉しかったし、一緒に居て心癒されて居る。だから、同じ医学を目指したいと言うなら、俺の出来る範囲で手伝ってあげたいなと。これが俺の正直な気持ち。

 この気持ちは七海ちゃんにもちゃんと伝えている」

「本当に卑怯だな?」

「すまない」

「和也も七海の事が妹の様にかわいいと思うなら傷つけるような事だけはするな。

 後は、和也と七海の問題だから俺が口をはさむ事じゃない。でも七海の気持ちを持てあます様な事したら俺は絶対に、和也お前を許さないから。どんな手を使ってもお前の憧れる医学界では居られなくしてやる。覚えておけよ!

 オックスフォードに居る強みはそこだからな世界とのパイプ作れる事だ」

「怖いな雅治。でも約束するよ。七海ちゃんは俺に取っても大切な娘だ。彼女には沢山励まされているし、孤独を癒してくれる欠がえの無い存在だ」

「わかったよ。七海をよろしくな」

「しかし、雅治。お前にはオックスフォードに行かなくても既に十分なパイプ有るじゃ無いか?」

「ん?」

「櫻グループの次期後継者だよ」

「時宗?」

「あぁ、うらやましいよ」

「う~ん。まぁう~ん、まぁ時宗ねぇ……」


挿絵(By みてみん)


 その頃、イギリスでは時宗と誠は雅治が日本に帰国している事も知らず、何時ものように街角のカフェで雅治を待っている。


「ハッ、ハックション!」

 “Bless you!”

  "Thank you."

「う~ん風邪引いたかな?」

「噂されてるんじゃないか?」と誠が笑う。

「そう言えば、雅治は?遅すぎない?」

「来ないなぁ?何時も時宗にたかりに必ず来るのにな?」

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